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ストーリー代表・CEO

ドローン輸送で「ラストワンマイル問題」の解決に挑む

最新ストーリー代表_株式会社BFHD

日本初。テーマパーク内でのドローン輸送に成功!ドローンでSociety5.0の実現に貢献

李 忠烈 / Churetsu Ri
株式会社BFHD(ボーダレスフィールド・ホールディングス)
代表取締役

航空法の改正で可能性が膨らむドローン事業

「ドローン業界では、ドローンの魅力に取り憑かれることを『ドロ沼にはまる』と言います」

そう笑顔を見せるのは、株式会社BFHD(ボーダレスフィールド・ホールディングス)代表取締役の李忠烈だ。同社ではドローンスクールやドローン輸送などの事業を手がける。

空撮や屋内でのレース飛行など、個人の趣味としての要素が強かったドローンだが、その市場は大転換期を迎えている。2020年には1,800億円とされていた市場規模が、2025年には6,000億円まで拡大すると予想されているのだ。主に輸送や建築、農業などの産業領域で需要増が見込まれるためだ。

「現代の人々が、スマートフォンがなければ生活も仕事も成り立たないのと同じように、将来的に、特に輸送の分野ではドローンがなければ生活ができないような時代が来るでしょう。SF映画のように、上空をドローンが飛び交う光景が当たり前になります」

2022年にはドローンについて定めた改正航空法が施行される。これによりドローンの飛行レベルは、都市部などの有人地帯で目視外飛行(ドローンが直接目に見えない状態での自動/自律飛行)を可能とする「レベル4」まで引き上げられる。また、ライセンスの国家資格化や機体登録制など、安全を担保するための法整備が進む。まさにドローン元年だ。

現在、千葉、神奈川、茨城、群馬の4拠点でドローンスクールを運営する同社。スクール生の年齢は20代から60代までと幅広い。趣味でライセンスを取得する人もいれば、ドローンの操縦技術を身につけて、副業や定年後の仕事に役立てたいと考える人もいるという。

日本初。テーマパーク内でのドローン輸送に挑戦

2019年、ドローン事業に参入したBFHD。最初のドローンスクールを千葉県で立ち上げた。もともとはパチンコ事業を営んでいたが娯楽の多様化で市場が縮小し、20年前と比べると遊戯人口は4分の1まで落ち込んだ。衰退するパチンコ産業から軸足を移そうと始めたのが、ドローン事業だった。

当初はスクール運営を柱にしようと考えていたが、2021年1月に転機が訪れた。茨城県にある花と緑のテーマパーク「いばらきフラワーパーク」から、園内のお客様に弁当をドローン輸送できないかと相談を受けた。

いばらきフラワーパークでは、山頂にグランピングエリアが広がっている。ただし食事をする施設は、周遊車で約15分の山のふもとにある。ここで作った食事をドローンで運べば、2分もかからず山頂へ届けられるのだ。成功すれば、日本初のテーマパーク内でのドローン輸送となる。

もともと、運送業界のラストワンマイル問題に関心があった李。

「ネットショッピングの普及で荷物の取扱量は増える一方で、高齢化に伴ってドライバーが不足している。配送センターから個人宅に荷物を届ける最後の一手『ラストワンマイル』が課題になっているのです。これを解決するためドローン輸送をしてはどうか、とかねて構想を抱いていたため、いばらきフラワーパークでのドローン輸送は実績を積むチャンスだと考えました」

すべては安全飛行のために。機体の開発から実証実験までの試行錯誤

ドローンの積載量のことを「ペイロード」という。ペイロードが重ければ重いほど、機体にはパワーが必要だ。一般的にドローン輸送の実証実験で使われる機体のペイロードは約5キロ。BFHDがいばらきフラワーパークで飛ばす機体のペイロードは25キロ。安定して飛ばすには、プロペラや本体にもある程度の大きさがなければならない。一方で、部品を軽量化して機体の負荷を軽減しなければ、機体が不安定になる。

