
一人ではできないことを、チームで実現させるスイミー経営
テレワークの推進をメインに
8つの組織で活躍
どんな立場の人も才能を活かし
それぞれの形で活躍できるように
社会の在り方を変えていく
株式会社パソナ
営業統括本部 / リンクワークスタイル推進統括
湯田 健一郎 / Kenichiro Yuda
8つの顔を持つ男。そう称されるのは、株式会社パソナで営業統括本部シニアマネージャーを務める湯田健一郎だ。
あるときは厚生労働省の働き方に関する検討会委員。あるときは経済産業省の政策委員。そしてあるときはクラウドソーシング協会の事務局長。湯田は8社の法人に所属し、パラレルワークを実践している。
中でも現在メインに取り組んでいるのが、パソナで実施している働き方改革の一環である「テレワークの推進」だ。場所や時間にとらわれず自由かつ多様に働くことができるテレワークの拡大は、フリーランスや在宅勤務を望む個人の支援になると同時に、新規事業などを検討するベンチャー企業にとってもメリットは大きい。フルタイムの社員を雇える余裕がない企業であっても、ビジネス立ち上げの人手が足りない時期に、他の企業や業務に従事しているスキル人材の手を借りることを可能にするのだ。
経営者である父親からの誘いを機に月に一度九州へ帰省し、経営企画の立場から実家の事業にも携わっている湯田。「これができるのも、テレワークがあるからこそ」という言葉通り、九州にいながら東京の仕事をキャッチアップすることもあればその逆もある。いくつもの肩書きを兼務する湯田自身が、誰よりもテレワークの効果を実感している。
湯田が正社員として籍を置くパソナは、「誰もがそれぞれのライフスタイルにあわせた働き方で、豊かな人生設計を描ける社会を創ること」を目指し、人材ビジネスを展開してきた会社。社員に対しても一人ひとりが「ソーシャルアクティビスト」として、高い志と使命感、ベンチャー精神をもって果敢に挑戦してほしいと考えている。実際に、音楽家やアスリートを目指す方向けに、公演や試合、練習などを優先しながらパソナで働ける「ミュージックメイト社員」「スポーツメイト社員」といった制度も存在する。今後AIなどの技術開発が進むにつれて、スキルシェアの傾向が高まり、さらに柔軟な働き方を推し進めていくだろう。湯田のようなパラレルワークを応援するカルチャーが根付いている環境だ。
「8つも掛け持ちをしていると周りの人から言われるのが、『疲れないの?』とか『大変だね』とか『分身してる?』とか(笑)。よくワークライフバランスという言葉が使われますが、僕の場合はワーク・ライフ・インテグレーションだと思っています。仕事イコール趣味。趣味に没頭していれば疲れないのと同じで、興味ある仕事に没頭しているので疲れは感じません。大変ではありますが、『大きく変わる』ことは体感しています。多くの刺激、変化、チャンスをもらっていますから」
イギリスの寄宿学校をモデルとした中高一貫校の一期生として学生時代を過ごした湯田。男女共学の全寮制で、クラスは一学年に一つ。文科省の研究開発学校として開学し、一般的な教科だけでなく、自分たちで編んだ草鞋で遠足にでかけたり、餅を手作りして食べたりと、少し特殊な学校生活だったという。
新しいことや珍しいことに取り組む楽しさを知った湯田は、立命館が大分県に新設する大学への進学を考えていた。学生の半数が外国籍の人たちで占めるため、 「新しい価値観に出会える」とワクワクした気持ちで待ち望んでいたが、工事などの都合で開学が遅れたこともあり、最終的には京都にある立命館の本学に入学した。
大学時代には50個以上のアルバイトを経験。これは、早くに祖父を亡くした湯田の父親が、家族を養うためにいろんな仕事に従事していたことも影響していると話す。
「父は、農業や販売業、土木建設業、タクシー運転手を経て、30歳で起業。以来、『自分の人生オリンピックだ』と表し、4年に1度は違う業態を起業し続けて現在70余歳…アグレッシブに働く姿を幼い頃から見ていたので、たくさんアルバイトをすることも、今のようなパラレル的な働き方も苦に感じないのかもしれません。現在、僕も経営に携わっている実家の事業のひとつに400名の宴席も可能なバンケット事業がありますが、僕が大学時代にしていたウエディングのアルバイトの経験が巡り巡って家業の役に立っていて、不思議で面白いなと思います。今となってはビジネスの話も多くしますが、実は大人になるまでは父親とは挨拶を交わす程度で面と向かってじっくり話すことはないような仲でした。薩摩の家柄というか、絶対的存在で話しかけることもなくて。でも30歳を越えたあたりから、父の生き方や決断力に共感を覚えて、リスペクトする存在になっていったんです」
就職活動では金融ゼミの所属だったこともあり、「社会の在り方を変えるために、企業の資本となるお金にまつわる仕事に就く」と金融業界を志望。しかし、出会いは突然訪れた。大学で実施される銀行の会社説明会が始まる時間まで、空いている講義室で休憩をとろうとした湯田。するとその講義室で別の企業の説明会が始まった。それがパソナだった。
