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妙心寺退蔵院 副住職 松山大耕と野田泰平が語る 真の自由、「自らに由る」ことが、人を美しく、幸福にする -後編―

最新ストーリー社員_ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN)

株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN,Inc)
代表取締役 CEO
野田 泰平/ Taihei Noda

臨済宗大本山妙心寺 退蔵院 副住職
松山 大耕/ Matsuyama Daiko

『JBI』グループ代表取締役CEOの野田泰平とつながりのある松山大耕氏。経営者とお寺の副住職、まったく立場の違う二人だが、秘めている考えや信念には共通するものがあった。前編に続き、後編では現代の社会的状況を踏まえつつ、どういった生き方、感じ方が大切なのかについて語り合った。(前編はこちら)


情報化社会で失われた絶対的な「美」の価値観

野田泰平(以下、野田):私は昨今、「美」の概念が、相対的な価値観になってしまっていると感じています。本当は、幸福度と同様に、美しさも絶対的な自分の価値観であるはずなのに、他者と比べている人が本当に多い。どうしたら、他者と自分を比べなくなるのでしょうか。

松山大耕(以下、松山)
他者と自分を比べてしまう人が増えた1番の原因はSNSの登場だと思います。昔よりも、日常的に比較せざるを得ないような環境になっていますよね。

SNSでは、どちらかというと「私はこんなことをやっています、こんな美味しいものを食べていますよ」といった、見栄えのいいことしか上げない人が多いと感じます。もちろん、皆、人間なので、辛いことや落ち込むこともたくさんあるんでしょうけど、そういうことはほとんど載せない。

だから見る側はバイアスがかかってしまって、「SNSのあの人は、あんなにキラキラした人生を送っているのに、どうして私はそうじゃないの?」と思い込んでしまうのかもしれません。

野田:研究が進んでいるにもかかわらず、化粧品業界では、年々1人当たりの使用アイテム数が増え続けています。アンチエイジングがもてはやされている風潮の中では、どうしても他者と自分を比較してしまうので、たくさんの化粧品を使って、若々しく見せることだけが良しとされているように思えます。どうすれば、他者と自分を比べなくてもいい状況をつくれるのでしょうか。

松山:現代では、あらゆる物事がレーティング(数値化)されてしまうので、何でも比較してしまうんですよね。レストランや料亭だって、グルメサイトで点数が出ていますし、すぐにランク付けされてしまう。その中で、さらにSNSの存在が、「他者と自分を比較する」という人間の性(さが)をより助長しているような気がします。そういう意味では、まったく比べないことは難しいですよね。

しかし、昔から仏教は、そこに注目しているんですよ。野田さんも「自由」という言葉をご存知ですよね。自由は英語で「Liberty」や「Freedom」と訳されますが、これは明治時代の大いなる誤訳。もともとは、読んで字のごとく、仏教の言葉で「自らに由(よ)る」という意味なんです。

野田:「由る」とはどういう意味ですか?

松山:自らに頼る、つまり、自分を拠り所にすること。端的に言えば、「自分のセンスに自信を持つ」「他人がどう言おうと、自分がいいと思ったらいい」ということです。でも、多くの人は、自分のセンスに自信が持てないから、他人の評価に頼ってしまう。先ほどのグルメサイトでいうと、自分が美味しいと思えば美味しいのであって、サイトの評価が高いから美味しいのではないのです。

ただ、こうしたセンスを磨くには五感が必要。禅寺や米国のスタンフォード大学などでは、この五感を研ぎ澄ます鍛錬をおこなっています。それは、裸足で雑巾がけをして、座禅を組み、庭掃除をするといった純粋な修行体験なのですが、参加者の感想で最も多いのが「ご飯がこんなにも美味しいものなのか」というもの。修行体験で出すのは精進料理なので、作り手の心は込もっているけれど、高級な食材の使用や凝った味付けはしていません。

それでも「美味しい」と感じられるのは、食べることに集中しているからなのです。多くの人は、普段、食事中に話をしたり、テレビやスマホを見たりしながら食べていますよね。禅寺での食べ方は、板の間で居住まいを正し、無言で食事をするので、ご飯の香りや甘味、味噌のコクなどをすごく感じながら、味わえる。座禅においても、「しょうもないことばかり考えてしまって、全然集中できません」と言う人もたくさんいますが、それは当然なんです。

