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ストーリー代表・CEO

日本と台湾の架け橋になる。それが私の使命

代表_アジアンブリッジ

アジアンブリッジ株式会社

代表取締役
阪根 嘉苗 / Kanae Sakane

台湾人として生まれ、1 0歳のときに日本国籍を取得

私の父は台湾で生まれ育った日本国籍を持つ台湾系3世、母は生粋の台湾人。そんな両親から生まれた私は6歳まで、台湾の高雄という街で育ちました。両親は日本料理店を経営しているため毎日忙しく働いており、幼い頃から私は父方の祖父母に育てられました。祖父母は台湾が日本の植民地だった時代に教育を受けた世代ということもあって、日本語が喋れましたし、当時日本が台湾全域の教育制度を整えたり、水田の用水路や鉄道などのインフラを整備してくれたことにとても感謝していました。台湾人であるのに、家では日本語を話すくらい、日本に強い憧れを抱いていました。

あるとき、その憧れが高じて日本に移住することを決意します。そのときに幼い私も、一緒に日本に渡ることになったのです。「大切な孫に、ぜひ日本の教育を受けさせたい」という気持ちがあったようです。私自身は、自分の意思で日本に来たわけではなかったので、「私のアイデンティティーはどこにあるのだろう」という葛藤をずっと心の中に抱き続
けることになりました。10歳のときには日本国籍を取得。祖父母からは「もう日本人なのだから、台湾のことは忘れなさい」と言われましたが、そう簡単な話ではありませんでした。

大学生のとき、自分のルーツを確かめたいと考えた私は、1年ほど台湾に戻り、両親と暮らしました。両親からは「台湾人らしく、台湾人であることに誇りを持って生きていきなさい」と、祖父母とは逆のことを言われました。

私が台湾人として台湾で生を受けたのは紛れもない事実です。お陰で台湾の言葉も文化も、人びとの気質もよく理解できます。一方で、幼い頃に日本に移り住んだ私を育ててくれたのは、日本人の友達であり、学校の先生であり、周りの大人たちです。日本なくして今の私はありません。悩み抜いた末、私は自分の生き方を定めました。「私は、日本と台湾の架け橋になるために生を受けた。そのためにいずれは独立起業しよう」と思ったのです。

6年勤めた会社を辞めて、実際に独立したのは30歳のときです。当時は明確な事業アイデアはありませんでした。とにかく日本の優れた商品を台湾で売りたいと考え、日本の伝統工芸品や職人が手作りしたバッグなどの日用品を何十個もスーツケースに詰め込み、2週間に1回くらいの頻度で、日本と台湾を往復していました。

ほどなく、台湾でテレビショッピングが急成長していることに目をつけました。さっそく営業攻勢をかけてみると、いつもユニークな商品を持ってくる私にテレビ局の人たちが関心を持ってくれるようになり、取引を始めることができました。私の役割は日本のメーカーと提携し、その商品を台湾のテレビ局に売り込むこと。商談が成立すれば、私がメーカーからキックバックを受け取れる仕組みです。

「これでようやく日本と台湾を結ぶビジネスに携わることができる」と思った矢先のことです。テレビ局から、大量購入を条件に価格を半額にするよう要求されたのです。しかも、要求が通らなければ、今後の取引はできないとまで言われました。日本の商品がどんなに品質が良くても、台湾の人たちには高すぎる価格だったのです。

「わかりました。任せてください」と安請け合いをした私は日本に戻って、職人さんたちにそのまま伝えました。そして、落胆した職人さんからこう告げられたのです。

「阪根さん、あなたにはがっかりしました。僕らはあなたが日本の商品の良さを台湾に伝えるためのビジネスをしているのだと思っていました。それなのに、僕らの商品を買い叩くとは……。わかりました。もう終わりにしましょう」

自分のやりたかったことは、こんなことだったのだろうか。私は自問自答しました。台湾の物価は日本の約2分の1です。価格差が激しい中、私が卸売業者として利益を得る事業モデルでは、どうしても日本企業に無理を強いることになります。問題は、卸という業態にあったのかもしれません。「もうこれ以上はできない」私は卸売業をやめることにしました。

日本人の最大の武器はおもてなしの精神

日本と台湾の架け橋になるには、どうすればよいか……暗中模索する中で、新たに見つけたスタイルは、台湾への進出を考えている日本企業との協業モデルでした。

例えば、現在の協業先に通販支援会社があります。同社は、化粧品や健康食品の通販会社から依頼を受けて、新規顧客やリピート顧客を増やすための広告サービスを提供しています。同社が台湾でもビジネスを展開することになったのですが、当然現地の事情に詳しいわけではありません。そこで、台湾に精通した社員がいて、台湾での土地勘が利く弊社と協業して現地でのビジネスを進めていくことになったのです。

