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ストーリー代表・CEO

心を磨くことが、自分らしい「美しさ」になる。日本の「道」の中にある、美の本質とは

社員_ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN)

株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN,Inc)
代表取締役 CEO
野田 泰平 / Taihei Noda

茶舗 富士食糧株式会社 土井園
代表取締役社長
土井 宗満 / Munemitsu Doi

P.G.C.D.JAPANでは、四季折々を愉しむ「お茶会」を開催している。ユーザーであるお客様を社内のInnovation Village 「ICHIE」に招き、茶道や和菓子作りなど日本文化に親しむ機会を提供している。その「お茶会」で亭主を務めているのが、裏千家・茶人土井宗満氏だ。「P.G.C.D.JAPANの考える『美しさ』と茶道に代表される日本の『道』には、共通点がある」と語る同社代表の野田泰平と茶人・土井宗満氏が、所作と道具の美しい関係について語り合った。

日本の「道」とは、技とともに自己の精神を磨くこと

野田泰平(以下、野田):土井先生、いつも弊社主催のお茶会にご協力いただき、ありがとうございます。日本には、書道や剣道、華道など「道」という言葉が付く芸事がたくさんありますが、その中でも、私が茶道に惹かれたのは、石鹸を泡立てる行為とお茶を点てる行為が似ていると感じたからなんです。

土井宗満(以下、土井):そうでしたか。茶道の時間は、ある意味、「非日常の世界」といえます。

野田:私は、石鹸を泡立てる行為を含め、洗顔する時間そのものが心を洗う時間だと思っています。夜、石鹸を泡立てて顔を洗いながら自分と対話し、1日の汚れを落として無垢な顔に戻る。朝の洗顔では、「今日も頑張ろう」と気持ちを新たにする。「ケ」と「ハレ」じゃないですけど、朝晩の洗顔が、お客様にとって、オンオフのスイッチになっていればうれしく思います。丁寧な洗顔を通して、自分自身と向き合う習慣を持つことは、日本の芸事の「道」に通じるものがあると考えています。

土井:日本の「道」は、「まねぶ(学ぶ)」といって、最初に師匠のまねをするところからはじまります。いわゆる「練習」というのは、技を磨いていくことをいいますが、日本のように、そこに「道」が付けられているのは、人間的な成長が含まれているからだと思います。技とともに、自分の精神を磨くことこそが「稽古」であり、「練習」との違いです。それが、日本の「道」といえる所以(ゆえん)ではないでしょうか。

野田:土井先生は、一般企業を対象にした茶道の研修もおこなっておられます。今のお話は、ビジネスパーソンにも通じるものがあるのでしょうか?

土井:お茶の稽古は、ひとつひとつの動作に気を入れないと間違えてしまうものです。稽古での動きそのものはルーティンといえますが、うっかり柄杓(ひしゃく)を落とすなど、思わぬミスが発生することもあります。この場合は、すぐに半東が柄杓を変えるなど、連携して助け合いますので、本人も落ち着いて対処できます。こうした突発的な出来事に直面したとき、冷静に対応できるようになるために、稽古があるのです。日頃の心構えがないと、すぐに動けないですからね。

想定外の事態になったとき、どのように動くか、そのための習慣を身に付けることが「稽古」です。仕事でも、ベテランになればなるほど、仕事がルーティン作業になりがちなので、精神を含めた不測の事態への対応力を磨く鍛錬になるのではないかと思います。

野田:研修を取り入れている企業は、茶道を通じてどんなことを学ぼうとしているのでしょう。

土井:「皆さん、どこかに精神的な忘れ物をしているんじゃない?」と、私は感じますね。例えば、きちんとした挨拶。挨拶は親しくなると形が変わり、気軽なものになっていきますが、フォーマルな場ではふさわしくありません。メリハリを付けることは大事ですよね。仕事に対する姿勢こそ、茶事の姿勢と響くものがあると思います。

現代では、さまざまな場面で日本文化が安直に捉えられているケースが多いと個人的に感じています。日本の文化を紹介する媒体などでは、表面的かつ分かったつもりで書かれている場合があり、「それは違うな」と思うことがあります。茶道をはじめ、深く伝えていかないと、その心や本質までは伝わらない。スキルだけ磨いても、相手に伝えるべき気持ちの部分が置いていかれてしまう。こうしたことが単なる礼儀作法ではなく、今、企業で働く人に求められていることではないでしょうか。

野田:技術だけでなく、本質を知る。本当にそうですよね。また、私はつねづね、道具も大切だなと思っています。P.G.C.D.JAPANの美容液、ロシオン エクラ(トリプルエッセンス美容液)は、あえてガラス製のボトルを使用しています。ガラスはそっと置かないと割れてしまいますから、自分の肌と同じくらい丁寧に扱ってほしいという想いを込めています。西洋的合理性の観点からすると、手間のかからない素材のほうが便利なのでしょうが、私は「手間ひま」をかけるからこそ得られる日本的合理性を大事にしたい。

