
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
ヒップケアをはじめとする
美容・健康商品がヒット
ジャンルを問わず、新たなオリジナル商品開発へ
「会社のためでなく、自分のために働いてほしい」
株式会社ライブナビ
代表取締役
野口 裕 / Yu Noguchi
「社員が心の底から『世の中に出したい』と思える商品、お客様の役に立ち、継続してお求めいただける商品であれば、取り扱うジャンルにはこだわっていません」
こう語るのは、化粧品などのオリジナル商品で通信販売事業を展開している株式会社ライブナビ・代表取締役の野口裕だ。
ライブナビでは、オリジナルコスメブランド「re:beaute(リボーテ)」を展開。「お尻のニキビ」や「シミ・黒ずみ」に悩みを持っている女性に向けた薬用ジェル『ピーチローズ』、洗浄ジェル『ソフトクレンジング&ゴマージュ』など、ありそうでなかったヒップケア商品を送り出している。
中でも主力商品であるピーチローズは、人気口コミサイトで1位にランクインするなどし、3年間で250%の売上増を達成。ピーチローズシリーズについては、『VoCE』や『Ray』などの人気女性雑誌や有名Webサイトで度々紹介されているほか、国際的な品質基準である「モンドセレクション2018」において、4年連続の金賞・銀賞を受賞。品質が高く、世界基準を満たした商品であることが証明された。
しかし、「展開する商品ジャンルにこだわりはない」と野口が言うように、ライブナビが企画開発する商品は、ヒップケア商品だけにとどまらない。「保湿のできるオイルクレンジング」や「ペット用品」など、「こんな商品を世の中に出したい」という社員の強い想いによって企画された、あらゆるジャンルの商品開発が進行している。
「社員と商品開発の話をしている時間が、いちばん楽しいですね。社員が生き生きと商品企画に励む姿を見ることが、私の幸せなんです」
社員が幸せそうに働くことを願う野口だが、そのような心境に至るまで、決して順調な道のりを歩んできたわけではなかった。
野口が3歳のときに両親が離婚。小学生時代は酷いいじめを受けた。さらには中学2年のとき、母親の悪性癌が判明。「どうしてこんな目にばかり遭うのか」と、自身に降りかかる不遇を受け入れることができなかったという。
経済的にも余裕がなく、中学卒業後は「新聞奨学生」として奨学金をもらいながら建築関係の専門学校に進学。しかし、過酷な労働条件での新聞配達を続けているうちに身体を壊し、およそ半年で退学せざるをえなくなる。その後は「手に職がほしい」と考え、18歳のときに小さな建築会社の大工として働き始めた。
ところが野口には、大工の適性がなかった。入社半年で解雇されそうになり、「これでは今までの自分と変わらない」と心底悔しさを感じた。「こうなったら死ぬ気で仕事して、いつか会社が手放せなくなる存在になってみせる」と決意すると、新しく任された住宅営業の仕事に必死で取り組んだ。そこで野口は、営業の才能を開花させることになる。
住宅営業職の多くは、商品のデザインや仕様、機能の魅力をアピールすることが多いだろう。しかし、野口の営業スタイルは一味違った。
「『お客様の夢を教えてください』とヒアリングしていました。自分がつらい幼少時代を送っていたこともあり、『温かなマイホーム』に強い憧れがあったんです。そんな夢は、きっとお客様にとっても同じはず。その夢を実現させたい、という想いが原動力になっていたのかな、と思います」
お客様の想いや夢に寄り添おうとする姿勢が伝わったのだろう。野口は1年で13棟・3億円以上の契約に成功。契約を取るたびに社長や仲間たちが喜んでくれる姿を見て「自分に価値がある」ことを実感し、「ようやく自分の居場所を見つけた」と感じた。そんな野口の活躍によって会社は急成長し、29歳で最年少取締役に抜擢された。
そして33歳になった野口は、不動産業で独立起業を果たす。ところが、開業直後の2008年9月にリーマン・ショックが発生し、住宅業界は氷河期に突入した。「通帳残高は激減して、コンビニでのアルバイトも覚悟した」と言うほどに会社の資金繰りは苦しかったが、倒産の危機は何とか回避する。
ただ、参入障壁の低いビジネスモデルを展開していたため、「新しいビジネスモデルに転換しなければ、会社を存続させることができない」と危機感を抱いた。そのとき目を付けたのが、定期的に商品が売れ、安定した利益を見込める「農耕型ビジネス」である。
「『単品リピート通販』に注目しました。リピート通販で扱う商材には『化粧品』が向いている。私自身、過去には皮膚炎や乾燥肌に悩まされ、スキンケア商品に助けられた経験もあります。健康で美しい素肌を取り戻せる商品であればお客様に喜ばれ、安定的に顧客を獲得できると考え、はじめに化粧品の取り扱いを決めたんです」
