『JINS SCREEN』や『JINS 花粉CUT』など
業界の常識を覆す発想で
「機能性メガネ」の分野を確立
「挑戦」と「革新」を続け
まだ見ぬ世界を創造する
株式会社ジンズ
代表取締役CEO
田中 仁 / Hitoshi Tanaka
ビジネスはクリエイティビティ。まだ見ぬ世界の創造こそがおもしろい
競合ひしめくメガネ業界において国内トップのシェアを誇り、2018年の年間販売本数は604万本を超え、増収増益を続けている「メガネ業界の雄」。それが、代表取締役CEOの田中仁(ひとし)率いる株式会社ジンズ(JINS)。数々の競合を抑え、ジンズが支持されている理由を田中はこう語る。
「メガネの既存概念を大切にしながら、メガネの新たな価値を創造する。メガネを通じて新たなライフスタイルを生み出し、製品やサービスを通じて提供する。私たちがそんなチャレンジ精神をずっと持ち続けていることに、多くのお客様が共感してくださっているのではないかと思います」
現在、ジンズの主力製品となっているのは、メガネの新しいスタンダードを築いたプロダクトばかりだ。例えば、軽量メガネの『Airframe』。医療用素材を用いることで、従来の「重い・窮屈」といったメガネのマイナスポイントを解消。軽いかけ心地とオシャレなデザインで、「軽量メガネ」という新しい分野を確立した。また、PCやスマートフォンを使用する人に向け、ブルーライトから眼を守る『JINS SCREEN』(旧・JINS PC)を開発。ブルーライトによる眼の負担を感じていた多くのユーザーから支持され、ジンズの代名詞的製品として広く知られるようになった。他にも、眼から入る花粉を最大98%カットする『JINS 花粉CUT』、眼の周りを保湿する『JINS MOISTURE』など、視力に問題がない人でも、メガネをかけることで、外的環境から眼を保護できるラインナップだ。
ジンズの挑戦はこれだけにとどまらない。現在も学術機関やパートナー企業、専門医と連携し、さまざまな研究を行いながら、メガネの可能性を追求している。
近年、田中が「社会的意義が大きい」と考え、新たに発売したのがバイオレットライト透過レンズ『JINS VIOLET+(プラス)』だ。
太陽光に含まれるバイオレットライトは子どもの目にとって必要な光であると言われており、「JINS VIOLET+」はバイオレットライトを選択的に透過することができる。
一方で、AIやウエアラブルデバイスといった最新のIT技術を用いたサービスにも積極的に取り組む。AIを用いた『JINS BRAIN』は、メガネの似合い度を判定する世界初のメガネのレコメンドサービス。お客様の「似合うメガネがわからない」といった悩みを解決するため、店頭やオンラインショップで活用されている。ウエアラブルデバイスの『JINS MEME(ジンズ・ミーム)』は、フレームに独自開発のセンサーを搭載し、黒目の動き、瞬きの回数や強弱などを検知。それらを総合的に判断することで、作業中の集中度合や運転中の眠気、歩行バランスなど、ココロとカラダの状態を「可視化」できる。ランニングやドライブ用のアプリケーション、医療分野への展開も見込まれ、世界からも注目を集めている。
田中は、この『JINS MEME』の開発からヒントを得て、2017年、科学的根拠に基づき集中に必要な要素を取り入れた会員制ワークスペース「Think Lab」を開設。利用者からは「自然に集中状態に入ることができる」などと好評。この取り組みは大手企業からも注目され、社内に「Think Lab」を設置する企業も登場している。
「人がやらないことをやるのが、ジンズ。私たちは、新しい体験の創出に価値を見出しているのです。ビジネスは“イマジネーション”と“クリエーション”、この2つの力を駆使しないと、絶対に成功しない。ビジネスを『商い』ではなく、クリエイティブと考えるとすごくおもしろい」

