
一人ではできないことを、チームで実現させるスイミー経営
現役就職活動生が作る、熱く、リアルで、タイムリーな就活情報サイト「就活の教科書」
岡本 恵典 / Keisuke Okamoto
株式会社Synergy Career
代表取締役
パンデミックの影響を受け、ここ数年、学生たちの就職活動は一変した。企業説明会はオンラインになり、OB訪問はできず、直接話を聞く機会が激減。説明会場で出会った就職活動生同士で、情報交換をすることもなくなってしまった。そんな状況下で就職活動生が頼りにしているのが、就職活動に特化した情報サイトである。
株式会社Synergy Careerが運営する、就活情報サイト「就活の教科書」は、2018年のオープン以来、業界トップ5のアクセス数を叩き出している(2022年3月時点)。同社代表取締役の岡本恵典はこう語る。
「就職活動は情報戦です。しかしWeb上の膨大な情報から、自分に必要なものを選ぶのは非常に難しい。偏った情報に踊らされ、不本意な就職をしてしまう学生は少なくありません。『就活の教科書』は、その名のとおり、就職活動をする人に必要な情報を分かりやすく網羅した教科書的な存在。就職活動の基本的なことから秘策まで、役立つ情報が満載です」
総記事数は約1,600。トップページから気になる記事を読み、さらに興味がある記事へとリンクをたどっていくと、自分に必要な情報をどんどん深掘りできる仕組みになっている。
先の見えない日本の経済状況を反映するかのように、新卒採用は冷え込み、就職活動生は苦戦を強いられている。そんな中で、学生たちはどのようにして就職戦線を勝ち抜いていけばいいのだろうか。
「さまざまな観点があるとは思いますが、就職活動を勝ち抜くためには『今すぐ行動する』ことが重要です。就職活動は受験と同じ。才能も必要ではありますが、ゲーム的要素も大きい。つまり攻略法があるのです。効果的な対策を行えば、それだけ有利になります。いわゆる『語れるエピソード』がない人も、時間があれば作ることだってできるのです」
岡本はまた「まず一度、選考を受けて落ちてみるのも作戦の一つ」と話す。多くの人が受験の模試でD判定やE判定をもらって落ち込んだように、就職の選考を受けて一度落ちることもいい経験になるという。落ちて焦るからこそ、“対策しなければ”と本気になるからだ。
「就職活動の対策として一番勧めたいのは、長期インターンシップに参加することです。実際の仕事の現場に入ってみると、その業種や職種の仕事内容や、その仕事が自分に向いているかの適性が分かります。社会人としてのルールやマナー、心構えも身に付きます」
「就活の教科書」がほかの就活情報サイトと一線を画しているのは、インターンシップの学生(インターン生)が記事を執筆している点にある。ほかの就活情報サイトでは、就職活動経験のある社会人が記事を執筆しているケースが多く、なかには就職活動をしたことのないライターがインターネットで調べた情報を基に作成している場合もある。
Synergy Careerには、岡本以外の社員はいない。サイト運営のほとんどをインターン生が行っている。“現役の就職活動生”が、真に必要な情報を集めたサイトを作っているのだ。
「『就活の教科書』は、現在25名の就職活動中のインターン生が記事を執筆しています。ですから、記事に込められた熱量が違います。リアルタイムな情報をお届けできるのも、現役の学生だからこそ。インターン生には、できるだけ網羅的で客観性の高い記事を書くように伝えています。一部でしか通用しない情報や、書く人によって評価が変わるような情報については、特殊ケースであることを明記し、普遍的な情報とそうでないものを分けるようにしています」
毎年約50万人が新卒として就職活動を行う中、『就活の教科書』が月350万のPVを獲得していることからも、その人気がうかがえる。
質の高い情報を提供し続けるため、岡本はインターン生が成長できる環境を作ることにこだわっている。例えば、インターン生のマネジメントもインターン生に任せているという。自ら目標や課題を立て、取り組んでいき、そのうえで評価、改善するところは岡本がフィードバックをして導いていく。
「弊社のインターン生は、就職活動の進捗が非常にいいです。リクルートやアクセンチュアといった大手人気企業からベンチャーまで、さまざまな企業から内定をもらっています。特にWeb関係や広告代理店への就職に強い印象です。彼らは弊社での活動を通して、組織で成果を出すことが自分にとってプラスになると理解できているし、私はそのような環境作りにこだわっています」
「就活の教科書」は、2021年に日本コンシューマーリサーチが実施した調査において、就活情報サイト部門で「支持率 No.1・情報充実度 No.1・友人にすすめたい No.1」の3冠を受賞した。
就職活動生に人気を博す一方、就職活動生をターゲットにしたサービスを提供している企業や、就職活動生に自社の採用情報を知ってほしい企業からの支持も厚い。面接練習動画作成のクラウドファンディングでは、さまざまな企業から資金が寄せられ、目標の203%を達成した。
