
「楽しく働く」をモットーに最速で支店長へ。直感を信じ、女性のキャリアモデルを体現。
悔しい経験をバネに
主力事業の転換を決断
3部門のエンジニアが
「普通のIT企業」とは違った
価値を提供する
株式会社システムフォレスト
代表取締役
富山 孝治 / Koji Tomiyama
株式会社システムフォレストは熊本県人吉市に本社を構えるIT系企業だ。しかし「普通のIT企業ではない」と、代表取締役社長の富山孝治は断言する。
「IT企業の多くは、メーカーから委託を受けるアウトソース型。こうした場合は、出向先に派遣をしたり常駐したりする必要があり、地元を離れることを余儀なくされます。だから、当社は下請けとして様々な会社から仕事を受託するスタイルではなく、主軸事業を絞ってサービス提供をすることで、ずっと熊本や九州にいられる働き方を実現できるIT企業を目指してきました」
システムフォレストが主軸として展開しているのが、クラウドソリューション事業だ。一次代理店としてのクラウドサービスの販売、導入・運用支援、カスタマイズ、さらにはクラウドを活用した業務改善のコンサルティングを手がけている。世界トップのビジネスプラットフォームであるSalesforceを筆頭に、Evernote、LINE WORKS、Dropboxなど、実績の高いアプリケーションを幅広く取り扱っており、600社ほど抱えている顧客のビジネス成功に貢献してきた。
クラウドは、一度導入すれば半永久的に保有できるパッケージ型のソフトウェアではなく、月または年単位の契約が可能なサブスクリプション型のソフトウェアだ。継続的にアプリケーションのアップデートが行われるので、常に最新バージョンを利用できる。そんなクラウドの特長を活かし、システムフォレストでは顧客の状況やニーズの変化を見逃さないように努めている。売上目標や事業展開の方向性などは年度ごとに変わっていく企業がほとんど。その都度提供しているサービス内容を見直し、最適なプランを提案しているのだ。
「『カスタマーサクセスファースト』、つまり顧客のビジネス成功を第一に考えることが私たちの使命だと思っています。そのための協力体制は整えているつもりです」
そう富山が話すとおり、システムフォレストの組織体制は他のIT企業とは少し異なる。9割以上がエンジニア社員というIT企業が多い中、システムフォレストでは営業部門やマーケティング部門に所属する社員が半数を占めている。これは勉強会やイベントの開催といった啓蒙活動に力を入れて、顧客のクラウドリテラシーを高めるためだ。
エンジニアが所属しているコンサルティング部門は、3つに細分化され、役割分担がはっきりと定められているのが特徴。顧客から要望をヒアリングしながら設計内容を決めていくメンバー、その内容をシステムに落とし込み実装するメンバー、そしてカスタマーサクセスマネージメント(CSM)と呼ばれるメンバーがいる。CSMは、問い合わせ対応や顧客企業の新入社員へのクラウド教育など、サービスを長期間に渡って利用してもらうために欠かせない、いわば顧客の秘書役だ。
「扱っているツールはデジタルなものですが、風土は泥臭いところがあるかもしれません。社内体制が整っていなかったり、顧客とコミュニケーションが図れていなかったりするだけで、失敗してしまうこともあります。だから手間暇かけることを怠らず、非効率の中から生まれる感動を大切にしたい。水鳥のように優雅に泳いでいるように見えても、実は水面下で必死に足を動かしている―。システムフォレストはそんな会社だと思います」
熊本県で生まれ育った富山。高校卒業後、福岡大学へ進学し、「就職活動の時に有利」という理由で法学部法律学科を選んだ。在学中、学業よりも勤しんでいたのがマクドナルドでのアルバイト。学生ながらマネージャー職まで昇格し、周りも富山自身もそのままマクドナルドへ就職するつもりでいたが、ふと「これからの時代はITが盛り上がるのではないか」と、IT業界を中心とした就職活動を開始。縁あってNECのグループ会社へ入社した。
同期のほとんどが理系や専門学校出身の中、文系出身の富山にまわってくる仕事はコンピューター監視や自治体での常駐係といった、システム開発とは程遠い業務ばかり。辞めようかと悩んでいたとき、東京でのエンジニア職へ異動となった。これを機に、プログラムなどほとんど書けない状態から必死で勉強し、3年間でプログラマーとして大きく成長を遂げた。
その後九州に戻り、2年間トップ営業マンとして活躍。しかし、当時ASPと呼ばれていたクラウドサービスの可能性を見出し、クラウド事業に携われるベンチャー企業へと転職。行政のイントラネットサービスなどを請け負い、会社の躍進に貢献した。しかし、利益を優先する社長との間にすれ違いが生じ、「もっと多くのお客さんのことを考えて仕事をしたい」と退職した。
