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ストーリー代表・CEO

「給食」業界で60年の実績。 多様なコラボレーションから 新たな価値の創出へ

代表_メリックス

小学生からビジネスパーソン、
プロアスリートまで、
1日4万食を提供

「スポーツ栄養学」「食育」などを
テーマとした事業展開を推進中

メリックス株式会社
大髙 巽/大髙 絵梨 Tatsumi Ohtaka/Eri Ohtaka

一流ホテルでホスピタリティを磨き、給食業界へ

メリックス株式会社は「集団給食」分野のエキスパートとして60年近い歴史を持つ。現在では、東京を中心に関東の約120施設に日々の食事を提供。1日に作る食事は4万食以上に上る。

約5割は保育園や小中学校の給食。そのほか、大手メーカーやメガバンクの社員食堂、病院、福祉施設・老健施設、プロ野球球団の寮など、多様な施設・層の人々の食生活を支えている。学校給食では、子どもの健やかな成長を助けるため、栄養バランスとアレルギー対応を含む安心・安全な給食に配慮し、食育に貢献。オフィスや工場の社員食堂では、近年の健康志向に対応し、メタボ対策やアンチエイジングのメニューを工夫する。プロアスリート向けには、スポーツ栄養学に則った、強い身体を作るためのメニューを手がける。

一方、レストランも運営。港区にある「高輪和彊館」では、日本料理と中国料理の本格コースを提供している。

45年にわたり、同社を率いてきたのが代表取締役社長の大髙巽だ。

大髙は大学生時代、1964年の東京オリンピックで外国人のガイド役を務めたのを機に「サービス業」の喜びに目覚めた。その後「得意な英語を活かし、いずれは海外で働きたい」という想いから、東京ヒルトンホテル(現:ヒルトン東京)に就職。レストランやフロントなどで経験を積みながら、ホスピタリティの真髄を学んだ。

「あるご婦人の接客をしたときに、その方が昨晩オーダーされたお酒を覚えていて、『昨日と同じものになさいますか?』とお聞きしたのです。好みのお酒を覚えていたことにとても感激され、それがご縁でハワイのご自宅にまで招いていただきました。さり気ない気遣いにお客様は感動してくださり、よいご縁につながるのだ、と実感しました」

27歳のとき、父の逝去により、現在の会社を継いだ。大髙が社長に就任した頃は、工場の従業員向けの給食事業がメインで、従業員はパート社員も入れて300名ほど。赤字の事業所も抱え、経営状態は決して楽観視できるものではなかった。資金繰りにも苦労し、取引先業者に迷惑をかけてしまったこともある。こうした苦い経験から、大髙はお金のありがたみを痛感した。経営が安定してからも、無駄遣いはしない。

「現場の社員が汗を流してくれて会社が成長できる。社員の汗が会社の原動力なのです。ですから現場の皆が本社に来たときは、精一杯もてなします。本社の人間は現場の皆からお給料をもらっている――そういう感覚がとても必要だと私は思うのです」

ホテルマン時代から大髙がずっと大事にし、社員にも伝え続けていることがある。それは「自分から相手に与え続ける」という姿勢だ。

「相手が喜ぶことを、まずは自分からして差し上げること。それが予期せぬときに素晴らしいご褒美となって戻ってくるのです。ですから、毎年新入社員にも『人生はギブ&ギブ。ギブ&テイクではないのだよ』と話しています。一生懸命人に尽くせば、巡り巡って尽くしてもらえるようになる。人生には『振り子の原理』が働いているのだ、と」

取引先との関係も同様だ。一定の利益が出ないからといってすぐに撤退するようなことはしない。取引先の事情を汲み取り、人と人とのつながりを大切にすることで、さらに強い結びつきを創り上げてきた。あるときは、先代から続く顧客との取引で、自社の売上が赤字ギリギリという状況に陥ったことがある。それでも「一緒に耐えよう」と覚悟を決め、取引を続ける決断をした。やがて状況が好転すると、「永い間、ご苦労をかけたね」という言葉と共に、食堂の新システムやメニューの導入を全面的に任されることになった。

「ご縁を大切にしたからこそ得られたご褒美」だと、大髙は言う。

メリックス株式会社 大髙 巽/大髙 絵梨

米国留学、外資系金融の経験を活かし「化学反応」を起こしたい

2015年、大髙に心強い経営パートナーが誕生した。一人娘の絵梨がメリックスに入社。取締役社長室長を経て、現在は常務取締役として新風を吹き込んでいる。

子どもの頃から「姉御肌」。タイプの違う子のグループの間に立って、両者の橋渡しをするのが得意だった。いじめられっ子を守るなど正義感が強い子どもだった絵梨は、小学生のときにPKOの活動を知り、「国連で働き、世界平和に貢献したい」という夢を抱く。

高校2年から米国に留学。ボストン大学、ニューヨーク市立大学在学中には、国連本部広報局NGO/NPO、大手会計事務所、GEリーダーシッププログラムなどのインターンシップに参加した。各国国連大使が集うレセプションの企画・進行に携わるなど、学生ながら重要な仕事を任された。企業の経営トップとのランチミーティングなどに出席する機会も得た。

こうして米国で培った語学力・リーダーシップ・コミュニケーション能力を自分のルーツである日本でこそ発揮・貢献したいと考え、帰国後、世界四大監査法人の東京事務所に入社。外資系金融機関の外部監査業務やコンサルタント業務に従事し、活躍した。