「就活サイト、就活支援サービス、ツール、求人サービスなど、おすすめ情報のまとめ記事もたくさんあります。多くの就職活動生からのアクセスが見込めるため、企業側も広告を掲載したがります。また企業様のサービスを実際に使った、体験記事で特集を組むことも可能です。これは若い世代に対し、サービスを強く訴求するチャンスになります。広告費は成果報酬型なので、結果が出ないのに広告費だけがかさむ心配もありません」
起業のきっかけは、自身の就職活動の失敗体験にあるという。
「新卒の仕事は営業から始まる」という情報をうのみにした岡本は、就職活動の際、営業職を志望していた。
「“営業ができない人は仕事ができない”とさえ思い込んでいました。でも、私はもともと人と話すことがあまり得意ではありません。それが面接でも表れていたのでしょう。何十という会社から不採用通知を受けました」
その後、ある会社に採用され、就職。そこで岡本は初めて「新卒の仕事は営業だけではない」という当たり前のことに気付いた。
「ようやく採用してもらった会社でしたが、当然ながら営業成績はふるわず、結局9カ月で辞めてしまいました。その後、母校で、『卒業生に就職活動について話を聞く』というイベントが開催され、私は卒業生として参加しました。そこで、今の就職活動生も一部の偏った情報に翻弄されていること、情報が多すぎて、どれを活用すればいいのか分からなくなっていることを知りました。私は、教科書のように基準となる情報をまとめたものがあれば、就職活動に迷う学生が減るのではないか、とひらめきました」
会社を辞めてフリーの状態だった岡本は、就職活動のためのWebサイトを作ることを決意。2018年、「就活の教科書」の前身となるWebサイト「リア就」を個人で制作、その後、2020年に法人化した。しかし起業後のサイト運営は、順風満帆とはいかなかった。特に大変だったのは資金繰りだ。
「コンテンツの量と質が強みなので、そこを強化すべく、とにかく採用に力を入れていました。多いときは30名くらいのインターン生やアルバイトがいました。彼らに支払う給与は毎月合計200~300万円。それを捻出するのが本当に大変でした」
就職活動関連サイトには、繁忙期と閑散期がある。アクセスは3月に最も集中し、その後、徐々に減っていく。
「『就活の教科書』は、企業の広告によって収益を得ています。広告収入は完全成果報酬型のため、時期によって収益に偏りがあります。繁忙期に1年分の利益を回収する算段をつけていたのですが、起業当初はそれがうまくいかず、自分の貯金を切り崩して、次の繁忙期までなんとかしのぐという状態でした。別のサイトを売却し、子どものための貯金に手をつけたこともあります。とはいえ、確実にアクセスは増え続けていたので、ひたすら耐えました。資金が尽きるのが先か、運営が軌道に乗るのが先か、ヒヤヒヤしていました」
この危機をどうにか乗り越え、その後「就活の教科書」のアクセス数は加速度的に増え続け、一気に業界2位の人気サイトへと駆け上がった。
現在、業界1位のサイトを運営しているのは、数百名の社員を抱える上場企業である。「就活の教科書」オープン当初は、PV数で5倍以上の差をあけられていたが、今ではその差が2倍に縮まっている。
「企業規模がこれだけ違うのに、数年でここまで近づくことができたのは、質にこだわって熱量の高い記事をたくさん作り、多くの就職活動生の信頼を得てきた証しだと自負しています。今後ますますお役に立てるよう、学生が情報を得やすい動画をはじめとした、さまざまなメディアにも対応していきたいですね」
Synergy Careerは、登録者1.3万人のYouTubeチャンネルや、フォロワー3.7万人のTikTok、友だち6.5万人の公式LINEでも情報を発信している(フォロワー数などは2022年6月時点)。
「今後は、社会人1年目の方の悩みを解決するサイトや、転職に関する情報サイトなども展開したいと思っています。最終的には、業界1位のサイトを目指し、就活について学ぶなら『就活の教科書』と真っ先に思い浮かべてもらえるような存在になりたいです」
公開日:2022年9月8日
岡本恵典(おかもとけいすけ)
株式会社Synergy Career代表取締役社長。
1991年和歌山県生まれ。大阪府立大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修了。
新卒で東証マザーズ上場企業「株式会社イノベーション」に入社。
独立後、Webサイト「就活の教科書(https://reashu.com/)」を立ち上げ、累計3,500万PVの大規模メディアへと育てる。Webサイトと並行して、YouTubeチャンネル、TikTok、Twitter、LINE公式アカウントなどSNSも運営、総フォロワー数は130,000人を超える。
Yahoo!ニュース、毎日新聞、TBSラジオ、ベンチャー通信などメディア実績多数。著書に『ワークと自分史が効く! 納得の自己分析』がある。
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大阪府大阪市北区梅田2丁目5-13 桜橋第一ビル304号
インタビュー・執筆:稲田和絵/編集:室井佳子
撮影:正畑綾子
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