池尻大橋をメイン拠点とする地元密着型の不動産仲介サービス
ITを活用し、これまでにない不動産情報サービスの開発に取り組む
株式会社ウィル・ビー
代表取締役
冨樫 美穂 / Miho Togashi
平均4回。これは人の一生における引越しの回数だ。
「お引越しを通して、人生をより素晴らしくよりハッピーなものに」というコンセプトを掲げるのが株式会社ウィル・ビー。池尻大橋と恵比寿に3店舗を構え、池尻大橋、代官山、三軒茶屋を中心としたエリアの不動産賃貸・売買仲介、マンション管理を手がける。
同社の社員はほぼ全員、このエリアで暮らしているという。都心に近く、買い物にも便利である上に、緑豊かで落ち着いた環境。代表取締役の冨樫美穂は「自分たちがこの街での暮らしを楽しんでいるからこそ、本当に良いご提案ができる」と自負する。
「進学や就職ではじめて一人暮らしをするお部屋をご紹介したお客様が、その後、昇進、結婚、出産などライフステージが変わる度に新しいお部屋探しの相談に来てくださることも多いんです。お付き合いが10年以上に及ぶお客様もいらっしゃいます。『地域密着』のスタイルだからこそ感じられる喜びです」
不動産の営業職というと、一般的に成約した件数・金額に応じて給与が支払われる「歩合給制」をとっていることが多い。しかし、ウィル・ビーでは歩合給制をとらず、主体性と積極性を重んじた「チームプレー」によって目標達成を目指すスタイルを確立した。
「歩合給がなければ、目先の利益にとらわれることなく、本当に良い仕事ができると思います。もちろん利益を追わないというわけではありません。こちらの都合がいい物件ではなく、お客様にとって本当に満足できる物件をご紹介することで信頼を得られ、長期的なお付き合いにつながる。そういう形で利益につなげていくのが理想です」
幼い頃は引っ込み思案だったが、「働くこと」の楽しさを覚えてからオープンな性格に変わったという冨樫。学生時代はアルバイトが楽しくてたまらず、そば屋、お好み焼き屋、コンビニなどのバイトを掛け持ちした。
短大卒業間近に出会ったのが、携帯電話の通信販売の仕事。アルバイトから始めたが、「私1人でやるので部屋を貸してほしい」と会社に交渉。弱冠20歳で個人事業主となると、商才を発揮し、わずか3年で年商約7億円を稼ぐようになった。
時代の後押しもあって順調だった携帯電話ビジネスだが、やがて「将来性」「やりがい」に疑問を抱くように。そんなとき知人の経営者から「君ならきっと向いている」という助言を受け、24歳で不動産業界へと足を踏み入れた。
とはいえ不動産に関してはまったくの初心者。そこで、不動産業界経験豊富なスタッフを迎え入れ、2000年、株式会社ウィル・ビーを設立した。
設立当初は不動産業界の慣習に則った経営スタイルだった。しかし、まもなく「これでは会社がダメになる」という危機感を抱く。歩合給を高めに設定していたことから、社員が自分の手取りを増やすため、ときにお客様を誘導してしまっていると気付いたのだ。
冨樫は歩合給を完全に廃止。チームで目標設定をする仕組みへと方向転換した。社員は反発し、ほぼ全員辞めていったが「清々しい気持ちだった」と当時を振り返る。
「新卒採用したメンバーと再出発。自分の損得を考えず、お客様のためにひたむきに頑張る姿を、お客様はちゃんと見てくださっている。その評判が口コミで広がり、次第に業績も回復しました。不器用でも真摯に向き合っていれば結果は必ず出ると実感しました」
冨樫は、社員教育にも力を入れている。それもいわゆる一般的な企業研修ではなく、あくまでも「人」にこだわり、「人」を大切にするというコンセプトのプログラムだ。
例を挙げると、年1回実施される「ライフプラン」研修。全社員がそれぞれのライフプランを240マスに埋めていく。そこに書き入れるのは夢物語ではなく、リアルで整合性の取れた内容。それを皆でシェアし、意見し合う。矛盾があれば指摘されるため、自分の目標をより深く見つめ、コミットすることとなる。遠い夢だったものがリアルに感じられ、達成する喜びを皆で分かち合えるという。そして、社員がお互いの価値観、考え方を理解することで安心感が生まれ、より強いチーム力が醸成されていく。
「一人ひとりが自分の人生でどんな価値観を大事にしたいのか、どんな人間になりたいかを真剣に考えることで、表面的なモチベーションではなく、自分の人生を良くするためのモチベーションに変えていける。これは私自身、経営者会で10年以上経験し続けていて、その効果を実感しています。さらには自分のライフプランに向き合うことで、お客様のライフプランや価値観に対しても想像を膨らませることができると思うんです」
加えて、部下を持つ社員に対してはコーチング研修も取り入れ、一人ひとりの強みを引き出し、活かせるような組織作りに努めている。自分が当たり前にできることでも、他のメンバーにはできないこともある。けれど、違うやり方で強みを発揮することもある。それを理解し、マネジメントすることが大切だと考えている。
