
病院を飛び出した理学療法士が鳥取県でつくる「つながり」
株式会社識学
取締役 経営推進部 部長(2019年)
→ 上級執行役員 事業推進本部 本部長(2022年)
池浦 良祐 / Ryosuke Ikeura
株式会社識学は、『識学』という独自の理論を用いて組織のコンサルティングをしている。2015年3月に設立し、現在5期目にして導入社数は全国で1200社を超える。2019年2月にはマザーズ市場への上場も果たした。こうした短期間での成果は、すべて識学の理論に則っているからこそ生まれたものだ。
識学では、一定期間にコンサルティング契約を結び、組織運営の原理原則のロジックを伝え、組織のパフォーマンス向上を図る、というビジネスモデルを採用している。つまり、常に新規の顧客開拓が必要となる仕組みだ。新規開拓にはコストをかけてマーケットを開拓するというのが定石だが、識学の新規顧客の広がりは異なった様相を呈している。
新規顧客のうち、7割が紹介によるもの。その内訳は、代理店を通した有償の紹介が2割で、残る5割は無償のお客様による紹介だ。なぜ、高確率での紹介が発生するのか。取締役の池浦良祐は次のように分析する。
「識学を導入すると、確実に成果が出ることをお客様が実感されるからではないかと推察しています。たとえば、識学によってマネジメントの手法を変えたことで、『時間の使い方が変わった』というお声をよくいただきます。本来の職務である経営について思考を巡らせる時間が確実に増えるため、変化を肌で感じていただけるようです。また、経営者やマネジメント層の方々は、会社を超えた横のつながりが非常に強いものです。成果を実感していただけているからこそ、『識学によってこう変わった』という“口コミ”の一つの要因になっているのではないでしょうか」
クライアント企業とのコンサルティング契約をおこなっている期間は、平均6~9ヵ月。契約後も勉強会やクラウド上で識学を学び続けられるプラットフォームを用意しているが、基本的には6~9ヵ月で「卒業」という形式をとっている。
「お客様は組織運営に何らかの課題があって、識学はそのソリューションをご提供するのです。卒業できないということは、すなわち課題が解決できていない、コンサルティングが正しく実行されていないことだと私たちはとらえています」
短期間で組織の課題に対するソリューションを提供し、確実に成果を上げる。その点がお客様に評価され、新規の紹介をいただけるという好循環につながっているのだ。
新規顧客が安定的かつ順調なサイクルで伸びを見せているため、その受け皿としての講師の採用・育成が急務となる。しかしながら、マザーズ上場により知名度も上がったことで求職者からの反応も良好だ。これまでは人材紹介会社やダイレクトリクルーティングを通じての求職者へのアプローチを主としていたが、最近では企業サイトからの問い合わせも増加している。
さらに、識学のコンサルタントである講師の養成は、他の企業コンサルティングと比較して短期間で一人前に育てられる点が強みだ。
「識学は、いわば方程式のようなものです。その解き方の訓練さえ受ければ、短期間であってもある一定のレベルのソリューション提供能力が身につきます。個人が培ってきた経験や感覚などからノウハウを提供する従来のコンサルティングとの決定的な違いはそこにあります」
講師の応募資格も「マネジメント経験を有していること」と、過去のコンサルティング経験は問わない。入社後にまずは3~4ヶ月かけて識学の理論を徹底して頭に叩き込む。講師試験の合格レベルに達すると営業や現場に出ることができる。そこから3~4ヶ月ほど経験を積み期待水準レベルに到達すれば、安定的に成果を出せる講師としてのひとり立ちが果たせるのだ。
現在、育成中の講師を含めると5期目の末には45名ほどの講師がそろう予定だ。講師が100名以上になれば、「新しい事業展開のフェーズに移ることも可能」と池浦は断言する。識学というコンテンツを用いれば、多岐にわたるサービス展開が考えられる。たとえば、ハンズオン型に近い事業再生を目的とした識学の活用である。事業再生が必要な組織に識学講師を派遣し、組織の改善をおこなうことで企業の業績向上につなげる、といったような取り組みができるようになるのだ。
「こうしたサービス展開をしていくには講師が100名ぐらいになり、エース級講師を新規事業に投入しても他の講師が安定して売上を上げていける体制にしておく必要があります。それは決して遠い将来の話ではありません。現在の採用、育成ペースでいけば2~3年ほどで達成できるのではないかと見込んでいます」
識学が掲げているテーマは「日本の組織・労働者の生産性を高めること」と池浦は語る。そのためには、日本に存在する企業を活性化させていく必要がある。
「中堅、中小規模の企業だけでも全国に60万社以上は存在します。そんな中、現在識学を導入いただいているのは、たった1200社。まだまだ識学が広がっていく余地は十分にあります。組織が存在する限り、マネジメントは市場からなくならない領域ですからね。口コミでの新規顧客の獲得という仕組みを活かし、講師の数を順調に増やすことでその輪の広がりを加速、拡大していく。それが私たちの成長の鍵だと考えています」
公開日:2019年10月29日
インタビュー・編集:三本夕子/撮影:田中振一
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