
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
財務会計ソフト『勘定奉行』をはじめ
「奉行」シリーズを展開
基幹業務の「次世代」を構築し、
中堅~中小企業の経営を支える
株式会社オービックビジネスコンサルタント
和田 成史/Shigefumi Wada
代表取締役社長
歌舞伎役者が登場するテレビCMでおなじみの財務会計ソフト『勘定奉行』。この製品をはじめ、人事労務、販売仕入など企業の基幹業務ソフト「奉行」シリーズを展開しているのが株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)だ。同社の勘定奉行は20%のシェアを保持。奉行シリーズ全体で、特許を持つ機能は100にも達するという。
「無から有を生み出すのは楽しい。昔から、まだ誰もやっていない、やろうとしないことに挑戦するのが好きなんです」と、代表取締役社長の和田成史は言う。
和田は、『勘定奉行』発売にあたり、ネーミングとブランディングに、「日本のものづくり」への想いを込めた。戦後、日本のものづくりは、自動車や電機などの分野を筆頭に飛躍的な発展を遂げたが、その成功要因に、基礎技術の成熟に加え、顧客が求めるものを効率的に作るという「応用技術」が優れていた点がある。
顧客はソフトウェアに、操作性、信頼性、使い勝手の良さなどを求める。こうしたニーズに応える製品を提供すれば、必ず満足につながる。そこにきめ細かく対応できる「日本」らしさを表現するため、ネーミングに漢字を使い、CMでは日本の伝統芸能である歌舞伎をモチーフにした。
「ソフトウェア業界では海外企業が大きなシェアを占めています。けれど、日本独特の強みを活かせれば、世界をリードする製品を生み出せるはずだと思っています」
OBCが創業以来、堅持しているのは「顧客第一主義」というコンセプト。実際、OBCの製品は「日経コンピュータ 顧客満足度調査」の 「ERPパッケージ部門」で、4年連続で第1位を獲得している。
高い顧客満足度を実現しているのは、同社のサポート体制だ。和田は、ソフトウェアは「使い始めてからが重要」と考え、顧客サポートに力を入れる。サポートセンターはアウトソーシングせず、ソフトウェアの開発や販売を行う正社員が週1回程度、ローテーションで顧客からの問い合わせを受ける体制を敷いている。
「顧客が何を考え、悩んでいるか。その生の声を、開発や販売に携わる当事者が直接聴くことを大切にしています。そこで気付きを得て現場にフィードバックすれば、次の開発や販売手法のヒントとなりますし、自身の成長にもつながりますから」
近年、IT業界には「クラウド」の波が押し寄せている。利用者がインターネットを通じてアプリケーションサービスを利用する形態だ。利用者にとってはサーバなどのインフラ導入が不要で、コストや管理の手間を省けることから、急速に広がっている。
和田は、クラウドが社会で認識される数年前からクラウド会計サービスの開発に着手。会計ソフトの変革をリードしてきたOBCが、この技術革新に乗り遅れるわけにはいかなかった。試行錯誤の中で大量のノウハウを蓄積したOBCは、クラウドに関する50近くの特許申請をし、うち5件程度はすでに認可されている。
「人よりも早く始めれば、早くいろいろな経験をしてノウハウを学び、人より先に失敗を経験できる。失敗を恐れてはだめ。失敗を経験できるからこそ早く始めることが重要です」
和田は、子ども時代から好奇心旺盛で、周囲とは少しものの見方が違っていたという。人が気にしないところに目を留め、常に問題意識を持っていた。気になったことは、人から説明されても簡単には納得しない。頑固なまでに、自分でとことん考え抜いた。
大学時代は公認会計士の資格取得を目指し、卒業後1年で二次試験に合格した。「いろいろなことに挑戦したかった」という和田は、簿記・会計の専門学校での受験指導、監査法人でのアルバイト、経営コンサルタント…という「三足のわらじ」をはいた。
経営コンサルタントとしては、課題分析や助言をするだけにとどまらず、自ら現場に入り、ITコーディネーターの役割も担った。このコンサルの仕事を通じて、システムインテグレーターのオービックと縁がつながり、1980年12月にOBCを立ち上げた。
当時、企業が会計システムに使う専用機は1000万円以上のものが中心。安くなればもっと普及するのに、と思っていたところに、PCが登場した。PCで動く会計パッケージソフトを作れば、価格を下げられるし、経営の効率化が可能になる。企業は煩雑な作業から解放され、本業に集中できる。取り組む価値を感じた和田は、ソフト開発に乗り出した。
「当時は『変人』という目で見られました(笑)。でも、誰もやっていないことだからこそ、自分が挑戦しなければいけないと思ったんです。企業が本来のビジネスの目的に集中するために、システムで代替できるものはどんどん変えていったほうがいい。それがイノベーションというものでしょう」
