
ヒューマンデジタルコンサルタンツ株式会社
代表取締役 CEO
渡辺 英志 / Eiji Watanabe
※令和元年9月2日をもちまして、旧社名 株式会社ウェブスマイルはヒューマンデジタルコンサルタンツ株式会社へ社名変更いたしました。
物心ついた時から、好奇心旺盛な子供でした。何にでも関心を持って、「飛行機はなぜ飛ぶの?」「テレビはどうして映るの?」「自動車はどうして動くの?」というような素朴な疑問を大人たちに投げかけては、困らせていたようです。本当に頭の中は、何に対しても「なぜ?なぜ?」ばかり…。本を読むことが大好きだったので、元々知識欲が強かったせいかもしれませんが、今振り返ってみると、さぞかしやかましい子供でしたね(笑)。
“マーケティング”という言葉に惹かれ、近畿大学の理工学部経営工学科へ進んだのも、経営と工学を合わせて学べば、何かすごいことができるのでは…と考えてのことでした。幼少期の好奇心がルーツとなったのかどうかはわかりませんが、大学生の頃には、様々な疑問の中でも特に「モノを売るためにはどうしたらいいか?」と考えることが習慣となっていました。テレビCMや街の看板を見ては「これは何を伝えたいのだろう? 自分だったらこう伝えるのに」などと、いつも思いを巡らせていました。
当時はクルマが好きだったこともあり、大学を卒業した後は、カー用品最大手の会社へ就職しました。新人の配属先といえば、各地の店舗配属が大半だったところを、人事部へ猛アピールして、念願の情報システム部へ入ることができました。入社案内に書かれていた「ITは頭脳だ」「会社のすべての仕組みはITが支えている」というコピーに、IT時代の到来を強く感じたのが志望動機でした。
情報システム部では、人事から会計、顧客、店舗まで様々なシステムの構築に携わることができました。システムというのは、それぞれの現場業務をよく理解していないと作れないのです。ですから、私はグループ100社、社員数1万人規模の会社の仕組みをひと通り理解する機会を得ることができました。また入社当時から退職まで、労働組合の執行委員を務めたことで、労使の話し合いを通じて経営というものを理解できました。 新卒入社からの会社での8年間は私に得難い経験を積ませてくれましたが、2000年頃になると私は俄然インターネットに注目し始めます。目には見えない武器が登場したようで、これは使い方次第ではすごいことが起こると直感し、2004年に当時モバイルに強かったシステム会社に転職しました。そこでは新規事業で、モバイルCRMという携帯電話を使った顧客コミュニケーションを担当したのですが、残念ながら時期尚早だった取り組みは成就せず、事業を閉じるところまで見届けて再び転職することにしました。
後に上場することになるこの転職先では、社長や経営陣に近いベンチャー企業ならではの環境で仕事をし、新規事業の立ち上げやお金を産みだすことの難しさを直接肌で感じる貴重な経験となりました。
その後、ご縁があって、ある企業の会長から、赤字体質だった同社の立て直しを依頼され、事業部長として入社しました。そして1年後に取締役、2年後にはCOO副社長へと職位を上げ、会社全体を見渡せる立場になり黒字化を達成しました。それまでと違い、会社の経営陣として今までにない権限と責任のある経験をしましたが、ここまで来たら、他人がつくった会社ではなく、これまでの経験を生かした自分の会社をつくろう思い、現在のウェブスマイルを創業することにしたのです。
当社の一番の特徴は、クライアントに対して、ウェブとリアルの両軸でプロモーションを提案できる総合プロデュース力にあると思います。つまり、各種媒体・ウェブ・イベントなどをワンストップで扱い、商品・サービス・事業などをいかに多くの人に知ってもらえるかを、トータルに提案できるということです。最近では、オムニチャネルやO2O(オンライン・ツー・オフライン)といった言葉が何かと取り沙汰されるように、ウェブとリアルの境界線を取り払ったマーケティング手法が主流になりつつあります。しかし、多くの会社ではクライアントからプロモーションの依頼を受けたところで、サイトや広告の制作はできても、商品そのものに対する戦略を考えることはできないというのが現状なのです。
その点、私たちは単なるモノづくりではなく、サービスや事業全体がどう在るべきかを、クライアントと一緒に考えていきます。はじめにニーズの核心をつかむことで、結果的に派生する制作案件すべてを総合的にプロデュースするというのが、私たちのスタイルなのです。
会社の成長過程において大きな転機は、創業2年目にして、ベルサイユ宮殿で作品展を開いたことでも知られる世界的に著名な日本人アーティストが主催するアジア最大のアートフェスティバルに携わったことでした。たった1日のイベントに数億円の予算がつく途方もなく大掛かりな仕事です。当時の会社のマンパワーからすると、これを受ければ他の仕事を全部断るしか道はありませんでした。散々悩んだ末に「これくらいできないなら、自分たちの価値って何? 未来だってないよ」と結論付け、やることにしました。