野田:確かにそうです。考えても仕方ないことばかりを、考えているときが多いかもしれません。

松山:私たちは、普段何気なく生きていると、自分がいつもしょうもないことを考えていることにすら気付かないんですよ。例えば、ここで座禅を組み、ピタッと止まって静かに過ごすと、そこにある滝の音や鳥のさえずりが聞こえるはずです。実は、普段も聞こえてはいるんですけど、人間の脳は優秀すぎて、すべてノイズとしてキャンセルしてしまう。本当は感じられていた香りや音が全部ぼやけてしまって感じられない。人それぞれですが、五感がしっかりしていたら「私はこうだから、これでいい」と胸を張って言えるようになるのです。

野田:五感は、どうやって鍛えればいいのでしょうか?

松山:それは自分でやるしかありません。禅で言う「冷暖自知(冷たい、暖かいを自ら知る)」です。現代は情報化社会なので、情報だけを得て経験した気になっている人も少なくありません。

例えば今、私たちのいる場所は、気温25度ぐらいで快適に感じますが、25度の水を頭からかぶったときの冷たさはまったく違いますよね。同じ温度下にある外の木の感触だって異なります。

現代人の多くに、こうしたリアリティが欠けているように思います。自分で経験を積み重ねていくことが「自らに由る」、つまり、本当の「自由」につながっていくのではないでしょうか。

現代人に欠けている、「ほんまか」の精神

野田:私たちが販売している石鹸は、フランスの工場で製造していますが、商品開発は自社でおこなっています。いい成分が生まれたら試作しますが、「最高だ」と言えるまで、絶えずチャレンジし続けています。会社の代表として「これが世界最高のものです」と言える商品でないと、お客様にお届けできないですから。

松山:その考え方は、非常に大事です。私は、最近の日本のメーカーや飲食店は、マスを取ろうとし過ぎていると感じています。ものづくりにおいて「自分はこれがいい」という自信が決定的に欠けている。飲食店で例えると、データに基づいて作った料理は、美味しくない。でも、本当に美味しいお店は、そんなことは絶対にしない。店主自ら、さまざまなお店に足を運び、研究と試作を重ねて、「よし」と思ったものを提供するから、美味しいのです。野田さんが仰ったように、「自分が最高だと思うからこれをする」といった動機を持っている経営者さんは、今、本当に少ないと思います。

野田:それこそが真の「自(分に)由(る)」であり、他者と比較するものではないですよね。こうした違いの分かる人、自由な人は、どうやったら増やしていけるのでしょうか。

松山:本当にいいものを分かる人は多くはありませんが、ちゃんと分かる人に届けることができないと、事業や店、サービスは永く続かないですよね。口コミで知る人もいますし、経営者の人柄に惹きつけられる人もいるでしょうし、分かる人が集まることで広がっていくと思います。

野田:子どもたちが本当にいいものを選べるようになるには、どんな教育をすればいいのでしょう?

松山:とにかく「ほんまか」、「自分でやってみたのか?」ということを大事にすることです。80歳で九州から京都にいらっしゃった妙心寺第677世の東海大光老師は、この「ほんまか」を体現されていた人です。あるとき、老師がポップコーンを食べていた子どもを見て、「それは何じゃ?食べさせてくれ」と言って一つ口に入れました。味が気に入った老師は、付き人に買いに行かせて「このポップコーンの豆を取り出して育てろ」と命じたんです。付き人は老師から「種子が死んでしまうから、お風呂の中で豆の周りの油を溶かし、剥がして中性洗剤で洗い、土を作って埋めてみなさい」と指示され、その通りにすると、なんと芽が出たのです。

野田:種が生きていたんですか!

松山:そこから本当にポップコーンが取れるようになったと聞いて、やはり老師はすごい、さすが禅僧だ、と感嘆しました。なぜなら、普通の人はそんな発想をしないし、したとしても実際にやってみようとは思わないでしょう。現代人は皆賢いので、「どうせこうだろう」「そうに決まっている」と決めつけて何もしない人が多い。実際にやってみることは原始的かもしれないけれど、大切なことを教えてくれるのです。こうした「ほんまか」の精神が、現代人に最も欠けていると思います。