土井:茶道では、道具をどう扱えるようになるかが上達の秘訣です。茶碗を渡すときは、必ず一度畳に置く。お盆や釜を持っているときは、「通ります」など声を掛ける。炉の炭を片付けるときは、畳が焦げないようにタオルを引く。稽古では、こうしたことを最初に教えます。

茶道の基本も、すごく合理的なんですよ。例えば、炉の縁の内隅角へ体の中心が向くように座る「内隅ねらい」や炉の外隅をねらって座る「外隅ねらい」、畳の縁から16目に座るなどのほか、茶碗や棗(なつめ)など、どこに何を置くかがすべて決まっています。そして、その通りにやると、動作がきれいに見えるんです。そこに、野田さんのおっしゃる日本的な合理性を感じます。

野田:お茶の稽古をしている人は、物を丁寧に扱いますよね。物を大事にする心が見えます。

土井:茶碗などは、気を抜くと落としてしまいますからね。渡すときは、必ず自分の手元と相手の手元を見て、茶碗を畳の上に置くことが一番の基本です。

人の本当の「美しさ」を引き出すもの

野田:私は、肌を美しくするための道具である、P.G.C.D.JAPANの石鹸を通じて、日本人が大切にしてきた「朽ちていける美」の価値観を伝えていきたいと考えています。日本で千年以上も大事にされてきた「侘寂(わびさび)」について、お客様にお話することも多いです。しかし、多くの人がよしとしている現代の美は、「化ける」ほうの化粧に時間もお金も費やしているように感じます。

土井:茶道の世界では、毎年11月が正月にあたります。初夏に摘み取られた新茶を詰めた茶壷の口を開ける「口切り」がおこなわれる大切な季節です。このときに、中の薄葉をひいて飲むお茶が一番とされていました。しかし、商人の宣伝もあり、新茶が良いという認識が多くなってきました。新茶は実際に香りはいいのですが、味に深みは感じられません。社会においても同じように、新しいもの、若いことがよしとされる風潮がありますが、それはちょっと違うのではないかなと思います。

野田:化粧品業界では、若く見えることがいいとされていますが、多くの女性はそれに振り回されているような気がします。「あなたが思う美しさは本当に自分が考えた美しさなのか?」「若く見えたほうがいいというのは、他人から植え付けられた価値観ではないの?」と問いたいですね。私たちが本当に伝えたいのは、「化ける」ための化粧はやめて、自分の美しさは自分で決めようということなんです。

土井:茶事は暗いところ、かつ自然光が入るところでおこないます。太陽の動きによって、陰が移ろいでいくさまはとても美しい。陰があるからこそ、美しさが際立つのに、現代人は陰の部分まで明るくしてしまうんですよね。明と暗の対比がないと美しく見えないのです。

野田:今は、多くの人が自分と他人を比較してばかりいますよね。人よりどれだけきれいか、すばらしいものを持っているかなどを競っているように思えます。本当は自分の中に陰と陽があるはずなのに、陽ばかりにフォーカスしようとしているというか。

土井:そこを学ぶのが日本の「道」ではないでしょうか。「日々是好日」(2018年 監督・大森立嗣)という映画がありますよね。この映画では、主人公が点前を習っていく中で、他者との距離の取り方や季節の移ろい、道具を扱う楽しさなどを知り、精神的に成長していく姿が描かれています。茶道は、その人の精神性を引き出していくものなのです。

野田:私は日本の美しさとは、努力や習慣といった、ストイックにやり切る鍛錬から生まれるのではないかと思います。芸事と向き合って、繰り返し稽古を重ねる日々が美を創ると考えています。

土井:同じ美でも、きれいと美しいは、違いますよね。

時間をかけることの意味、美しさの「本質」とは

野田:土井先生はなぜ、お茶の道に入られたのでしょうか?

