
一人ではできないことを、チームで実現させるスイミー経営
Web/IT、ベンチャー領域のM&A仲介で、
ベンチャーのエコシステムを作っていく
株式会社ウィルゲート
専務取締役COO 共同創業者
吉岡 諒 / Ryo Yoshioka
あまたあるコンテンツマーケティング支援企業の中で、16年の歴史と豊富な実績を誇る株式会社ウィルゲート。共同創業者であり、専務取締役COOを務める吉岡諒は、設立時の想いをこう語る。
「創業前に手がけたEC事業を通じ、中小企業にこそWebマーケティングが必要だと痛感しました。しかし中小企業に対して、親身にWebマーケティングを支援してくれる会社には出合えませんでした。世の中に価値ある『will』を持っていたとしても潤沢な予算が組めず、集客に苦労しているスタートアップや成長ベンチャーを支援するために、費用対効果の高いWebマーケティングサービスを作りたい。この想いからウィルゲートを設立しました」
2006年設立当初の同社の主力事業はSEO(Googleなどの検索エンジンで上位表示させる施策)コンサルティング。そこを起点に、Webサイト集客のためのコンサル・設計・流通までをワンストップでサポートする、コンテンツマーケティング事業に取り組んできた。2020年1月に事業方針を変更し、「デジタル変革」と「働き方変革」を核にサービス領域をマーケティング&セールスへと拡大。ベンチャー企業の事業成長における、大きな課題であるテクノロジーの発展や人材リソースの減少を解決すべく、「コンテンツマーケティング」「セールステック」「M&A仲介」の事業を展開し、延べ6,900社以上の企業を支援している。
創業時たった2人で始めたウィルゲートは、現在、正社員120名に業務委託40名を加えた、計160名のパワフルな企業体となっている。
2021年春の新型コロナウイルスの感染拡大は、ウィルゲートに大きな打撃を与えた。その最大の理由は、多店舗ビジネスやインバウンド関連のクライアントの業績不振により、SEOコンサルティングの売上が急減したことにある。ほかにも中長期投資に当たるオウンドメディアを休止する企業が続出したり、対面営業が行えなくなったりと、これまでの同社の強みを発揮できない状況下に追い込まれた。
「ウィルゲートは平均年齢が28歳ほどと若いIT企業ですが、お客様と対面でご挨拶をして信頼関係を紡いで、お仕事をいただいていました。しかし、コロナ禍で対面ができなくなり、新規営業の数字も著しく落ちてしまったのです」
ウィルゲートには小さな子どもがいる社員が多いため、家庭にウイルスを持ち込まないよう、緊急事態宣言中や感染者が多い時期は、基本的に全員出社禁止とした。社員と家族を守るための配慮だったが、在宅で業務を継続する社員の間に見えない動揺が広がってしまう。
「コロナ禍前に実施した“ウィルゲートの組織の強みは何か?”という社員アンケートの結果、1位は『一緒に働く仲間』、2位が『話を聞いてもらえること、コミュニケーションのオープンさ』でした。一緒にいることで、仲間が自分に強いプラスの光を与えてくれていた。リモートになり、その光が失われていく感覚がありました」
GPTWジャパンの「働きがいのある会社ランキング」に9年連続でランクインし、「組織力のウィルゲート」と自他ともに認められていた。その優位性はどうなるのかという不安の中、定期的にオンラインで面談を行うなどの努力を続けた。しかし、業績の見通しが立たないこともあり、いくつかの事業・プロダクトで投資縮小を行ったことが追い打ちをかけ、関わっていた人材を中心に離職が増加。吉岡は「緊急事態宣言後の半年間は、会社としてはとても苦しい状態でした」と振り返る。
コロナ禍により、一旦は苦しい状況に陥ったウィルゲートだが、環境の変化を前向きにとらえ、ウィズコロナ時代にいち早く適応することで蘇る。
「自分たちがいる業界やプロダクトがシュリンクしたわけではなく、顧客ポートフォリオが変わらざるを得なくなったと考えていました。対面営業が難しい状況から『Webマーケティングを強化したい』という問い合わせは増加していました。ウィルゲートもセールス&マーケティングをDXして、対面からオンラインセールスに切り替えて対応していったのです」
DXの具体的な施策は「Seminar(セミナー)、SEO対策、SNSの3つのS」。
セミナーのオンライン化により、従来は100人/月であった集客数が、ウェビナーの集客で一気に1,000人/月に。録画配信などで運用も効率化した。「自分たちがSEOを提供しているのであれば、自分たちを救うのもSEOである」と考え、順位が上がっていなかった「SEO対策」というキーワードの検索結果を1位に引き上げる。
「SNSについては、私自身がSNS経由で年間3億円ほど新規受注を獲得しており、それをさらに強化しました。社内でTwitterの勉強会を開催したところ、社員の3分の1に当たる50名が取り組んでくれました。その結果、仕事の引き合いを大幅に増やすことができたのです」
商談もオンラインに切り替えたことにより、コロナ禍前は1日5件だったアポイントが2倍以上に増えたという。
「移動時間が不要になった分、営業の活動量は増えました。そこでソーシャルセリングの新規事業やM&A仲介事業に力を入れました。 M&A仲介事業は、開始後2年で29件成約。この急成長がウィルゲートを助けてくれました」