JINSの存在意義と自分が働く理由を問うたとき、答えが見えた
地元・群馬で雑貨を扱う会社を経営していた田中が、メガネ業界へ参入したのは2001年。友人と出かけた韓国旅行で、メガネが1本3千円、しかも短時間で受け取れることに興味を持ったことがきっかけだった。視力が良かった田中は、メガネを愛用する友人が驚いてまとめ買いする姿を見て、そこにビジネスチャンスを見出した。
「当時の日本では、メガネは1本数万円以上の高価格で、手元に届くまで数日かかっていました。これを解消できれば、友人のようによろこぶ人が増える。企画から製造、小売りまで一気通貫して行うことで、高品質のまま、従来よりも低価格でメガネが提供できると考えたのです」
こうして、福岡県に1号店『ジンズ天神店』をオープン。メガネ一式(フレーム・レンズ・ケース)が5000円と8000円のツープライスで購入でき、かつ当日に受け取れるジンズは、瞬く間に人気店となった。すぐに競合店が頻出すると、田中はブランドイメージの確立を進め、内装をおしゃれにし、ファッション誌に広告を出稿。“ファッション性の高いブランド”として認知を拡大した。
郊外にメガネ店とカフェを融合した新業態の「ジンズガーデンスクエア」を開店するなど、順調に成長を遂げ、2006年、大証ヘラクレス(現・JASDAQ)へ上場を果たした。
ところが、上場後、田中は危機的状況に追い込まれる。「独自のビジネスをしたい」と考え、メガネとバッグ等の服飾雑貨を組み合わせて販売する新業態を打ち出すも失敗。さらに、競合店がレンズ変更時にかかる追加料金なしのメガネ販売を開始した。当時、視界のゆがみが少ない非球面レンズや遠近両用等の特殊レンズに追加料金を課していたジンズには、顧客から不満の声が届くようになった。
2008年の決算で赤字に転落、翌年、リーマン・ショックが発生し、メガネ業界も大打撃を受けた。売上、株価ともに低迷が続き、ジンズには事業売却(M&A)の話が持ち込まれるようになった。
打開策が見いだせず、一人悩んでいたあるとき、ユニクロ・柳井社長と面談の機会に恵まれた。その席で田中は、柳井氏から放たれた、ある言葉に大きなショックを受けた。
「志のない会社は継続的に成長できないー」。
「初めてジンズの存在意義や自分が何のために働いているのかを問われた気がしました。経営に志がないまま、『儲かるから』と事業を拡大してきたのではないか。最も大切な『お客様の視点』を失っていたのではないか。どんな製品をつくり、どうすれば利益が上がるのかだけを考えていた私にとって、それは本質的な問題ではなかったのです。目先の製品や価格を変えるだけでは、お客様から本当に必要とされる企業にはなれないと気付いたのです」
柳井氏との面談後、すぐに田中は幹部とじっくり話し合い、「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」という戦略を策定し、その達成に向け、まず課題であったレンズの追加料金をゼロにすべく、社員一丸となって奔走した。

ビジョンは「Magnify Life」。人々の生活を豊かにするブランドでありたい
こうして2009年、それまでの業界の常識を覆す「薄型非球面レンズ追加料金ゼロ」を実現。ここから、ジンズの快進撃が始まった。『Airframe』をはじめ、『JINS MOISTURE』、『JINS SCREEN』など業界の常識を覆す新発想のメガネを次々にリリース。さらに、メガネ業界では難しいとされていたメガネのオンラインショップを業界最速で展開。2010年より海外進出を開始し、ジンズは、メガネ業界におけるリーディングカンパニーに成長を遂げた。
海外進出にあたり、自身とジンズの過去を振り返った田中は、これからのジンズにふさわしいビジョンを再構築した。それが「Magnify Life」だ。「Magnify」とは、「拡大する」という意味。メガネのイノベーションでもっと人々の人生を豊かにしていきたいという想いを込めた。
「事業を行う上で、私たちが大切にしてきたのは、『Progressive(=先進的な)』『Inspiring(=前向きに鼓舞する)』『Honest(=誠実な)』の3つの態度(Attitude)。イノベーションを追求し、メガネをかけることで新しい自分に出会うよろこびを提供する。価格やサービス、エビデンスをもとに製品を開発し、お客様が感じてくださる『ジンズの価値』に真剣に向き合う。「Magnify Life」の実現に向け、計画している企画もたくさんあります。これらを積み重ねて、『JINS』というブランドを皆で創り上げていきたい」
ジンズのメンバーには、「自分の力を少しでもお客様に提供していきたい」という人が多く、店舗と本部の間でも活発な意見が交わされるという。新卒社員は、入社後、全員が店舗スタッフを経験するため、お客様の目線に立った提案や改善要望が、運営や製品企画に反映されることも多いという。また、現場で力をつけた後は、自分の意欲次第で、希望する部署へ異動する道も開かれている。現場で店長やマネジャーとしてマネジメントスキルを磨く人もいれば、商品企画や海外で活躍する人もいる。本部で管理や物流等のスペシャリストを目指すことも可能だ。ジンズらしく「挑戦」、「変革」を楽しめる人はどんどん仲間になってほしいと、田中は考えている。
「私たちは、ずっと『チャレンジ』を続けている。私自身も多くの失敗を経験し、そこから『変わり続けないと生き残れない』ということを学びました。初めてのことに取り組むのは、誰でも怖い。けれども、それを打破しないと、次のステージに進めない。自分にとって苦しいことが起きても、これは自分に与えられたチャンスだと思って、頑張って乗り切ることが大切なのです。『努力は夢中に勝てない』と言った人がいますが、本当にそうだと思います。やはり、好きなこと、やりたいことに夢中になれる人が、一番強い。最近では、ジンズのスタッフも一丸となって、自ら新しいサービスを生み出しています。私はそのチャレンジや変化を後押しする存在でありたい。『Magnify Life』を実現し、まだ見ぬ世界を創造するために、まだまだ立ち止まってはいられません」

リスナーの目線
「想像・創造力を駆使しているときが一番楽しい」と仰る田中CEO。車の中や入浴中など一人になれる空間でアイデアが湧くことが多いそう。青春時代は、意外にも夢中になれるものがなかったそうですが、起業したときに初めてビジネスのおもしろさに目覚めたそうです。大手企業に成長した今もコンサバティブになることなく、常に挑戦を続ける田中CEOからは、まるで少年のような純粋さと真っ直ぐさ、そして「潔さ」が感じられました。
Profile
1963年群馬県生まれ。1988年株式会社ジェイアイエヌ(現:株式会社ジンズ)を設立し、2001年アイウエア事業「JINS」を開始。2013年東京証券取引所第一部に上場。
慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 修士課程修了。
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