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ストーリー代表・CEO

手売りの営業スタイルと新商品の開発で、 「お菓子問屋」の新しい価値を実現

代表_虎屋商事

お菓子の可能性は無限大
地域に寄り添い、商品開発も手がける

直営店『王様のお菓子ランド』を運営。
マーケティングの成果と手法を顧客に提供

虎屋商事株式会社
代表取締役
高柳元一 / Motoichi Takayanagi

「手売り」にこだわった営業スタイルで、お菓子の可能性を広げる

「お菓子に関わる仕事をしたい」。それを実現しようとしたとき、どんな選択肢があるだろう。まず思いつくのはお菓子メーカー。しかし、メーカーでは毎日同じ自社商品と向き合うことになる。次にお菓子屋さん。いろいろなお菓子を仕入れられるが、自分のアイデアで新商品を生み出すことはできない。

では「お菓子の商社」ならどうだろうか。さまざまなメーカーのお菓子を扱い、お菓子屋さんとの架け橋となる商社。加えて、自社で直営の菓子屋を運営し、さらには自らの手で新しいお菓子を生み出すこともできるのが、虎屋商事株式会社だ。

虎屋商事は、全国のお菓子メーカー400社以上から仕入れを行い、小売店や専門店などに、それぞれの店舗に合った商品を提案・卸販売するお菓子の総合商社。1950年に創業し、菓子卸売業として60年以上の歴史を持つ同社は、業界の中でも強い独自性を持ち、順調に業績を伸ばし続けている。代表取締役である高柳元一は、その秘訣は「手売り」にこだわった営業スタイルにあると語る。

「卸売業は、右から左へと注文を受け渡して中間マージンを取るだけというのが一般的。一方、当社は、一軒一軒お客様を訪問し、数ある商品の中からその店舗に合った商品を持参し、実際に見てもらいながら提案する『手売り』にこだわっています。商売の基本は、責任を持つこと。仕入れ、販売、お客様へのお届け、集金、次の提案まで、営業担当者が責任を全うすることで信頼関係を築く。お客様に変なものは絶対に売れません。自分で納得したものを売ろうという姿勢を貫いています。納得する商品を探し求めた結果、取引先メーカーは400社に拡大しました。これだけの数のメーカーと常時取引がある卸商社は、日本全国を探してもおそらく当社くらいでしょう」

メジャーなお菓子だけでなく、地域に根付いた小さなメーカーの「隠れた名品」を発掘できるのも醍醐味だ。ときには商品開発に関わることもある。地場の醤油を使用したおせんべい、地鶏の卵を使ったカステラ、千葉産の落花生を使ったマコロンなど、さまざまな新商品を生み出してきた。虎屋商事が原料生産者とお菓子メーカーを結び付け、地域おこしに貢献しつつ、原料生産者・お菓子メーカー・お菓子店すべてを売上アップに導く。このようにメーカーや小売店と喜びを分かち合えるwin-win-winの関係を築き、お客様に「必要とされる」企業であることが、同社の目指す姿だ。

もう一つ、虎屋商事の独自性を色濃くしている取り組みが、お菓子専門店『王様のお菓子ランド』の運営である。現在、首都圏に13店舗あり、それぞれの地域の顧客特性に応じた品揃え・店舗デザインをしているのが特徴だ。このアンテナショップはどの店舗も大人気。卸売業ながら実店舗を構えることで、消費者のニーズをキャッチしている。

24歳で専務に。時代が変わっても、人間関係や地域性を重視

高柳は、生まれたときからお菓子に囲まれていた。父親が虎屋商事の創業者であり、仕事場と自宅が一緒。学校が終わると友達が集まってきて、店頭に出せなくなった白茶けたチョコレートを皆で頬張った。

「幼少時代はいつも遊びに夢中でした。興味があることを見つけると『研究』に熱中するタイプでしたね。例えば、縁日で買ったひよこ。数日で死んでしまうのが悲しくて、どうしたら生きるかを子どもながらに研究したんです。観察しているうちに、ひよこは夜のうちに死んでしまうのだと気付いて、一晩中電球で照らしてみました。すると、だんだん育って、ある日とさかが生えてきた…なんて思い出もあります(笑)」

ところが、高校入学から大学卒業までは、やりたいことを見つけることができず、鬱積した期間を過ごした。高校受験のタイミングで病気にかかり志望校に挑戦できなかったことで、自分だけ取り残されたような孤独感に襲われたのだ。在学中も、練習に打ち込む高校球児を横目に、熱中できるものが見つからない自分にもどかしい想いを抱えていた。

しかし高柳は「人生の中では、そういう空白の期間も必要だった」と言う。心にたまった澱が、反動となり成長につながったのだと、当時を振り返る。

大学卒業後は、名古屋にあるお菓子問屋に就職した。ゆくゆくは家業を継ぐための修業期間だった。2年間という短い期間だが、他社での社会人経験は今でも財産となっている。

「お給料をいただく立場を経験できたことが良かったです。それから、理想の上司像を描けたのも良かった。新入社員であっても、『この人は口先だけだな』などと、上司の実力はすぐ見抜けます。私は上司に恵まれ、当時の直属の営業部長が全国の菓子問屋さんの中でトップになったんです。メンバーに後ろ姿で見せることを学びましたね」