1995年、和田は、マイクロソフトがリリースしたばかりの「Windows」に向けたソフト開発に着手した。これが基幹業務ソフトの「奉行シリーズ」だ。
OBCの開発ミッションは、日本企業の大部分を占める中堅・中小企業向けに最適なソリューションを提供すること。Windowsの業務用ソフトなら、人もお金も不足しがちな中小企業でも安価で導入でき、使いやすい。劇的に広がった市場で、和田はビネスチャンスを拡大させ続けた。
起業からこれまで、常に順風だったわけではなく、和田にとって苦しい時期もあった。それは起業から約7年が経ち、社員数が70~80人ほどに増えた頃だ。
当時の社員は全て中途採用。各人の価値観や考え方が異なり、会社としての価値観も確立していない中、お互いの気持ちが通じ合わなくなってきていた。
「会社が組織として機能していない」。和田は限界を感じ、業績の伸びも鈍化した。
そんなとき、当時、日本研修センター代表だった武島一鶴氏と出会う。
話を聴いて気付いたのは、「人を育てようとするなら、まずは自分自身を変えていく努力をしなければならない」ということ。そこで、発想を切り替えるために、武島先生に教えられた2つの行動を習慣づけた。
1つは、家に帰るまでの道を「ありがとう小径」と名付け、通るたびに「感謝」の気持ちを持つこと。もう1つは、「ありがとう」を1日に200回言うこと。これを繰り返すうちに次第に見える景色が変わり、自分が変わっていくのを感じたという。
「感謝の心を持つことで、素直に物事を受け入れられるようになった。すると、変化への対応力やエネルギーが湧いてきました。武島先生の本のタイトル『問題は我にあり』の通りで、問題が自分に起因していると考えれば、どうすればよいかを考えられるようになるものです」
この時期から、和田は新卒採用を開始。OBCの「企業文化」の構築に力を入れた。
「問題は我にあり」の文化はOBCに定着し、社内には助け合う文化が醸成されている。そして、各製品担当チームの「縦」のつながりはもちろん、全チームを横断するワーキンググループを編成することにより、「横」の連携も強固なものとなった。こうした「チームOBC」の協力体制が製品開発の強みに反映され、顧客満足にもつながっているようだ。
OBCのコアコンピタンスは5つ。「基幹業務のパッケージ」「中堅・中小企業」「マイクロソフトの技術」「パートナー戦略」「ブランド戦略」だ。
和田は、創業以来変えなかったこの仕組みを、これからも変えるつもりはないという。顧客のニーズが変化し、テクノロジーが進化する中でも、本質を変えなかったからこそ、ソフトウェアの品質を高めることが可能であったし、奉行シリーズが成長し続けることもできたと考えている。
テクノロジーの進化とともにソフトウェアも成長する。これまでクライアントサーバーモデルだったものが、次世代ではクラウドモデルに変わる。和田は、このクラウドモデルにおいても、企業の基幹業務の「次世代」を構築することがOBCのミッションであるととらえている。
「クラウドモデルで可能になるビッグデータ分析によって、新たな展開が生まれる。これからクラウドがさまざまな可能性を広げ、企業の新しい基幹業務が構築されるでしょう」
企業の生産性が向上すれば、社内外のコミュニケーションやアウトソーシングが活発になり、在宅業務や海外での処理も可能になる。OBCは、働き方改革の促進、海外展開やグローバル化など、社会が求めるものをサポートし、実現させる。
本質を変えることはせず、イノベーションを社会貢献につなげることこそが、和田の目標なのだ。
幼少期から数字に強く、中学時代は珍しい「石」を探して日本中を歩いたという和田さん。人とものの見方が違うとのことで、とっつきにくい雰囲気の方かと思いきや、終始穏やかな笑みを浮かべ、楽しいお話で場を和らげてくださいました。「ありがとう」を言い続け、何事にも自然に感謝の気持ちを持つ姿勢がにじみ出ている、優しい表情が印象的です。そんな社長の温かな心がけこそが、「チームOBC」の社風を作り上げているのでしょう。
1975年、立教大学 経済学部 卒業。1980年、公認会計士・税理士登録。同年、株式会社オービックビジネスコンサルタントを設立、代表取締役社長に就任。
(一社)コンピュータソフトウェア協会(CSAJ) 名誉会長・理事
経済産業省 産業構造審議会ソフトウェア小委員会 委員
(一社)日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA) 理事
関東ITソフトウェア健康保険組合(ITS) 選定理事
(特非)ITコーディネータ協会(ITCA) 副会長
(公社)経済同友会 幹事
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