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ストーリー代表・CEO

二兎を追って 二兎を得られる 世の中を創る

代表_株式会社HARES

仕事と育児の両立、
副業・複業による
「スパイラルキャリア」を支援

企業のエンゲージ経営を推進する
働き方改革の「ドラえもん」

株式会社HARES
CEO/複業研究家
西村 創一朗 /Soichiro Nishimura

 

人々が自分らしい生き方を選択できるよう、社会の常識を変える

「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」

複業研究家・西村創一朗が掲げるビジョンだ。

「仕事」と「子育て」。「本業」と「副業(複業)」。そうした二兎を得たい個人を支援するとともに、二兎を追うことを認め応援する社会を創ることを自らの使命とする。

代表を務める株式会社HARES(ヘアーズ)では、副業・複業に興味がある人に向けて「つながりの場」「学びの場」「事業開発の場」を提供している。

完全招待制オンラインコミュニティ『HARES COMMUNITY~複業家1000人プロジェクト』や複業家のための学校『HARES UNIVERSITY』を運営。これらは複業や独立起業のノウハウ、最新のビジネストレンド、マーケット状況を学べる場だ。

ほか、『HARES WORKS』では、フルタイムではなく「ハーフタイム社員」として働きたい人のための転職を支援。複業したい人と、複業OKの会社のマッチングを手がける。

しかし、個人が「二兎を追う」生き方を望んでも、それを認めない企業が大多数を占めるのが現状だ。「イクメン」という言葉が浸透し、会社員男性へのアンケートで「育児休暇を取りたい」という男性が70%近くに達する結果が出ている一方、実際に育休を取っている男性は3%にも満たない。副業についても禁止している企業が多く、社会人大学院に通うことさえ、会社に内緒にしている人が多いのだという。

「自分らしく生きることが社則や職場環境によって阻害されている。そんな現状を変えたい」という西村は、経営のあり方そのものから考え直す必要があると考えている。

そこで、HARESでは企業向けに、働き方改革を通じた人・組織開発の支援も行っている。その中では、「副業禁止規定をなくす」「男性の育休取得率の向上」「時間と場所に縛られない働き方の創出」といった取り組みを推奨している。

これらは一見、社員だけにメリットがある「福利厚生」と思われがちだ。しかし、実のところ、企業の「成長戦略」としても有効であると、西村は言う。

「今、利益を挙げて伸びている会社と行き詰まっている会社。分かれ目は何かというと、『エンゲージメント』が高いか低いか、なんです」

 

企業を成長に導く「エンゲージメント経営」を支援

エンゲージメントとは「つながり」の意。人事分野では、企業と社員の関係性を示す。エンゲージメントが高いということは、社員の会社に対する「愛着」「思い入れ」が深く、さらには「会社と個人が双方の成長に貢献し合う関係」が築かれている状態といえる。

「『イントラパーソナル・ダイバーシティ(個人内の価値観の多様化)』という言葉があります。つまり、会社以外に家庭やそれ以外の第3の社会活動の場――副業、趣味、ボランティアなど複数の拠点を持って活動すること。そのように個人の中で多様性を持つことがイノベーションを生み、成長につながり、ひいては会社への貢献にもつながる。だから会社としては、個人の価値観の多様化を支援することで、エンゲージメントが高い組織をつくることができるのです。そして、従業員エンゲージメントをスコア化した『eNPS』という指標があるのですが、このスコアが上がると、次は『NPS』=顧客ロイヤリティ(企業やブランドへの愛着・信頼)が上がると言われている。つまり、中長期的に会社の利益や成長につながるんです。僕が目指すのは、そんな好循環を創り出すことです」

これに気付いた企業では、仕事と育児の両立支援制度や働き方改革に取り組む一方、「副業解禁」の検討を始めている。先進的なベンチャー企業ではいち早く「副業解禁」を打ち出し、すでに効果を挙げているケースが見られるが、2017年以降、その取り組みが幅広い業種の大手にも広がってきたという。西村のもとには大手企業からの研修依頼が相次いでおり、先日はJR東日本グループでも「副業入門講座」を実施した。その他、数多くの企業から依頼を受け、副業解禁など人事変革のコンサルティングを行っている。

西村の働きかけは政府機関にも及ぶ。政府は「日本再興戦略」として起業を推奨し、「兼業・副業を通じた新事業創出に関する研究会」も設置。西村は経済産業省の「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」に最年少委員として選出され、提言を行っている。

副業解禁の促進にとどまらず、「エンゲージメント経営」を推進するために、さまざまな角度から提案やサービス提供を展開。例えば、長時間労働削減の施策、リモートワークの仕組みづくり、コミュニケーションの活性化・迅速化のためのチャットツールの導入など。また、「採用」にもイノベーションを起こすべく、自らがリクルートキャリア在籍時代に導入して手応えを得た「リファラル・リクルーティング(自社社員や内定者に別の人材を紹介・推薦してもらう採用手法)」のノウハウも伝える。

新たに取り組むのはHRTech系プロダクトの事業開発支援。人事担当者が会社にとって本質的に必要なものを考え、実行することにパワーをかけられるように、ルーティンのオペレーションワークをテクノロジーで効率化・負担軽減する方法を探っている。