美容業界の経験者を迎え、ピーチローズの開発・販売をスタート。最初はまったく売れなかったが、広告戦略と口コミ効果により売上は一気に年間1億円規模へ。以来、業績は右肩上がりで伸びている。
しかし、順調な業績の裏には思わぬ落とし穴があった。仕事を現場に任せていたところ、いつのまにか派閥ができ、人間関係に亀裂が生じていたのだ。多くの社員が傷つき、会社を去っていった。
「社員たちが目線を合わせ、同じ方向を目指せるようにしなければ」。そう考えた野口は、コンサルタントのサポートを受けて「経営理念」を創った。できたのは『美と健康のお悩みに真摯に立ち向かい、今までにない価値ある商品を創造する』というフレーズだ。
ところがその半年後、コンサルタントから問いかけられる。
「『野口社長、あなたはこの理念に命を懸けられますか?』と。答えは『NO』でした。美と健康に興味はあるけれど、命懸けで取り組むまでの思い入れはないな、と。では、自分が本当に命を懸けられる対象は何なのか。自問した結果、『社員とその家族の笑顔と幸せ』という答えにたどり着いたんです」
幸せに働く社員と、彼らを支える家族の幸せは、商品の向こう側にいるお客様にも届くはず。目には見えない、その部分を大事にしようと考えた。
そして野口は、新たな経営理念として『社員とその家族、お客様の笑顔と幸せを追求する』を掲げ、新たなスタートを切った。
2018年3月には、「会社の売上が社員の幸せにもつながる」ことを社員に伝えようと、社員と一緒に「3年後の夢計画」を策定し、同じゴールを目指せる環境も整えた。夢計画では、「3つ以上のヒット商品を生み出し、その売上で社員の夢を叶える」ことを目標に掲げる。それを実現できる商品であれば、ジャンルは問わない。
社内の全員が同じ方向を向いたことで、「社員が生き生きと働く、一体感のある会社になった」と野口は実感している。社員としても、「自分の夢を叶えるために、本当によい商品を世の中に出していきたい」と商品開発にいっそう熱がこもる。
「今、『お金』という形での報酬は、それほど欲しいと思いません。以前は、『世の中を見返したい』という一心で働いていたこともあり、稼げるようになると自動車や時計など、欲しいものを手に入れました。2千万円くらいは自分のために使ったでしょうか。それでも、心の底から幸せを感じることはできなかったんです。そのとき気付いたのが、『人は人間同士の絆や温かさに幸せを感じる』ということです」
会社の売上を、社員とその家族の幸せのために使えば、会社にかかわるすべての人の生活が潤う。そうすれば「ありがとう」と言われる。野口は、そんなふうに幸せを感じる人生に憧れを抱く。
面談時間を設けて、社員の夢をヒアリングしてみたところ、「メイド・イン・ジャパンの香水を作りたい」「世界一周がしたい」など、さまざまな夢が見えてきた。すでに、夢に向かって商品開発を始めている社員もいる。例えば、子どもの頃からバスケを続けていて「自分の体育館を作りたい」と夢見る社員は、脚のつりに効果が期待できるマッサージジェルを企画している最中だ。その商品が海外でもヒットすれば、10億~20億円程度の市場を築けるかもしれない。その売上をもとに、夢だった体育館を作ることができるだろう。「起業」を志す社員であれば、ライブナビで経営手法を学び、グループ会社の経営を担ったり、独立起業したりする未来につながっていく。
「ライブナビで働きながら、これまで意識しなかった『新たな夢』を発見できるかもしれません。皆、会社のために働くのではなく、自分のために働いてくれればいいと思っています。ライブナビは、社員が自分の夢を見つけて、その夢を実現できるフィールドであり続けたいですね」
野口社長に「座右の銘は?」と問いかけると、「物心両面の幸福の追求」と即答されました。経済的な豊かさだけではなく、同時に心の豊かさも求めていくことへの強いこだわりが見てとれます。その言葉を大切にしているのは、「人は人の想いに動かされることを社員に教えてもらったから」なのだとか。利益を追求するだけではなく、社員とお互いに切磋琢磨し合いながら、人の「想い」を大切にして働いていらっしゃることを感じました。
1975年、山梨県生まれ。建築専門学校を中退後、建築会社に入社。住宅営業職としての業績が評価され、29歳で最年少の取締役に就任。33歳のとき、会社員時代に貯めた1200万円の資金を元手に、不動産業で独立起業。新たなビジネスモデルを模索した結果、「化粧品」での単品リピート通販に乗り出す。2010年4月に美容通販事業「re:beaute リボーテスキンケア」ブランドの販売をスタート。2011年6月に発表したヒップケア商品「ピーチローズ」が大ヒットし、右肩上がりで成長を続けている。
インタビュー・編集:青木典子、流石香織/撮影:田中振一
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