
病院を飛び出した理学療法士が鳥取県でつくる「つながり」
日本ファイナンシャルプランニング株式会社
FPコンサルティング事業部
千葉 美鈴 / Misuzu Chiba
「お客様にとって愛の伝道師でありたい」と話す千葉美鈴は、日本ファイナンシャルプランニング株式会社のファイナンシャルプランナーの一人だ。同社は、お金や住まいに関する顧客のライフプランを総合的にサポートする保険代理店であり、人生の総合コンサルタントでもある。ここで千葉は、これまでの経験を活かし、顧客の想いと人生に寄り添っている。
主な顧客は、一般世帯の個人。ライフプランシミュレーションを通して、万が一の備えや資産形成など、人生におけるお金の悩みを解決する手助けをしている。そのすべての場面において千葉は、要望だけでなく、その奥にある「想い」にまで目と耳を向けていると話す。
「お客様に商品をご提案する際には、その商品が、お客様のご家族に対するラブレターになるようにと考えています。愛情はお金では買えません。ですが、お金に、ご家族に対する想いを乗せて届けることはできます。ですから、お話をお聞きするときは『心に寄り添う』ことを心がけています。普段は照れくさくて、ご家族やパートナーに伝えられない感謝や想いを、私を通して伝えられることが度々あります。ご家族の愛情や絆が深まる場面に立ち会えたときは、私まで幸せをいただいたようなうれしい気持ちになります」
顧客の幸せや未来をとことんまで案じる背景には、自身の体験が影響している。
千葉は小学6年生の冬に、家庭の事情で千葉県から母方の実家がある山梨県に移り住んだ。すぐに迎えた小学校の卒業式は、他人事のようだったという。中学校で入部した吹奏楽部は、高校進学後も続け音楽漬けの6年間を送った。卒業後は音楽大学への進学を希望していたものの、家庭の経済的事情で断念。当時をこう振り返る。
「進学自体、諦めてほしいと言われました。ちょっとした挫折感ですよね。そこで学費免除で通える都内の大学に進学したんです。入学直後から週6日のバイトで生計を立て、働くことが本業のような毎日を送りながら、なんとか卒業しました。とはいえ、続けたかった音楽を諦めた喪失感は拭えないまま。だからなのか、就職では経済的な苦難も含めて、どうにかして人生を挽回したいと考えていました」
そして選んだのが、不動産会社の営業職。経済的な苦しさを知っていたからこそ、歩合制という給与体系に強く引かれた。男性社会の不動産営業だったが、千葉に不安はなかった。中学高校で一心に打ち込んだ部活動、大学で学業と並行してのバイト生活、すべて根性で乗り越えてきた自負があったからだ。不動産営業で4年間勤めた後、外資系の生命保険会社に転職。こちらも大多数が男性だったが、4年間プランナーとして活躍した。
転職当初は、うまくいかない仕事に悩む日々が続いた。プランを薦めても、顧客の反応がとにかく鈍い。なかには音信不通になることもあったという。自分なりに一生懸命顧客に寄り添っているつもりだった千葉は、何が足りないのかが分からずにいた。
「もともと性格的に『良いと思ったものは、良いと伝えたい。その良さを大切な人に分かってもらいたい』という想いが強い。お客様に対しても同じで、相手のことをとことん考えて導き出したご提案内容なんだから、理解してもらえるはずだと考えていたんです。お客様だけでなく、アドバイスをくれる仕事仲間や家族に対しても、自分の想いばかりを優先していた。でも、それって相手の想いを二の次にして、耳を貸してくれている優しさに甘えているのと同じことなんですよね」
そのことに徐々に気付くにつれ、お客様・仲間・家族との関係も良くなっていったという。自分の想いは脇に置き、まずは相手の想いに耳を傾ける。それを強く意識したことで、自分の価値観が広がり、自然と周りへの感謝の気持ちも湧いてくるようになったと話す。そうした経験を経て、千葉は結婚を機に日本ファイナンシャルプランニングに転職した。
顧客と、顧客を取り巻く人すべての幸せを願い、前職2社での経験を活かして「想い」をカタチにするため向き合う日々。そんな千葉に今後の展望を聞いた。
「男性の多い職場であっても、女性が自分らしく働けることを示せるロールモデルになりたいですね。今、未就学児2人の育児中ですが、この先また人生に何かしらの変化があっても『母親だから』『女性だから』といった理由で自分の可能性を諦めたくないと考えています」
結婚や妊娠・出産を機にキャリアプランを描きなおす女性は多い。極端な話、長い人生の中でいつ死別や離別があるかも分からない。そんなとき「生きていく力」がなければ、自分のように金銭的苦労をしかねない。だからこそ千葉は思う。
「お客様には短期的な利益だけでなく、長期的な幸せについても考えていただきたい。私はその『伝道師』のような存在でありたいです」
インタビュー・執筆:浜田みか/編集:室井佳子
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