
想いがあれば「やってやれないことはない」。TTSは一人ひとりが成長できる組織を目指す
コロナ禍は苦境でも、チャンスでもない——時代の流れをよむ日本デザイン流のビジネス戦略
株式会社日本デザイン
代表取締役
大坪 拓摩 / Takuma Otsubo
新型コロナウイルス感染症が流行し、オンラインで学び、会話をし、仕事をするスタイルは、もはや私たちの日常となった。しかし人々の生活を一変させたこの大変革が起きたのは、わずか1〜2年の出来事だ。
一方でこの未来を予想し、デジタル活用があまり浸透していなかった2013年から“オンラインに特化”したビジネスを展開してきた会社がある。オンラインセールスやWebマーケティングを支援する、株式会社日本デザインだ。
同社は未経験からWebデザイナーを目指す、オンライン完結型の「日本デザインスクール」を2015年に開講。まさに現在のオンラインスクールの先駆けといえる存在だった。自宅や職場など、場所を選ばずに学べるスタイルが人気を呼び、受講者数は5万人を突破。「日本デザインスクール」に続いて「日本プログラミングスクール」「日本ムービーアカデミー」「日本ライターカレッジ」「日本アドカレッジ」など、次々とオンラインスクールを立ち上げ、事業領域を広げている。
日本デザインが運営するスクールの強みは、オンライン完結だけではない。その魅力は、同社が培ってきたオンラインセールスやWebマーケティングのノウハウが、余すことなく注ぎ込まれたプログラムにある。デザインやコピーライティング、動画制作、広告運用の分野で、自社や顧客の成果を上げるプロフェッショナルの育成に徹しているのだ。代表取締役の大坪拓摩はこう語る。
「日本デザインを立ち上げた約10年前は、HPやLPでセールスを行うWebマーケティングのノウハウを持っている企業はそう多くありませんでした。デザインスクールで私たちが大事にしているのは、従来求められていたデザイナー感覚やクリエイティブセンスではありません。セールスやマーケティングで日本初や日本一を獲得してきたノウハウを駆使して、『そのデザインで売れるかどうか』を重視しています。売れるデザインを使いこなせ、クライアントの真のニーズを叶えられるプロを育てる。それが当スクールの強みであり、独自性です」
「コロナ禍は、“想定外”の事態ではない。慌てず、騒がず、粛々と自分たちのビジネスをやる」――それが感染症の世界的な流行が始まった2020年、大坪が考えていたことだった。
大坪は2013年にサービスリリースされたWeb会議サービス「Zoom Meetings」を初めて使ったとき、その便利さに驚いたという。日本にはまだ浸透しておらず、Web会議といえばSkypeを使用している人がわずかにいる程度だった。
めざましい技術革新で、便利なオンラインツールが次々と生まれているにもかかわらず、日本のビジネスシーンではほぼ使われていない。これは“不自然”なことだと大坪の目には映った。遅かれ早かれ、デジタル化の波がやって来る。それが時代の要請であり、自然な流れなのだ。
「いずれにしても、2020年くらいのタイミングで何かしらの大きなイベントが起きて、一気にデジタル移行が進むだろうと考えていました。それが国の政策なのか、経済の力学なのかは分かりませんでしたが、結果的に疫病だっただけのことです。近い将来、オンライン化できない企業は立ち行かなくなる。そうとらえていた私たちは、早くから完全オンラインでマネタイズできる体制を築いていました」
そして大坪が予見していた通りの世界が訪れた。コロナ禍をきっかけに日常やビジネスのあらゆるコミュニケーションがオンラインで完結できるようになったのだ。
なぜ、大坪には“時代の流れ”が見えたのか。それはサービスリリース直後からZoomに触れ、社内に導入していた事実からも垣間見える「情報感度の高さ」が一因だろう。
「四六時中、インターネットの情報を見てインプットをしています。通勤中に広告を見て新しいアイデアが浮かんでくることもありますし、社員との雑談をきっかけに事業プランが変わることも日常茶飯事です。必要に応じてデジタル分野での先進国を直接見に行ったりと、常に最新情報へのアンテナを張るようにしています」
先駆けてオンラインビジネスを手がけてきた日本デザインにとって、感染症の流行は追い風となったのではないか。この問いに大坪は「コロナ禍は苦境でもなければ、チャンスでもない」と冷静に答える。
「やろうと思えば、売上を2倍、3倍と伸ばし、コロナバブルをつくれたかもしれない。しかし、そうはしませんでした。なぜなら、『正しく成長しよう』と考えていたからです」
コロナの流行が始まった2020年は、同社において組織の拡大期だった。「日本人の生き方・働き方をより幸せに変え、より良い日本をデザインする」をビジョンに掲げる同社では、働くことへの先入観を持たない就活生1,000名以上を集め、新卒社員を積極採用。2021年には社員の半数が、2022年には社員の3分の2が新卒社員になる状況だった。コロナ禍は、組織が大きく動いている真っ最中だったのだ。
だからこそ大坪は、ビジネスの追い風が吹くコロナ禍でアクセルを踏まなかった。当初の計画通り、平常運転を続けた。
「会社が整っていない状態で、無理に事業拡大をすれば綻びが生まれます。顧客に迷惑をかけ、結果的にブランド価値を下げることになる。また、コロナ禍をチャンスととらえるならば、それは“自分主導”ではなく“環境主導”の考え方になります。予期していない変化に耐え得る準備ができていないのであれば、チャンスがあっても乗らない。それが正しい選択だと私は考えました」