その後、プルデンシャル・ファイナンシャル・インク日本駐在員事務所に転職し、国内グループ生保と傘下関連会社の内部監査業務に従事。財務・会計・数理、資産運用・管理、システム内部統制、商品開発、営業、人事・給与など、バックオフィス全般の内部監査プロジェクトに携わった。その過程ではリーマンショックを経験し、「この世に絶対というものはない。自分の判断基準を持たなければいけない」ということも学んだ。

外資系金融業界で、華々しいキャリアを積み上げた絵梨。仕事内容、待遇において何ひとつ不満はなかったが、「父の会社を継ぐ」という道を選ぶ。父から強制されたわけではない。友人たちからは「せっかく築いたキャリアと高待遇を捨てるなんて馬鹿だ」とも言われたが、覚悟を決めた。

「『一人娘』というアイデンティティを活かせる場はここしかない、と思ったんです。外資系金融業界には、私の代わりはいくらでもいます。けれど、父の意志を継ぎ、次世代にメリックスを残していけるのは私にしかできないことだから」

米国留学中のインターンでの貴重な経験や、外資系金融時代に学んだことを、次世代の会社づくりに活かしていきたいという想いもある。

「メリックスでの仕事は、採算だけを考えたらやっていられないような大変さがあります。でも、社員の皆さんは、おいしいお食事の提供によっていただく『お客様の笑顔』という最高の報酬に誇りややりがいを感じてくださっている。そうした社員の頑張りに対して還元できるような仕組みを創りたいですし、異色の経験を持つ私が入ることで面白い化学反応を起こせるのではないかと思っています」

現在は、新たな取り組みを推進しながら、「業界」と「経営」を勉強中だ。この業界は横のつながりが強い。競合でもある企業の経営者からも「絵梨ちゃん、この会合に来たら?」「今度、セミナーがあるよ」と声をかけてもらえるという。また、老舗の外食産業他社に一定期間『社長業』の修業に入り、幹部会議にまで出席。業界誌の若手経営者の対談企画に招かれることもある。それもメリックスが得てきた信頼、人から可愛がられるという絵梨の性質によるものだろう。多くの人の厚意に応え、業界全体を盛り上げていくことに貢献したいと、絵梨は考えている。

メリックス株式会社 大髙 巽/大髙 絵梨


人財を育て、食の世界に新しい価値を提供していく

コンビニエンスストアをはじめとする「中食産業」といった競合の台頭、また少子化による学校給食市場の縮小など、メリックスにとって逆風となる要素もいくつかある。そうした環境の中で発展していくために、絵梨が注力しているのがスポーツ栄養の分野だ。

すでにプロ野球チームの寮・球場へ食事を提供しているが、2020年の東京オリンピックを見すえ、学術機関や五輪種目競技関係者との提携を強化。「スポーツ栄養」と「食育」の観点を合わせた事業展開を推進中。こうした活動は、ジュニアからトップのアスリートまで、食の分野から支援することが直近の目的だが、高齢者施設でのリハビリテーション、また幼稚園や学校での「食育」と幅広い展開が期待できると考えている。

また、顧客との共同開発や、農家・卸業者・食品メーカーなどとのコラボレーションにより、新たな展開の可能性も広がっている。例えば、食空間で生まれるコミュニティ、食を通じた文化構築、地方創生など。絵梨の「人と人をつなぐ」という元来の得意技を活かせば、業界内外の多くの人を巻き込んで、新たな価値を創造していけることだろう。

同時に、強い組織づくりも課題ととらえ、人財育成プログラムの構築に取り組んでいる。自身は、米国留学時代や外資系金融時代、「信じて任せてもらえた」ことで成長できたという。自社においても「任せる」ことで人財を育成していきたいと考えている。

「一人ひとりが持つ可能性を伸ばしていきたい。能力が未知数であっても、信じて任せることで、想像もしなかったような才能が開花することがあるのです。万が一のセーフティネットもきちんと用意してあげれば、チャレンジもしやすいですよね。キャリアパスを一緒に創っていけるような環境・風土を築きたいと思っています」

メリックス株式会社 大髙 巽/大髙 絵梨

 

リスナーの目線

穏やかで含蓄に富んだ大髙社長のお話と、とても快活で先進的な絵梨さんのお話。印象は対照的でしたが、根底にあるのは「人とのつながりを大切にする」という共通の想いでした。「食」という私たちの命の源を形作る世界。機械化が進み、効率化が優先される状況が多い中で、優しさや温もり、そして愛情を感じられるお二人の姿勢に、とても明るい未来を感じられた取材でした。

インタビュー・編集/青木典子、三本夕子 撮影/田中振一

Profile

大髙 巽(写真右) 1945年生まれ。中央大学卒業後、東京ヒルトンホテル(現:ヒルトン東京)に入社。1972年、逝去した父の跡を継ぎ、メリックス株式会社(当時:明食サービス株式会社)の代表取締役に就任。以降、銀行給食業務の受託、学校給食民営委託業務へ参入、研修センター・宿泊施設受託運営、プロスポーツ選手向け食事業など、新たな事業を生み出す。高齢者雇用の安定協力に対し労働大臣賞受賞、給食産業の育成発展への寄与により農林水産大臣賞受賞の実績も持つ。

大髙 絵梨(写真左) 米国ストーニーブルック・スクール(高校)卒業後、ボストン大学を経て、ニューヨーク市立大学経済学部会計学科を卒業。帰国後、アーンスト・アンド・ヤング・ファイナンシャル・サービス(現:新日本監査法人 金融部)に3年強在籍。その後、プルデンシャル・ファイナンシャル・インク日本駐在員事務所を経て、2015年、メリックス株式会社入社。

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