2年間の修業を経て虎屋商事に入社すると、当日から高柳には「専務」のポジションが用意されていた。しかし、高柳はそれが嫌で仕方がなかったという。

「たかだか24歳の若造が専務と書かれた名刺を差し出す。すると、相手は当然『え?』という顔をするわけですよ。自分は肩書に見合うような実力がまだまだ伴っていないのに…と、何とも居心地の悪さを感じました。ただ、今になってみれば若くして専務の立場に置かれたことで、加速度的に成長できたのだと思っています」

1996年、38歳で社長に就任。先代の時代はまだまだ小売店が元気で、卸売業者にも豊富に仕事があった。しかし、インターネットや大型ショッピングセンターの台頭など、時代の変化とともに、同業他社はみるみるうちに減っていった。

高柳は社長就任後、変化を恐れることなく、配送部門を分社化するなど事業の改革を行った。それでも、先代から受け継いだ「手売り」の営業手法を変えることはなかった。

「はっきり言って、私たちは時代を逆行しています。でも、それがウケている。地域に根差した街の商店はどんどんシャッターを下ろし、コンビニエンスストアや大型ショッピングセンターは過剰気味と思えるほどに増え続けていますが、それが進むとどこへ行っても同じ商品が並ぶようになります。コンビニは売れ筋商品の欠品は許されませんから、どんなに良い商品でも欠品の恐れのある小さなメーカーの商品は置いてもらえないんです。そこに、私たちの存在価値があります。こういう時代だからこそ、大量生産や薄利多売という手段ではなく、人間関係や地域密着に重きを置き泥臭くやっていく。そしてそれは、“お菓子”という老若男女誰もが大好きで、どこでも売れるものだからできるのです」

「助け合いの精神」と「変化を恐れない挑戦心」と

首都圏に展開中のアンテナショップ『王様のお菓子ランド』。実は、戦略的に始めたものではなく、高柳の「ご縁を大切に」というモットーが起点である。もともと「来るもの拒まず」という考え方。『王様のお菓子ランド』も経営難に陥った知り合いから頼まれ、事業を引き受けることになったのだ。当初は2店舗だったが、いざ始めてみると、卸売業としての経験や地域性への知見が役立ちヒット。今や13店舗にまで拡大させている。

店舗運営は店長に任せており、入社1年目から活躍する社員もいる。お店をまっさらな状態からレイアウトしたり、商品構成を考えたり、イベントを仕掛けたりと、店舗運営の自由度は高く、店長に任されている裁量は大きい。スタッフの採用も店長の仕事だ。

マーケティングにも力を入れる。そのエリアにはどんな人がいて、どんな気分で来店するのか。店舗ごとにそれが考え抜かれており、カラーがまったく違うのもそのためだ。

例えば、茨城県にある古河店。高齢化が進んでいる地域であるため、お年寄りの好みに合わせた商品構成にしている。グミやガムなどは、歯に詰まるのでNG。硬すぎるおせんべいも好まれない。一方、横浜のみなとみらい店は、横浜土産が当たるかと思いきやそうではなかった。みなとみらいに来る人は情報や流行に敏感な層が多く、バラエティ番組で紹介されたお菓子や販売終了が決まった商品など、話題性のあるものがウケたのだ。

このように、店舗運営をしているからこそユーザーのニーズやトレンドをつかむことができ、そこで得た知見を顧客に提案できるという好循環が生まれている。

虎屋商事の社風について、高柳は「助け合いの精神が根付いている」と言う。その精神は社内だけにとどまらず、社外での取り組みにも反映されているようだ。

同社では、病院や介護施設へのお菓子の出張販売も行っている。50種類以上のお菓子を持っていき、ずらっと並べて簡易店舗を作るのだ。外に買い物に出られないお年寄りが、この出張販売を心待ちにしているという。果物を望むお年寄りがいたら、八百屋まで買いに行き、利益を乗せず仕入れ値で販売することも。外出できなくなっても、自分で買う楽しみは人を元気にする、と実感した高柳は、今後もこの活動を広げたいと考えている。

虎屋商事のトップとして、高柳が大事にしていること。それは、変化を恐れないこと。そして、ご縁を大切にすることだ。

「世の中はご縁でつながっていると思うんです。だから、何かお話をいただいたときに、それが従来の枠からはみ出ていたとしても、まずはやってみる。それが次の変化を生み出します。お菓子は日常生活に不可欠なものであり、ビジネスチャンスは無限大。私たちにしか生み出せない価値を、これからも追求していきます」

リスナーの目線

「さっき会議でこの商品を皆で食べて、美味しいね、多くの人に知ってほしいね、と話してたんですよ」と、珍しいお菓子を見せてくださった高柳社長。その笑顔やお話しぶりには、お菓子への愛情、そしてお菓子を食べる人、つくる人たちへの愛情があふれていました。取材スタッフにも、「お土産に」とお菓子をたっぷり持たせてくださり、自らの運転で駅まで送ってくださり……まさに「人とのご縁を大切に」を体現されている方でした。

インタビュー・編集/青木典子、ニシブマリエ 撮影/出島悠宇

Profile

1957年、埼玉県川越市で菓子卸業を営む家に生まれる。明治学院大学法学部卒業。名古屋の菓子商社に2年勤務した後、虎屋商事株式会社に入社し、専務に就任。1996年、代表取締役に就任。

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