
一人ではできないことを、チームで実現させるスイミー経営
株式会社イクリエ
代表取締役
濵島 広平 / Kohei Hamajima
人気ゲームのコンテンツプロモーションを担う株式会社イクリエ。CMで流れるゲームのプロモーションムービーなどの映像制作、キャラクターのフィギュア原型制作、グッズの企画、イラスト制作の4事業を主軸に展開している。取引先は大手ゲームメーカーをはじめ20社以上、年間の制作数は100件を超え、業界内外で高い評価を得ている。
2019年6月、代表取締役の濵島広平は、イクリエの未来を見据え、新たな企業理念を掲げた。社員への発表に当たっては、秋葉原のコンセプト会議室「アイデアの城」にて「理念開示会」という形で開催。約半年間熟考してきた、企業理念と想いを自身の言葉で伝え、楽しみながら聞いてもらいたいと考えたからだ。普段とは異なる特別な雰囲気に包まれる中、濵島は一堂に会した全社員にこう語りかけた。
「イクリエの新たな企業理念は『想造力で身近な人を笑顔にする』。『想造力』とは、イマジネーションの『想像』とクリエイティビティの『創造』を組み合わせた私の造語です。どちらもクリエイターにとって重要かつ大切にしていくべきものであり、この2つの力を最大限に発揮して、身近な人を笑顔にできる仕事を皆でやっていきたい」
この新たな企業理念策定のきっかけは、2018年12月にさかのぼる。経営を学ぶ過程で出会った株式会社unnamedservice (アンネームドサービス)社長で企業コンサルタントの三輪典行氏から投げかけられた一言が、濵島の心を大きく動かした。
仕事におけるあなたの使命は何ですか?――
企業理念はそれまでにもあったが、濵島自身さほど意識していなかった。三輪氏からの問いに濵島は内省し、あらためて会社の存在意義について考えを巡らせた。その中で、自分は創業以来、経営とマネジメントに注力するあまり、社員に目指すべき方向を示せていなかったことに気が付いた。
「私のやりがいは、今のクリエイターたちが活躍できる場をつくること。会社として大事にしたいのは、クライアントに喜んでもらうこと、クオリティーの高い制作物を提供すること。私は創業当時からずっと変わらないこれらの想いを持ち続けていたのに、それを社員に伝えきれていなかったんです」
どうすれば伝わるのか。頭を悩ませていた濵島に、三輪氏はさらに指摘した。「今までの企業理念では、想いと言葉に齟齬(そご)がある。現在のイクリエにしっくりこない」。同じように感じていた濵島は、社員と想いを共有し、進むべき道を明確にしようと、企業理念の再構築を決意した。そして約半年後、新たな企業理念「想造力で身近な人を笑顔にする」を誕生させた。
この理念の根底には、濵島のクリエイターとしての原体験があるという。20代の頃、3Dデザイナーとして業界に飛び込んだものの、なかなか評価を得られずにいたとき、たまたま携わったゲーム関連の映像の仕事で、濵島が制作したセミの3Dモデルが有名雑誌に掲載された。
「実家の両親は非常に喜び、雑誌の切り抜きを額縁に入れて飾っていました。それまで有名タイトルの仕事をしたことがなく、自信を持てなかったのですが、両親や友人の笑顔を見たときに、大変だったけどやってよかったと思えました。このとき家族や友達、恋人など、大切な人を喜ばせたいという思いで取り組んだものは必ずいい成果につながると実感したんです」
だからこそ濵島は、社員にも自分の身近な人が笑顔になれるような仕事をたくさんしてほしいと考えている。それが結果としてクライアントの笑顔、喜びにつながるからだ。
理念開示会から約2年が経過した今、企業理念は仕事上の判断基準の一つとして浸透しつつあるという。この理念が社員一丸となって次のステージへ進むための揺るぎない軸となることを、濵島は確信している。
公開日:2021/06/24
インタビュー:垣畑光哉/執筆:高橋奈巳/編集:室井佳子
撮影:後藤敦司
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