こうした努力が実を結び、コロナ禍が始まって1年経った2021年の上半期は前年の赤字からV字回復し、創業来の過去最高益を更新した。
M&A仲介事業の急成長の背景にある営業基盤には、6,800社におよぶ既存の顧客基盤と、吉岡自身のSNSでのつながりの活用がある。
「学生起業してから17年間、人とのつながりを大切にしてきました。累計1万7,000名の方々と名刺を交換し、Facebook上の友達は1万人超、Twitterには2万人のフォロワーがいます。
この結びつきを活かしてM&A仲介事業を開始したところ、わずか2年で売り手500社、買い手1,200社を集めることができました。もともとのつながりを通じて打診するので、迅速にやり取りでき、同業他社が半年から1年かけている成約までの期間を平均3、4カ月にまで短縮しました」
ウィルゲートのM&A仲介事業の大きな特長は、大手が扱わない小規模な案件の売買にも対応できるよう、最低手数料を200万円と低く設定していること。着手金、中間手数料もない完全成功報酬体系を採用している。
「ウィルゲートの仲介では、売り手をWeb/IT、ベンチャーに特化しており、売主のほとんどは20代から40代の若手経営者。事業譲渡と株式譲渡の両方を手がけていますが、売却金額は2,000万円から5億円のレンジです。この金額であれば、大手仲介企業の場合、少なくとも4,000万円の手数料がかかってしまいます。 ウィルゲート自身が買い手として4回、売り手として2回実施しており、自分たちが頼みたいと思える料金体系を作りました」
売り手をWeb/IT、ベンチャーに特化した理由は、記事作成事業の顧客の事業をSEO事業の顧客が買うという、既存の顧客同士を取り持つ形でM&A仲介が始まったためだ。
「M&Aの第1号は、とある理由で資金ショートしそうな顧客でした。事業売却を実現することで、その難局を乗り越える手助けをすることができました。ウィルゲート自身、10年前の経営危機を事業売却で乗り越えた経験があり、『M&A仲介はチャレンジする起業家を応援することにつながる』とあらためて実感したのです。そこから新事業が自然に生まれていきました」
事業を開始した2019年の翌年、コロナ禍により空前絶後のDXブームが到来。Web/IT領域の買い人気が高まった。そこにWeb/IT、ベンチャーに特化したウィルゲートのコンセプトがマッチした。コロナ禍で事業のポートフォリオの見直しが必要な企業が増加し、売りニーズも増え、急成長につながった。ベンチャー起業家にM&Aという選択肢を与え、ベンチャーのエコシステムを作ることで市場を活性化させたい、という吉岡。
「M&Aは終わりではなく、新たな挑戦の始まり。お金を手に入れた人がエンジェル投資家になり、自分より若い人たちを応援して、ベンチャーマネーがスタートアップにいきわたる。そうして世の中が活性化すると考えています」
日本ではIPO信仰が強く、起業は走り出したら止まれない片道切符と感じている人が多い。海外ではIPOマーケットよりもM&Aマーケットの方が10倍大きいのに対し、日本はIPOマーケットがM&Aマーケットの2倍以上と逆転している。非常に偏ったマーケットになっていると吉岡は憂う。
「日本企業は技術自前主義の傾向が強く、大企業がスタートアップを買収する数はGAFAに比べると極めて少ない。しかしイノベーションが起こる確率は、自前技術よりもM&Aの方が高いというデータがあります。日本企業もM&Aを使って成長戦略を描いていくことが重要です。スタートアップやベンチャーが伸びていかなければ、新しい市場が大きくなりません」
ウィルゲートは3年後にこの領域でナンバーワンになることを目指し、事業を成長させていく。
「2年で29件のM&Aの成約を出すことができ、評価額40億円という大型のM&Aディールの支援の実績も出てまいりました。今後はさらなる事業拡大に向けて、タクシー広告などプロモーションを強化し、より多くの起業家のM&A支援をしていきたいと考えています。また、今後はM&A業務においてもDXを進め、Web/ITに特化したM&Aマッチングプラットフォームをリリースする予定です。 自社の開発力とデジタルマーケティング力を活かして、より多くの方々のM&A支援をしていきます」
公開日:2022年3月31日
1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役小島梨揮とともに2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で3,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。2018年にはSEOのAIツール「TACT SEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「エディトル」、M&A仲介支援サービス「Willgate M&A」をリリース。2021年はSNSを活用した営業支援「ソーシャルセリング」を開始。COOとして全サービスの管掌役員を務める。
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東京都港区南青山3-8-38 南青山東急ビル3F
インタビュー:垣畑光哉/執筆:ひらばやしふさこ/編集:山田富美
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