土井:私は、本当は家業(東京・目黒区の茶舗土井園)を継ぐ予定ではなかったんです。大学で勉強を続けたいと思っていたのですが、祖母と母に「継いでほしい」と言われて、しぶしぶ受け入れた形です。そして、大学を卒業した後、静岡と宇治へ茶業の修行へ出ました。それまで学んでいたことと茶業は、あまりに乖離していて、正直「つまらないなぁ」と思っていました。しかも修行先では、半年間、ほうきで掃除をすることが仕事でしたから。しかし、その意味は、のちに分かってくるのですが。

野田:そうだったんですか。意外です。それからどのように茶道に出会ったのですか。

土井:宇治で修行していたとき、ある神社の宮司で、立命館大学の教授を務めておられた茶道の先生と出会ったことがきっかけです。知人から稽古に誘われ、「1回やってみよう」といった気軽な気持ちでした。当時、私はとがっていた若者だったので(笑)、稽古の初日にピンクのシャツにラッパズボンで出向き、「なぜ、1回1回茶碗を回すのか?」「どうして縁を拭くのか?」など、先生に細かく質問していました。そのたびに先生は、動作の意味をひとつひとつ、丁寧に教えてくれました。このときに「茶道にはきっと何かがある」と感じたんです。

その後、東京で先生へ弟子入りし、いろいろと教えていただきました。この茶道教室は男性が多く、稽古の後に皆でお酒を飲むこともあり、楽しかった。そして、だんだん茶道がおもしろくなってきたんです。それまでの私は突っ張っていて、世の中をどこか斜めに見ているところがありましたが、茶道が目を覚ましてくれた。すごくありがたいと思っています。

野田:日々の稽古によって、人は少しずつ変わっていく。変わることを繰り返しながら、成長していくものなんですね。

土井:現代では、時間や手間がかかることを面倒だという人が多い。でも、そういう人は、時間をかけることの意味や、美しくなるとはどういうことか、本質を分かっていないのではないでしょうか。茶道についても、「ちょっとやってみたい」という人は多いですが、週に1回通うだけでも、お茶のおもしろさは違ってくるものなのです。気が向かないときはさぼってもいいですから(笑)、自分と向き合う時間を作ることが大切だと思います。

野田:土井先生にP.G.C.D.JAPANのお客様やメンバーは、どのように映っていますか?

土井:お客様は、とても穏やかで素直な方ばかりですね。社員の皆さまは、何事にも真摯に取り組む、真面目な方が多い印象です。皆さん、物事を深めたいという探求心をお持ちですね。やはり、内面を磨いていかないと、美は引き出されていかないですから。

野田:ありがとうございます。これからも、内面を磨いていくにはどうすればいいのでしょう?

土井:まず、基本的な教養を身に付けることではないでしょうか。物事の背景にあるものを理解すること、それを積み重ねていくことで、思考を深められるようになると思います。基礎がないと、次の段階へ進めないですからね。ただ、人は学んだことをすぐに忘れてしまうもの。学んだら、身に付けないと駄目なんです。一生、こうやっていくことが必要かと思います。茶道も、何も考えなくてもお茶を点てられるように、体に染み込ませていくものなのです。そうなるためには、まず、基礎を身に付けることが絶対に必要。あとは、遊ぶことも大事です。遊ばないとその人の真の姿が見えてこないのです。

野田:本当に軸のある人は、遊んだり、ぶれたりすることで、さらに太くなっていくものですよね。時にはぶれてもいい。美しさの軸もそういうものかもしれません。本日は、ありがとうございました。

Profile

【野田 泰平】
株式会社JBI GROUP(JBIG)代表取締役 Founder CEO、株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN,Inc)代表取締役 CEO。1979 年福岡県⽣まれ。
<学歴>
kuwasawa Design School 卒業
Globis 経営⼤学院 卒業
<学位>
建築学⼠ BARCH (Bachelor of Architecture)
経営学修⼠ MBA (Master of Business Administration)

【土井 宗満】
裏千家・茶人 
茶舗 富士食糧株式会社 土井園 代表取締役社長
兼 株式会社抹茶道 茶道プログラムのメインホスト
本業の茶舗「土井園」にて、美味しい日本茶を届けると共に、より広く日本のお茶文化を届けるために、株式会社抹茶道にて、国内外に向けた茶道イベントを展開中。「本格茶室でできる茶事体験(茶懐石と共に茶道を愉しむ)」や「出張お茶会」「茶道を活用した企業向け人材育成プログラム」など実施。

茶道家としての略歴
1979年に裏千家に入門。
入門後に、裏千家の青年部に所属し、「裏千家青年部関東第一ブロック長」「裏千家青年部全国委員」を歴任。ブロック長時代に、第9回裏千家青年の船で中国を訪問。人民大会堂で各ブロック長(北海道、東北、関東、近畿、四国、九州)と共に茶道のデモンストレーションをおこなう。
また、美術倶楽部、茶道会館、その他で、ブロック長として初点式、支部茶会、などの青年部席を取り仕切る。青年部幹事研修会で、「茶について」「宇治三仲間と茶壷道中」などの講演をおこなう。
現在、「裏千家青年部育成委員」「一般社団法人茶道裏千家淡交会東京第四西支部(目黒・大田地区)幹事長」として、若手育成にも注力中。

Staff

執筆:高橋奈巳/編集:佐々木久枝

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