社員同士が信頼関係で結ばれる風土を築いてきたことから、社員はプライベートでも仲が良いという。クラブ活動などスポーツを介したコミュニケーションも盛んだ。社内婚も多く、社員20名の中から3組の夫婦が誕生。現在も夫婦で働いている。
このように、今でこそ心地よく働ける環境が整っているが、その過程には、冨樫の度重なるトライ&エラーがあった。以前はいろいろな経営勉強会に参加し、自分が良いと思ったものすべてを取り入れたという。しかし、ことごとく失敗。なぜなら冨樫がやりたいと思っても、社員はやりたいと思っていなかったからだ。「社員に一方的に押し付けて、社員たちを疲れさせてしまった」と当時を振り返る。
冨樫がそれに気付いたのは自身の出産のタイミング。プライベートが忙しくなり、会社から一歩離れて客観的に見られるようになった。そのとき、メンバーが欲しているものが見えてきたのだ。今では、新しい仕組みを導入するにも、「メンバーたちが求めているか」を踏まえて決断している。
「これまで多店舗展開や規模拡大は考えなかった」という冨樫。多店舗体制の中で「社員がイキイキと働けるか」を自問したとき、答えは「No」だった。多店舗展開すると異動が発生し、せっかく信頼関係を築いたお客様との縁が切れてしまう。現場で起こるさまざまな問題に、トップが気付くことができず、問題が深刻化してしまうこともあるからだ。
とはいえ、「現状維持」に甘んじることはない。新たなイノベーションを起こし、この業界にインパクトを与えるべく、構想を膨らませている。
「何より自分自身がワクワクし続けたいんです。ワクワクやドキドキが減って、何となくつまらなさそうな大人にはなりたくないですよね。社員の皆にもそうなってほしくないですから、今後もいろんなチャレンジをしていきたいです。人間って何か新しいことをするとワクワクするじゃないですか。そういった点からも店舗を増やすことはピンと来なくて、では他にワクワクできることは何かを考え続け、ようやくこの2年くらいでブレークスルーしそうな感じです」
キーワードは「IT×不動産」。ITを活用し、これまでにないサービスを開発すべく、情報収集と人脈づくりを進めている。例えば、引越しをする際、「賃貸か購入か」というそもそもの選択に悩む人もいる。しかし、両方の専門知識と物件情報を持つ人は非常に少ないのが現実であり、ユーザーは誰に相談していいかわからない。そんなニーズに応えるようなサービスを、ネットを使って構築したいと考えている。
「不動産は巨大にしてアナログな業界。お客様、そして働く人にとって不便なこと、理不尽なことがたくさんあると感じています。これまではあまり知恵を絞らず、どこかおかしいと思いながらも、苦労しなくてもやりきれる時代でした。ところがその当たり前の世界が、今、どんどん変わろうとしています。時代が変わる前に、自分たちが変わっていかなければ。問題点や課題を一つひとつ抽出し、どういったビジネスモデルをつくったらお客様と働く人のためになるか。それに思いを巡らせるときに私はワクワクを感じますし、メンバーたちのワクワクにもつながるのではないかと思います」
自らを「根っからの起業家」と呼ぶ冨樫。それを確信したのはここ数年のことだ。
「初めて起業してから20年経った今、改めて自分は『0→1』が得意なんだな、と感じています。0の状態から1を生み出すときに自分の強みを一番発揮できるのだと。今後は、これまでと同じ不動産分野内ではありますが、ITを加えることで新たなビジネスモデルを模索していきたいですね。これから入社してくださるメンバーには、私が立ち上げる事業を一緒に育ててくれる仲間になってほしいです」
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もともと、永遠のアイドル的な愛らしさとビジネスに対する鋭い嗅覚を併せ持つ冨樫さん。およそ2年ぶりの取材でしたが、子育てなど、私生活も以前のペースを取り戻されたのでしょう。新しくなったオフィスで、終始、新たなビジネス展開について語る横顔に、起業家らしい健全な野心が垣間見られました。「錆びない」という言葉がぴったりな生き方は、私たちもぜひ心がけたいものです。
1976年、山形県生まれ。短大卒業後、携帯電話の卸売にて個人創業し、翌年に法人化。
2000年9月株式会社ウィル・ビー設立。現在は、池尻大橋と代官山にて3店舗を展開。
女性ならではの視点で、お客様と一生涯のおつきあいができる地域密着型の不動産会社を目指している。
長男・長女を持つ二児の母として、これからの女性の働き方を体現中。
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