先方の執行役員にも台湾オフィスに常駐してもらい、両社が共同で一つの事業部を設置します。台湾進出にあたってかかる経費も折半、利益も両社が折半します。当面は1年を目処に事業化に取り組み、1年後に継続・撤退を判断します。継続の場合は、その時点での役割に応じた出資比率により、合弁会社を設立するというスキームです。

私たちは、台湾でテレマーケティングによる通販事業を始めるために、現地のコールセンターとの提携から、受注・決済・梱包・配送といったサプライチェーンの構築に、協業先の企業と二人三脚でゼロから取り組みました。この仕組み作りがやっぱり大変でしたね。

例えば、日本のコールセンターでは、オペレーターとお客様との電話のやりとりをサービスの分析・改善のために録音しておくことも、お客様に電話をかけた件数と受注できた件数を記録しておくことも当たり前ですよね。ところが台湾では、「何でそんなことまで?」という感覚なんです。そこで私たちが台湾企業に、日本企業がなぜそこまで細かいことにこだわるのか、その背景から説明し、どうすれば日本側の要望に応えられるか、一緒に考えていきます。これは日本と台湾両方の商慣習を理解している私たちだからこそできることです。

日本のきめ細かなサービスが、台湾の人を感動させることも少なくありません。例えば、日本の化粧品通販会社は新規のお客様に対して、購入1ヵ月後くらいに「商品はお肌に合いましたか?」といったフォローの電話をかけますよね。また、お客様一人ひとりに感謝の気持ちを込めた手書きの手紙を送ったりします。これが台湾の消費者には信じられないことらしいのです。わざわざお客様相談窓口に「この手紙を書いたのは誰ですか? お礼を言いたいです」と電話をかけてくれるほどです。同様にコールセンターの人たちにも、「日本のサービスは何てレベルが高いんだ」と、驚きをもって受け止められています。

私は日本人最大の武器は、おもてなしの精神だと思っています。滝川クリステルさんによる東京五輪招致のプレゼンテーションで流行語のように取り沙汰されていますが、それは古くから、日本人の美徳であり、強みなのです。日本はモノ作り大国と言われますが、残念ながらモノ作りはすぐに模倣されてしまう。けれども、相手の立場に立った提案やアフターフォローといったサービスの質に関して、世界の人たちに感動を与えることができるくらい、圧倒しています。だから私は、日本人はおもてなしの精神を絶対に忘れてはいけないと思います。

本気にならないと、成功は手に入れられない

現在、上述の通販支援会社以外にも、イベント写真撮影とオンライン写真販売を生業にしている会社と、台湾で一緒に事業を進めています。台湾の人たちは写真が大好きなので、この事業は現地でも順調に伸びてきています。

お陰様で今では、台湾進出を考えている日本企業からたくさんの問い合わせが来るようになりました。残念ながら、ジョイントをお断りすることのほうが多いくらいなのですが、それは私たちもリスクを負いながら、真剣に取り組む覚悟で臨んでおり、事業モデルが台湾のマーケットに合うかどうかを精査せざるを得ないからです。

けれども、何よりも大切なのは、日本企業の本気度です。私たちは必ずパートナーに対して、台湾に常駐するスタッフを最低1人は出してもらうようにお願いしています。なぜなら企業が本気にならないと、文化も商慣習も異なる国で成功を収めるのは困難だからです。本気になって取り組めば、日本企業にとっても事業が収益化し、なおかつ台湾の人たちにも、利便性や豊かさを提供できる商品やサービスが、日本にはまだたくさんあります。

私は日本と台湾がビジネスをすることで、どちらの国の人たちにもハッピーになってほしい。その橋渡しをするのが、私の使命だと思っています。

リスナーの目線

台湾生まれの日本育ちで、日本語・中国語・台湾語を自在に操るトリリンガル。日本企業の強みを台湾マーケットヘ巧みに取り入れる目利き。事業の成否・進退についてドラスティックに意思決定する決断力。阪根社長はその細腕からは想像もできないバイタリティーと、女性ならではの細やかさを併せ持つ、まさにアブローダーズ的な女性経営者でした。

Profile

1979年台湾高雄市生まれ。
小学生のときに日本に留学。台湾で会社経営する両親の影響により、幼い頃から自らも経営者を志す。早稲田大学大学院卒業後、多くの経営者に出会え、かつ営業の経験を積みたいという思いから、リクルートエージェントに入社。新規開拓営業を得意とし、年間100社以上の新規企業を開拓。その後、幼い頃からの夢であった台湾と日本の架け橋となるべく、2010年にアジアンブリッジ株式会社を設立。
現在は化粧品や健康食品、ウェブ事業のローカライズを中心に、これまでのべ200社以上の進出支援を行う

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