こうして西村は、組織創りにまつわる引き出しを豊富に備え、それぞれの企業に適したものを提供しているのだ。

「僕は、働き方改革の『アンバサダー』でありたい。100社あれば、100通りの課題がありますから。『エンゲージメントの高さ』という指標で、日本は今、世界139カ国中132位という残念な労働環境にあります。こんな社会に、我が子を送り出すわけにはいきません。働くことによって不幸になる可能性があるような状況を何とかしなければ。僕の長男が社会に出る2030年までには、日本のエンゲージメントを世界ワースト10から世界ベスト10まで引き上げることが僕のチャレンジ目標です。その達成のためにできること、すべきことは全部やろうと思っています」



19歳で「大学生パパ」に。「男性の育児」の啓蒙に取り組む

「社会を動かす」という志を持つ西村だが、中学時代まではすさんだ時期もあったという。小学生のときに両親が離婚。母は西村と2人の妹を育てるために働いたが、過労で身体を壊し、生活保護を受給するまでに困窮した。心のよりどころだったサッカーは自らのケガで断念。学校に行く意味を感じられなくなり、ゲームセンターに通う生活が続いた。

中学3年生の冬のことだ。担任教師から進路の希望を聞かれ「考えてない」と投げやりに答えた西村に、先生は「俺が公民の授業で教えた言葉を覚えているか?」と言った。

「それは、『国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えよう』という、ジョン・F・ケネディの言葉でした。家庭の事情のせいにして将来をあきらめようとしていた自分に気付かされた。それを機に『家族や社会に恩返しをするため、何ができるか』と考えるようになったんです」

社会貢献を志して大学へ進学。ところが1年次に大きな転機が訪れた。高校時代から付き合ってきた彼女が妊娠したのだ。周囲から「バカップル」と言われるほど仲が良く、結婚を決めていた2人にとって、素直にうれしい出来事。産む以外の選択肢はなかった。

2人で産婦人科を訪れた帰り、駅前のロッテリアで今後のことを相談した。店内に置いてあった『タウンワーク正社員版』を手に取り、大学を中退して働く覚悟を決めた。

しかし彼女の父から大学を卒業するよう諭される。結婚・出産後は妻の実家に同居し、学業を続けながら子育てとアルバイトに明け暮れた。しかし、一生懸命働いても学生アルバイトの稼ぎはたかが知れており、妻子を満足に養えないことにもどかしさを感じた。

「『これは自分が描いていた父親像じゃない!』と自分を責めていました。そんなとき、NPO法人ファザーリング・ジャパンの代表・安藤哲也さんのインタビュー記事を読んだんです。『良い父親ではなく、笑っている父親を目指そう』という言葉に、雷が落ちたような衝撃を受けました」

ファザーリング・ジャパンとは、父親の育児・家事・夫婦関係・子育て・働き方を支援する組織。活動に参加した西村は最年少で理事となり、現在も活動を続ける。

一方、大学卒業後はリクルートキャリアに入社。営業としてトップの業績を挙げた。しかし、社内でできることに限界を感じ、入社3年目に副業としてブログを開始。2015年、会社員という身分のままHARESを立ち上げた。2016年に会社を辞めるまで、まさに自身が「複業」を実践してきたのだ。

「ピーター・ドラッカーは『パラレルキャリア』を提唱しましたが、僕は『スパイラルキャリア』が理想だと考えています。本業と並行して交わらないのではなく、本業と副業が絡み合うことで相乗効果を発揮するほうが、個人のキャリアにとっても組織にとってもいい。僕自身、会社に勤務しつつブログメディアを通じた活動を行ったことで、人脈と知見が広がり、社内で新規事業企画に挑戦するチャンスもつかめました。『複業』のスパイラル効果で、やりたかったことに近づけた実感があります」

現在3児の父となった西村は、会社を辞めて独立したことを「育休的起業」と称する。労働時間は週30時間と決め、16時には帰途につく。子どもたちと遊び、一緒にご飯を食べ、お風呂に入る。週末は子どもたちが所属するサッカーチームのコーチを務める。あと5年は、家族との時間を何より大切にすると決めている。

「ちゃんと成果さえ上げていれば、働く時間やスタイルは個人の自由。可処分時間を増やし、家族や学びや複業に時間を投資できる。そんな世の中を創っていきたいですね」

 

リスナーの目線

独立起業後は順風満帆ながらも、将来への漠然とした不安や人付き合いの難しさで精神を消耗し、「死んで楽になりたい」と思うまでに追い詰められたという西村さん。セルフマネジメントの考え方を変えることで危機を乗り越え、今のスケジュールには「楽しみな予定しかない」のだとか。起業・複業の「負」の部分を痛感し、克服した経験を持つ西村さんだからこそ、自分の生き方を探る人々にとって説得力のある指針になるに違いありません。

インタビュー・編集/青木典子 撮影/田中振一

Profile

1988年生まれ。当時19歳の頃に長男が誕生し、学生パパとなる。その後、2009年よりNPO法人ファザーリング・ジャパンに参画し、現在は最年少理事を務める。

大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社。MVP受賞歴多数。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、第三子となる長女の誕生を機に「通勤をなくす」ことを決め、2017年1月に独立。独立後は「週休3日」で家族と過ごす時間を倍増させながら、複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業・政府向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。2017年9月より「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経済産業省)の委員を務める。

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