
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
コロナ禍の逆風も市場ではチャンス。合理的に、シンプルに顧客の利益増を実現する。
Simplish株式会社
代表取締役社長
小川 壮史 / Takefumi Ogawa
※写真はSimplish株式会社
モデル パフォーマー
Junco
メンバーはエンジニアとデザイナーのみ。あらゆるデジタル広告を手掛け、2015年の創業期から年商1億円を超える。その後も増収増益を続けているのが、東京・銀座に拠点を置くSimplish(シンプリッシュ)株式会社だ。代表取締役社長の小川壮史は語る。
「Google認定パートナー、Facebookマーケティングエキスパートとしてデジタル広告全般の運用を行っています。我々の強みは、スピードとコミット力です。例えばデジタル広告はA/Bテストで精度を高めていきますが、弊社では膨大なパターン数のテストを一度に仕掛け、最短距離で最適解を導き出します。『売上・利益を上げる』という企業の究極的な目的に寄り添い、上場企業からベンチャー企業まであらゆる業態のデジタル広告を運用しています」
創業以来、新規営業をかけたことがなく、紹介や既存顧客の予算増で成長を続けている。それができるのは小川自身が顧客の窓口に立ち、経営戦略にまで踏み込んだ提案を行っているからだ。その提案力の源は、経営者だけではない、小川のもう一つの顔にあった。
「学生時代に株式投資を始めたとき、お金が増えるのがおもしろくて、バイト代を全額突っ込んでいました。その後プライベートバンカーという資格を取得し、本格的に投資家として活動もしています。投資のために市場からさまざまな情報を集め、思考や判断力を研ぎ澄ませていることが、結果的に独自の提案力につながっていると思います」
小川のスタンスは、極めて合理的だ。
「お客様の経営ビジョンに沿った形で投資対効果を最大化できる提案をします。1顧客当たりのLTV(ライフタイムバリュー)から1CV(コンバージョン)当たりの許容額を算出する、という逆算で計画を立てるため、必然的に経営戦略まで踏み込んだ提案になります。デジタル広告が最適解でないと判断すれば、チラシ配りを勧めることもあるし、M&Aを提案することも。クライアントの利益のためならできることは何でもする。だから喜ばれるんです」
日本がコロナ禍に直面したとき、事業への影響はまったくといっていいほどなかったという。
「当社取引社のすべてのお客様が、コロナ禍で業績を伸ばすことができました。これまでも広告で成果を出されていたお客様がEC(オンライン通販)を開始したり、個人経営の美容サロンやエステではファンがお店を支えてくれたり、マスクが当たり前になったため歯科クリニックでの歯列矯正ニーズが一気に高まったりと、ポジティブな話ばかりでしたね。当社自体もYouTube動画の再生数が激増し、1つの動画で139万回を突破。もし我々が大衆居酒屋などの飲食系企業や、都市部の大型サロンなどの顧客を数多く抱えていたら、厳しかったと思います。つまり、運も良かった」
2020年はSimplishの成長曲線が急速な伸びを描いた1年となった。それは顧客の業績伸長だけが理由ではない。
「2017年にM&Aを行ったリユースショップの経営が軌道に乗ったこと、2020年からは障がい者福祉施設に出資を始めたことで、数字は大きく飛躍しました」
その傍らで小川自身が注目していたのは、株式市場の動きだった。
「緊急事態宣言で株価が大きく下落し、市場が一気に悲観的になりました。ですが私は危機感を覚えるよりも、逆に攻めようと金融商品を買い増し、デジタル、オンライン、動画に関する事業投資も加速させました。ジョン・テンプルトンという著名な投資家が『強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく』という名言を残しています。マーケット心理を的確に言い表した言葉です。誰もがここで手仕舞いだと悲観したときこそ投資を加速すべきと判断し、資産の増強を狙いました」
小川の予想どおり市況は回復し、資金獲得に成功。このように、デジタル広告事業を基盤に投資ファイナンスでも収益を上げていくのが小川の経営スタイルだ。
「ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツ、孫正義さんなど、大企業の経営者は誰もが投資で事業を拡大している。経営者たちの真の姿は投資家なんだと思います。実業においても投資においても、ヒト・モノ・カネをどのように配分しリターンを得るかという本質は同じ。その真のプロフェッショナルこそが、世界水準の企業を導いていくリーダーになれると考えています」
そして2021年春、小川は新たな取り組みを開始した。
「2021シーズンからShibuya City FCというフットボールクラブとオフィシャルパートナー契約を締結しました。フットボールを軸として、渋谷を拠点にさまざまなコンテンツを仕掛けており、クラブというよりも企画会社といったほうがいいかもしれません」