大坪が見据えるのは、あくまで「日本人の生き方・働き方をより幸せに変える」未来。そのために時代の流れを見ながら、粛々と準備をし、やるべきことをやる。世界的なパンデミックを前にしても、その姿勢はぶれなかった。ここに日本デザインの強さと成長要因がある。
とはいえ、コロナ禍の影響が皆無だったわけではない。2020年を境に、競合となるオンラインスクールや講座が一気に増加した。
「コロナ禍でデジタル化が進み、オンラインスクールも目新しいものではなくなりました。ただ、当スクールはコンセプトが他社と一線を画していますから、そこまで脅威は感じていないんです。後発がまねしたがる成功事例になると考えていたので、競合が増えても勝てるように事業を計画していました」
同社が提供するオンライン授業は「卒業時点で身に付けられるスキルが圧倒的」と大坪は語る。未経験からデザインやWeb制作、ライティングを始めた受講生が、45日のレッスンを経て、実務者レベルのスキルを身に付けていく。講座終了時に制作する卒業作品をポートフォリオとして企業に持ち込み、正社員としての内定を得たり、プロとして発注されたりする事例が後を絶たないという。
「当スクールでは、どうすれば未経験者が実務者レベルになれるかという視点でプログラムをつくっています。ですから、『教科書のお手本と同じものをつくってみましょう』といった、実務では起こり得ないシチュエーションを良しとしません。
クライアントの課題をくみ取り、自身で考え、デザインをつくれる。学んだ基礎知識を、それぞれのケースに転用できる実務レベルのスキル習得を目指します。当スクールの受講生はほとんどが未経験スタートですが、受講途中から仕事を獲得し、卒業時には受講費をペイしてしまう人もいるほどです」
大坪の結果にこだわる姿勢は、“人を幸せにしたい”という想いの表れでもある。
「どんなにすばらしいサービスや商品も、売れなければ世の中に存在しないのと同じ。夢を見ることだって、そうです。どんなに『いつかは』と願い続けても、叶わなければ苦しみが生まれます。夢なんて持たなければよかったと思うかもしれない。『夢を持つ=幸せ』とは限りません。だからこそ私たちは、結果にこだわります。企業のWebマーケティング支援なら集客と売上を、オンラインスクールなら稼げることを、徹底して支援しているんです」
時代の流れを見ながら、堅実にビジネスを成長させてきた大坪は、ポストコロナ時代を生き抜くビジネスモデルをどうとらえているのだろうか。
「オンライン化でマネタイズできる道を模索するか、あるいは極端にローカル化するか、どちらかしか生き残れないと私は考えています」
ビジネスをオンライン化しなければ、生き残れる確率が低くなることは言うまでもないと大坪は話す。コロナ禍を機に時代は変わった。いずれは元の世界に戻ると考える人もいるが、一度変化が起きれば、その変化は覆らない。世界はすでに変わったのだから、自分たちがどう変わるかを考えるべきだと大坪は警鐘を鳴らす。
「当スクールの場合、実は受講生の10%は海外居住者です。世界中の人にサービスを届けられるのがオンラインビジネスのメリット。単純にマーケットを大きくしたいのであればオンライン化し、全国だけでなく世界に向けてサービスを立ち上げるのが得策ですよね。
一方で、極端にローカル化する道も残されています。コロナ禍ではマニュアル的で全国一律のサービスを提供している企業ほど、苦境に立たされています。それにもかかわらず、お客さんと店員がお互いを名前で呼び合うようなお店は意外とつぶれていないんです」
そしてポストコロナ時代を生き抜く道である「オンライン化」と「ローカル化」をうまく融合させているのが日本デザインのビジネスであり、今後の未来図でもある。
「オンライン化とローカル化というのは、相反するものではなく、融合できるものです。オンライン上でも、人と人との濃いつながりや、バイネームで仕事をするような信頼関係を築けます。ある程度オンラインでマネタイズできる状況をつくったら、さらに人と人とのつながりを深める方向にシフトしていく。それが、これからの時代の『勝ち筋』ではないでしょうか」
公開日:2022年3月31日
株式会社日本デザイン、代表。武蔵野美術大学を中退後、東京ミッドタウンで一部上場企業の現場監督として4年半で約20,000時間従事した後、未経験からデザイナーとして起業し、法人設立に至る。事業は、デザイン・コピー・動画・Web広告の制作・マーケティング戦略・クリエイティブチーム内製化の研修・事業DX化の支援・国内外の権威を招聘しての大型イベント開催と多岐にわたる。その実績を基に20代で自著を出版。2015年、実務スキルを最短で習得できる研修を消費者向けに展開。オンライン完結型スクールの火付け役ともなり、現在は同業者への集客方法や指導技術の指導も行い、教育・研修業界の再構築を通じて「日本人の生き方・働き方をより幸せに変え、日本をより良くする」ことを行っている。
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東京都豊島区東池袋1-35-3 池袋センタービル2F
インタビュー・執筆:猪俣奈央子/編集:佐々木久枝
撮影:新見和美
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