予算もさることながら、アーティストの世界観を表現するのは至難の業。清掃員の服装からゴミ箱ひとつに至るまで、すべてにおいてイベントの世界観を来場者に感じさせなければなりません。また、そのアーティストは文字でなくイメージで考える人でしたので、一般的な文字や数字のプレゼン資料でなく、アイデアは全部イラストにして見せるようにしました。準備も佳境に入ったころには、スタッフ総出で現場に泊まり込んで同じ生活リズムと価値観で仕事を進めました。
こうして全社一丸となってスタッフ300人を束ねる総合マネジメントの立場で臨んだイベントは大成功。そのアーティストにとても満足してもらえました。このイベント無くして、今の私たちは存在し得なかったと思います。
創業当時はオフィスもなく、公民館や他人のオフィスなどを転々とする“ヤドカリ経営”をしながら、業務内容や資金計画を固めて新宿御苑エリアにオフィスを構えました。実は、私は会社勤めをしている頃から、この界隈の気の合う社長さんたちと「御苑会」という集まりを主催しており、創業の地はここと決めていたのです。あれから3回の移転を経て、現在は丸ノ内線・新宿御苑前駅に直結のビルにオフィスを構えています。ささやかな目標が達せられた感はありますが、それ以上に社員にとって利便性の高い職場になったのが嬉しかったですね。
社名の「スマイル」は、過去の自分に最も足りないもの…という、自戒の念も込めた言葉です。何しろ創業2年目くらいまでは、役員だろうがなんだろうが「こんな提案では刺さらない。俺がクライアントなら破り捨てる」などと厳しく接し、周囲もやりにくかったようです。あるとき役員たちから「実務は私たちがやるので、社長は一歩引いてください」と言われ、それからは経営に専念しています。社員たちにも自覚が生まれ、自立していく流れができて、やはり人は言葉で動かすものではないと実感しました。今となっては社員、関係者のお陰で見失っていた「スマイル」がようやく手に入ったように思います。
2015年―――私たちは東証一部上場のブライダル大手、株式会社エスクリの傘下に入りました。元々エスクリは、式場やドレス、写真などワンストップでの内製化を強みにしていたのですが、プロモーションやイベントについては広告代理店に外注していました。そこへ当社の企画部門とプロモーション部門、各種制作機能が加われば、ブライダルイベントやウェブ戦略などもすべて内製化できます。
彼らと共に業界1位を目指すことで、私たちウェブスマイルも成長できます。グループ入りを決断したのは、こうした相乗効果が明確にイメージできたからです。
今後はブライダル事業から派生する様々な事業も立ち上げます。将来的に新しい事業をつくりたいという人にとっては、エスクリグループの一員として仲間と一緒にチャレンジできる機会がたくさんあることでしょう。
一部上場企業グループという後ろ盾を得た今こそ、企業文化をしっかりと作る時機と見定め、2016年から新卒採用をはじめました。これを第二創業期と位置づけて、今後年間で8割の社員を新卒組にしたいと考えています。
新卒メンバーは私の直轄にして、私自身のキャリアで得た喜びや苦しみなども含めたそのすべての考えを伝えていきます。それを企業文化として根付かせてウェブスマイルをより価値のあるサステイナブルな企業にしたいのです。そのためには攻め続けるしかありません。可能性豊かな若者とともに、変えられるものはすべて変えて、新しいウェブスマイルを育てていきます。
採用のポイントは人間力と元気力、そして「会社を変えてやる!」というくらいの気概があるかどうか。就職を決めることはある意味、人生の岐路に立つことなので苦悩することもあるでしょう。しかし、自分の将来は自分自身で決めるものです。思い通りに生きる自由を手にするには、同時に責任も発生します。そのことをよく理解したうえで、本当に何がやりたいのかを考え抜いて欲しいですね。
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大学時代は就職しないでアメリカでたこ焼きチェーンをつくることを夢見ていたという渡辺さんは天性のマーケッター。サラリーマンから企業再生の経験を経て戧業社長となって、普通はそこで完結してしまいがちですが、あえてM&Aで再び、グループ会社の社長という道を選ぶところに、渡辺さんの本当の強みを感じました。一部上場企業の後ろ盾を得た今、"軍師"としての手腕も楽しみです。
1973年、大阪市生まれ。1996年、近畿大学理工学部経営工学科卒業。卒業後、株式会社オートバックスセブンに入社し、小売業とシステム全般に従事。30歳を過ぎて、ネット業界に興味を持ち、テックファーム株式会社へ転職。当時はケータイCRMという概念がスタートしたばかりではあったが、大手企業をクライアントとし、企業におけるケータイCRMを普及。2007年5月、株式会社ウェブスマイルを設立。ウェブとリアルを融合した総合プロデュース事業を展開し、現在に至る。
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