
病院を飛び出した理学療法士が鳥取県でつくる「つながり」
株式会社秋葉牧場
執行役員・観光事業部事業部長
齋藤 学 / Manabu Saito
「動物の飼育体験をしてもらおう」
「子どもたちに牛柄のフェイスペイントをして楽しんでもらおう」
「ウサギのお尻の写真と鼻の写真を並べて展示して、どちらが好きか投票してもらおう」
千葉県の観光牧場『成田ゆめ牧場』を運営する株式会社秋葉牧場では、イベント企画などのプロジェクトが立ち上がると、朝礼後にブレスト(ブレインストーミング=複数名でアイデアを出し合う)がおこなわれる。
参加者は全スタッフ、約50名。7~8名ずつ、6~7つのグループに分かれて、アイデアを出し合う。議論がまとまれば、グループごとに発表し、全員で検討。執行役員・観光事業部事業部長の齋藤学は「誰もが遠慮なく思ったことを言える場」だと言う。
「バカバカしいアイデア、とうてい実現できないような突拍子もないアイデアも出てきます。『思いついたら何でもどんどん言おう』という方針ですから、皆、好きなことを言いたい放題です(笑)。成立した企画を実行するにあたっては、入社2~3年目の若手がリーダーを務めることも。トップから『これをしろ』と指示されるのではなく、すべて自分たちで決めていけるので、皆、面白がってやっていますね。最終的には、お客様の安心安全が施されているのか、わかりやすく混乱ないように進められるのかを管理職に確認・承認された後、準備・運営することになります」
グループのメンバーは定期的に入れ替える。メンバーの担当職種はバラバラ。酪農・園芸・製造・販売・飲食・遊戯施設・キャンプ場運営・動物イベントなど、約20ある部門のスタッフが入り交じって取り組む。
「普段は接点がない部門・職種の人とコミュニケーションをとる機会を設ける、という狙いもあります。どの部門・職種も、『来場者を楽しませよう』という目標は同じ。その実現に向けて一体感を持って取り組めるようになれば、と。それに、お互いの仕事を知ることで、気付きや学びを得ることもできます」
実際、一つのプロジェクトテーマに対し、さまざまな視点でのアイデアが交換されている。例えば、例年7月におこなわれる「牛祭り」。酪農スタッフからは「乳しぼりの量・スピードを競うレース」や「削蹄(牛の爪切り)の見学会」、飲食スタッフからは「牛の4つの胃袋は、それぞれどんな食べ方が美味しいかを教える」、キャンプ場運営スタッフからは「牧場に宿泊してもらう」など、その職種ならではの発想が出てくる。
動物スタッフが「イースターイベントで期間限定フレーバーのソフトクリームを作ろう」と言えば、飲食スタッフが「『イースターバニー』にちなんで、うさぎの耳型のチョコをあしらおう」と提案するなど、複数職種の連携によってアイデアがブラッシュアップされているという。
アイデアを検討する途中でボツになりかける案もあるが、別のグループのアイデアと組み合わせることで実現する企画もある。幅広い事業を展開する秋葉牧場ならではの強みといえそうだ。
異なる部門の発想が組み合わさって、新しい企画が生まれることも。メディアで取り上げられることもある名物スイーツ『飯ごうでDoプリン』は、キャンプアイテムである飯ごうに入った1.5リットルのプリン。「自慢の牧場牛乳を活かした商品を作りたい」という通信販売部門とキャンプ場運営部門のアイデアが融合したヒット商品だ。
「今後も商品やイベントなどの企画では、いろいろな部署をごちゃ混ぜにして、意見を出し合うやり方で運営していきます。組織が縦割りにならないようにして、柔軟に物事を考えられる社員を育成していきたいですね。そのためにも、社内の部署同士の連携はもちろん、外部機関の研修も取り入れるなどして、今まで以上に教育にも力を入れていきます」
インタビュー・編集:青木典子、西野愛菜/撮影:鈴木愛子
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