「経営資源は『ヒト・モノ・カネ』と言われますが、お金についてはフレームが明確です。対して人は割と科学されていない。それを科学して組み合わせていけば面白いことが生まれるんじゃないかと可能性を感じて、最終的には人材に携われるパソナを選びました。多くの企業を見ていても、事業の根幹として重要なのは人にシフトしてきていると感じるので、あのときの選択は正しかったですね」
その後一度パソナを離れ、組織文化を学ぶためにカナダやアメリカへ居住し、帰国後、パソナにて新規事業やBPR、Webブランディングを担当。ホールティングス上場に際して、パソナの取締役会の事務局としても奔走し、役員やグループ会社の社長との関わりが増えていった。そんな活動の広がりのなか「湯田に声をかけるとカタチになって返ってくる」という認識が広まっていき、他部署からのプロジェクトインのオファーや社内兼業が増えていった。
「期待値を意識して取り組んでいました。例えば、期日が設定されている業務ではフィードバックをできるだけ早くする。完成度や質はもちろん大事ですが、品質、コスト、スピードの3つの観点で期待値を考えるとすると、初動の反応の速さを意識し、まずはアウトプットを提示することで、依頼される方々の総体期待に応えられるように動いてきたように思います」
社内だけでなく、社外とのアライアンス協議などにも呼ばれるようになり、次第に自分からも興味のある組織に声をかけるようになっていった湯田。パラレルワークというポジションをとる中で心がけているのは、「相手のエネルギー量を感じ取ること」だ。
「僕が話している時に、相手が相槌を打ってくれる。相手が話していることに、僕がリアクションをする。つまりエネルギーの交換が、コミュニケーションを構築していくんですよね。ただ聞いているだけでは、何も生まれません。『あの人に聞いたら、面白い返事が返ってくる』『またこの人と一緒に仕事がしたい』と思ってもらえるようにするには、些細な業務だとしても、相手が投げてきたボールには必ず投げ返す。その心がけが、企業の枠を越えて仕事をいただけていることにつながっているのかなと思っています」
多数の業務を並行して進めている今の状況を、湯田は「とてもバランスのいい状態」と言う。物体で例えると、支点が1つだと傾きやすくなってしまい、2点だと引っ張り合ってしまう。3点、4点、5点と多角形で支えていくと重心が取りやすくなるように、湯田自身もさまざまなジャンルの人たちと接点を増やしていって、バランスのとれたパラレルワークを展開している。
「社会の在り方を変えたい」と入社したパソナの舞台で今、まさに新たな働き方を発信している湯田。20代、30代と走り抜け、40代では「オリジナリティ」を追求して仕事に臨みたいと話す。
「頼まれたことには何でもチャレンジして『バラエティ』に働いていたのが20代。30代はワークスタイルやICT技術のことなど、仕事に専門性をもたせて『スペシャリティ』を意識していました。次の40代では自分だから発想できるという『オリジナリティ』を加え、より価値を与えられるようになりたいです。パソナは多様な立場、多様な考えを持っている人が、夢に向かって行動できる環境がある場所。僕も入社の時に思い描いていた以上に、自分のやりたいことに携われていると感じています」
ご本人が取り上げられている数々のメディアを拝見し、いかにもエネルギッシュなパワーエリートの登場を予想していたのですが、実際にお目にかかった湯田さんは穏やかな笑みをたたえた、どこまでも腰の低い紳士でした。温かなハートがあればこそ、これだけ多くの人から必要とされ、それに応え続けておられるんですね。ずっと話を聴いていたくなる居心地の良さも不思議な魅力です。
鹿児島県霧島市生まれ。宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校を卒業後、立命館大学経営学部へ進学。2001年、株式会社パソナ入社。パソナでICTを活用し、場所を問わず多様な人材の能力を活かす「LINK WORK STYLE」の推進を統括。株式会社パソナグループの投資政策委員会事務局シニアマネージャー、株式会社パソナテックの事業戦略本部マネージャー、一般社団法人クラウドソーシング協会事務局長、家業の支援など、テレワーク&パラレルワーク&二地域居住を実践中。国家戦略特区としてテレワーク推進を展開している東京テレワーク推進センターの責任者や政府の働き方改革推進に関連する検討会委員等も務め、執筆・講演活動など「テレワーク×フリーランス×副業・兼業の推進」に広く従事している。
インタビュー・編集:垣畑光哉、堤真友子/撮影:新見和美
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