転機となったのは、たまたま参加した起業に関するセミナー。会社の立ち上げ方をすべて指導してもらう形で、富山はシステムフォレストを設立した。『フォレスト』は、その頃人吉エリアのまちづくりのキャッチコピーとなっていた『森の郷づくり』から付けたもの。富山は社名に地元への愛を込めたのだ。
「起業当初は、今とは違い委託中心のスタイル。飛び出した立場でありながらも、前職であるNECのグループ会社にも頭を下げて仕事をもらいに行きました。ひとつの仕事がうまくいくと、次も、また次も、と徐々に受注が増え、軌道に乗っていた矢先、起きたのがリーマンショックでした。発注先の企業はすべて注文をストップし、我々の仕事がなくなって2期連続で赤字になりました。このときに痛感したのが、下請けという立場の弱さ。自分たちで顧客を獲得しに行かなければ、会社は続けられないと強く思いました」
そこからはSEO対策を中心に、委託以外の事業も開始。「もっと大きな武器を持ちたい」と考えていた2011年に、東京で行われていたイベントでSalesforceの存在を知った。すでにプログラムとして完成され、自分たちの手を加えなくても利用できる革新性に衝撃を受け、すぐに取り扱いの準備を始めた。「これは企業にとって絶対にプラスになる」。そう確信した富山は、Salesforceのパートナーとなった2012年、福岡にもオフィスを構え、販売体制を整えた。
そんなとき、元請け業者から裏切られる事態が起こった。クラウド事業をスタートさせるにあたり必要不可欠な社員を、派遣先の元請け業者に引き抜かれてしまったのだ。不義理な行為にショックを受けた富山は、下請け・委託での仕事は金輪際引き受けないと決断。クラウドサービス1本で歩んでいく決意を新たにした。
委託案件が急になくなれば収益もゼロになってしまう危機感から、必死で営業活動に臨んだ。1ヶ月ほどで受注はとれ始めたが、売上金はまだ入金されない状況。前入金を頼むことも何度かあった。2年目を迎えると、ようやく売上も安定し、ギリギリの状態から脱却することができた。このとき、富山が抱いたのは、ともに危機的状況を乗り越えてくれた社員への感謝の想いだ。
「裏切られたときは怒りも悔しさも味わいました。でも会社をたたむ訳にはいかないし、社員を食べさせていかなければいけない。本当はもっと論理的に動くやり方もあったかもしれないけど、感情で動いた結果が今のシステムフォレストにつながっていると信じています。あんな強烈な体験がなければ、思い切った業態転換もできませんでした。私の決断についてきてくれて、クラウドのことを一生懸命勉強してくれた社員にも感謝しています」
2015年、富山はIoT事業も本格的に着手。東京でIoT事業を展開する株式会社ウフルを親会社として提携し、AIやビッグデータと組み合わせたIoTサービスをスケールアップさせていく考えだ。「人材不足や後継者問題が叫ばれる第一次産業へ導入し、現場で働く人たちの手間やトラブルを減少させたい」と富山は語る。
2018年はシステムフォレストにとって追い風となる年だった。カスタマーサクセスの精神が評価され、船井財団が選出するグレートカンパニーアワード特別賞を受賞。また熊本県から、年間10億円の付加価値額を生み出すリーディングカンパニーに最も近い会社として「リーディング育成企業」に選出された。今後、会社としての注目度はますます上がっていくことだろう。
「県からの支援の手を借りて製品開発などをしながら、IoTをグッと伸ばしていきたい。これからの社会においては、今まで以上にクラウドを使った技術が必要になるはずです。企業が困っている課題を見つけ出して、我々の手で解決させていきたいですね」
初めてピッチイベントでお会いした際には、その語り口からスマートでクールな印象を受けた富山さんですが、幾つもの困難を乗り越えてきたストーリーをお聴きして、燃え盛る反骨精神を以て発動される、驚く様な思い切りの良さが強さの秘密だと気付かされました。きっとこれからも、圧倒的な行動量で時代の激流をも味方につけ、新しいシステムフォレストを切り拓いていくことでしょう。
1970年、熊本県生まれ。1993年、福岡大学卒業。熊本地場のSierにてシステムエンジニアとして主に自治体向けシステム開発に従事。その後、某大手の関連会社へ出向し、官公庁向けのサービス開発を担当。3年ほど東京ライフを満喫する。2004年有限会社システムフォレストを設立、代表取締役に就任。クラウドサービス専業会社として急成長し地方創生モデルの一例となる。クラウドを活用した企業の業務改善、生産性向上、営業の仕組みづくりなどのコンサルティングサービスを得意とする。
インタビュー・編集:垣畑光哉、堤真友子/撮影:木下将
「楽しく働く」をモットーに最速で支店長へ。直感を信じ、女性のキャリアモデルを体現。
「人」「食」「社会貢献」を起点にビジネス総合力を身に付け、即戦力として活躍
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