新たな価値観へシフトするチャンス

野田:私たちP.G.C.D.のお客様は、ちゃんと自分を持っていらっしゃる、まさに「自由」な方ばかりです。でも、年齢を重ねたお客様からは、「シンプルなアイテムばかりだと困るのかしら」といったお声もいただきます。私たちとしては、「エイジングは恐れることではない」「大丈夫ですよ」と伝えたい。今後、お客様たちとそんなコミュニケーションをしていきたいと思っています。

松山:人の美しさは、いわゆる肌艶などではなく、生き方や雰囲気で完全に決まりますからね。それを実感したのが、修行道場に入ったときです。私は大学まではセオリーファーストで考える人間だったので、とにかく道場のやり方に不満を抱いていました。

一例を挙げると、食事の際、ご飯をつぐ係の修行1、2年目の下回りは、とにかく何をやっても頭ごなしに怒鳴られます。些細な動きや、抽象的でよく分からないことでも怒られます。私はそれに納得できなかったのですが、2、3年修行してみると、どれだけ出来のいい新人修行僧よりも、怒鳴られ続けてきた先輩修行僧の方が、お辞儀の仕方、廊下の足音、襖の開け閉めなど、何においても、立ち居振る舞いが非常に美しいのです。

野田:それはなぜですか?

松山:基本の型を大事にして、ずっと言われ続けたらそうなってくるんですよ。妙心寺639世の山田無文老師は、身長約150cmの小柄な方でしたが、宗教家として人前に出ると、場が鎮まるのです。老師から放たれるオーラが人々をそうさせるのです。こうしたオーラは論理的に言えることではなく、とにかく日々の鍛錬を通じて、美しい型をずっと守り続ける中で身に付いた1つの人間性と言えるでしょう。人の美しさも、おそらく同じではないでしょうか。外見だけ装っていても、話し方や姿勢、内面が美しくなければ、印象に残らないですよね。

野田:美しさとは、規定されているものではないと思います。日本の美とは、本質だけを残した美しさ。侘び寂のように時間を経て到達する美、その人が持つ日々の習慣で作られている美など、美しさにはさまざまな背景がありますよね。

松山:P.G.C.D.のご愛用者は、「私はこれでいい」という自信があり、時間の使い方も人生の選択もご自身で決断されてきたのでしょうね。それが総合的な美しさにつながっていくと思います。

野田:先ほどの「自(らに)由(る)」のお話のように、今は情報化社会で何事も比較しやすい時代だからこそ、他者と自分を比べることなく、自立する勇気を持つのが大切ですよね。

松山:そういう意味では、今はチャンスなんです。日本の歴史を振り返ると、鎌倉時代など天災が続き、混乱を極めた時代に、偉大な僧侶がたくさん登場しました。なぜなら、国難により、人々の価値観が大きく変容したからです。

私たちも自粛生活を経験して、これまで正しいとされてきたことが、「本当にそうだったのか?」と疑問を抱いたこともあったでしょう。「毎朝30分かけてメイクしていたけど、テレワークだし眉毛だけ描いておけばいいよね」とか(笑)。「美」とは何か、「幸せ」とは何かを考える非常にいい機会であり、凝り固まった価値観を見直すチャンスだと思います。

野田:そうですね、皆で考えていきたいです。それが、本当の「自由」ということですよね。今日は、いい時間をありがとうございました。



前編はこちら

Profile

【野田 泰平】
株式会社JBI GROUP(JBIG)代表取締役 Founder CEO、株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン(P.G.C.D.JAPAN,Inc)代表取締役 CEO。1979 年福岡県⽣まれ。
<学歴>
kuwasawa Design School 卒業
Globis 経営⼤学院 卒業
<学位>
建築学⼠ BARCH (Bachelor of Architecture)
経営学修⼠ MBA (Master of Business Administration)


【松山大耕】
臨済宗大本山妙心寺 退蔵院 副住職
1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。埼玉県新座市・平林寺にて3年半の修行生活を送った後、2007年より退蔵院副住職。外国人に禅体験を紹介するツアーを企画するなど、新しい試みに取り組む。外国人記者クラブや各国大使館で多数講演を行うなど、日本文化の発信・交流が高く評価され、2009年5月、政府観光庁Visit Japan大使に任命される。また、2011年より京都市「京都観光おもてなし大使」。2016年日経ビジネス誌「次代を創る100人」に選出される。2011年には、日本の禅宗を代表しヴァチカンにて前ローマ教皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するなど、世界を股にかけ、宗教の垣根を越えて活動中。


ライター・編集/高橋奈巳、西野愛菜

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