試合だけではなく、街中で開催するストリートサッカー、ナイトクラブでのフットボールイベントや、スポーツを通じたダイバーシティへの取り組みなど、渋谷らしい都市型のフットボールクラブというコンセプトを掲げるShibuya City FC。小川が同クラブと出合ったのは、学生時代の縁がきっかけだった。
「母校である、青山学院大学のサッカー部時代の後輩から話を聞いたのが始まりです。渋谷は学生時代を過ごした思い入れのある街。『これはおもしろそうだ』とピンときて、契約を即決しました」
現在はクラブのプロモーションのための広告運用や動画制作、マーケティングにも携わっている。パートナー契約は自社の経営にも大きなメリットがあったと小川は話す。
「得るものが圧倒的に大きかったです。新しいお客様とも巡り会えて、地域貢献にもつながり、自社のブランディングにもなります。クラブチームの経営のやり方を見ることができたのも、貴重な経験でした。弊社のほかにも、東急さんや伊藤園さんなどがパートナーとして名を連ねており、そんな有名企業と一緒に盛り上げていけるのは楽しいですね。渋谷もコロナ禍で街全体が大きなダメージを受けたと思いますが、フットボールを通じて街の人たちに何か少しでも貢献できたらと思います」
2022年には8期目を迎えるSimplishだが、創業以来、売上の目標を決めたことはないという。
「目標はメンバーのノルマとなり、顧客満足を無視した営業活動を招きかねません。売上は上げるのではなく、上がるもの。市場を的確に見定め、お客様に喜んでいただくという大前提を満たせば、結果としてついてくるものだと考えています。根本は顧客満足、そのために必要なのが従業員満足。それが満たされていれば、企業価値は上がります。お客様がどれだけ売上を伸ばせたか、という点に注目していますね。お客様が儲かるほうがうれしいんですよ」
時代や社会のあり方が変わっても、利益を追求し、市場を見定めて顧客満足のために尽くすというシンプルな姿勢は変わらない。ポストコロナ時代、小川が期待を寄せる市場の一つが、EV(電気自動車)分野なのだという。
「テスラ、トヨタ、欧州メーカーなど、世界中の自動車メーカーがこの新しい分野でしのぎを削っています。産業規模が大きく市場のポテンシャルも高いので、私自身の投資対象もEV関連銘柄が増えてきています。数年後にはもっと人々の身近にあると思うんです。そこに向けてEVの情報メディアサイトを運営するなど、自分にできることで関わっていきたいという興味がありますね」
そしてもう一つが、地方のスモールビジネスだ。小規模ながら優良な顧客を多数抱えているローカルの商いに、小川は大きな可能性を感じている。
「街の商店、土建屋、内装リフォーム屋、板金屋……地方には、小さいけれど顧客を持っている良い会社はたくさんあります。例えば、私は花が好きなんです。人にあげたら喜んでもらえるし、自分がもらうとうれしい。その花を自分たちの店で用意することができれば、素敵じゃないですか。個人経営で跡継ぎのいない花屋を買い取って、ECやデジタルマーケティングなど、ポストコロナ時代ならではの非対面型ビジネスモデルで、新しい花屋の可能性を模索してみたい。やるからにはしっかりと付加価値をつけていきたいです。将来のビジョンも立てた上で収益性を見定め、ここというタイミングに巡り会えれば即実行すると思います」
規模の大小を問わず、「おもしろそうなこと」かつ「収益が得られること」に対して、投資する。それが小川の描く、Simplishの未来の姿だ。
「Simplishは今後、デジタル広告運用だけの会社ではなく、投資会社に変わっていきます。将来、どんな企業も投資をするのが当たり前の時代になる。だから我々が変わろうとするのも、実は市場の変化に合わせているだけで、マーケットインの発想なんです。今はその準備段階で、資産を増やし、金融機関からの評価を高めているところです。M&Aも含めさまざまな企業に投資し、あらゆる産業のおもしろいところに関わっていきたい」
生き生きとそう語る小川は、Simplishの未来に自分自身の夢を重ねている。
「私自身は実業家でありながらも、投資家であり続けたい。学生時代に株式投資を始めた瞬間から、投資にすっかり魅了されていたんです。私の心はあの頃のまま。生涯をかけて投資のプロになり、市場の中で答えを探し続けたい。何よりも自分にとって魅力的なこと、エキサイティングなことに、これからもチャレンジし続けていきたいですね」
公開日:2022/03/31
Simplish株式会社、代表取締役社長。青山学院大学在学時、金融投資を始める。新卒でブライダル企業に入社。4年間で約1,000組のウェディングプロデュースに携わる。その後、渋谷のITベンチャー企業に転職、事業責任者として数億円のバリューが付く事業の売却を経験。1人娘のパパ。住まいは、新築戸建て土地140坪・天然芝の庭付き。
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東京都中央区銀座7丁目13番6号サガミビル2階
インタビュー・執筆:安部亮多/編集:ひらばやしふさこ
撮影:田中振一
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