機体の開発には、水戸市でドローン事業を営む仲間と共に取り組んだ。部品の調達から組み立てまで試行錯誤を重ね、機体ができあがるまでに半年近くを要した。

2021年6月、できあがった機体をいばらきフラワーパークに持ち込んで、実証実験が始まった。実際の飛行では弁当を入れる保冷バッグを積載する必要があることから、試しにアルミでできたカーゴを機体に取り付ける。飛ばしてみたところ、カーゴが重すぎて機体が安定しない。今度はカーゴを取り外し、保冷バッグをロープで固定してドローンを飛ばす。

「実証実験は、フラワーパークの休園日である火曜日に行いました。週1回。雨が降ったり、風速が5メートル以上になったりしたらドローンを飛ばすことができないので、実証実験ができない週もありました。限られた時間の中で、『絶対に安全だ』という状態が確認できるまで300回は飛ばしましたね」

実証実験では、いばらきフラワーパークの地形に泣かされたこともあった。一般的にドローンは、GPSの電波を使って飛行させる。BFHDの機体も同じくGPSで飛行するタイプ。山のふもとから山頂エリアまではひと山越えていく必要があったため、途中でどうしても電波が届かなくなる箇所がある。

「これでは安全に飛行できない」。行き詰まった状態を打開したのが、東京オリンピックの開会式だった。

「オリンピックの開会式で行われたドローンショー。そこで使われたのが、RTK(リアルタイム・キネマティック)という電波方式でした。地上に設置した「基準局」から位置情報データを取ることで測位の精度を高める技術です。以前からこの技術について知見はありましたが、オリンピックの開会式を見て、フラワーパークでの安定飛行には『RTKしかない』と思いました」

こうして地形の問題もクリアし、あとはひたすら飛行実験を繰り返した。不具合が生じれば機体を持ち帰って改良し、翌週また実験を行う。雨が降れば実験は翌週に持ち越される。「いつになったら本番の運航ができるのだろうか」。焦る気持ちが募っていった。

「『100匹目の猿現象』という話があります。昔サルたちは、イモを掘ったあと、土がついたまま皮をむいて食べていた。ところがある時、掘ったイモを洗ってから食べる一匹のサルが現れる。しかしイモを洗ってから食べるサルは、実はその一匹だけでなく、ほかの群れにも現れていた。ある一定数を超えると、行動や考え方などが一気に伝播するという現象の例え話です。同じ時代に、同じ行動をする者がほかにも現れる。すべてとは言いませんが、ドローン業界にも起こり得ることだと思います」

李は、「日本で初めてテーマパークでのドローン輸送開始」という実績を他社に譲りたくない気持ちと、「国内初」を焦りすぎて安全性をおろそかにしてはいけないという気持ちの狭間で揺れ動いていた。

依頼者のためにも、早く運航を開始したい。焦る気持ちを抑えながら地道にトライアル・アンド・エラーを繰り返した結果、安全性が確認された機体は2022年2月、初めての正式運航を開始した。

「機体の幅が1.3メートルほどあるので、実際に飛んでいるところを見るとものすごい迫力があります。現地でドローンを飛ばしていると、『生まれて初めて見た!』と大喜びするお客様もいらっしゃいますね。認知度が上がってきているとはいえ、実際にドローンを見たことがない方が大半です。弁当を運んでいない時はバッテリーを抜いて、ドローンと記念撮影ができるようにしています。子ども連れのご家族にはとても喜ばれています」

優秀なドローン人材を育成し、Society5.0の実現に貢献したい

BFHDのドローンスクールは、質の高いレッスンを提供し、高度な操縦技術を持ったドローン人材を育成する。

「ドローンを活用するシーンが増えていく中で、『ドローンを飛ばしてほしい』といった依頼は増加していくでしょう。今後はスクールの卒業生の方に登録していただいて、災害や輸送の現場に派遣することも構想しています。副業や本業としてドローン事業者になる人が、卒業生の中から出てくる可能性は十分あります」

社会課題となっているラストワンマイル問題の解決にも意欲的だ。BFHDでは2021年7月、茨城県にあるパゴタ急便有限会社をM&Aで取得。立川市で運送業を営む知人と協力し、輸送用ドローンを活用したラストワンマイル問題に取り組む体制を構築した。

「輸送は、みなさんの生活を支える重要な社会インフラです。ドローン輸送には今後ますます力を入れていきたいですね」

今後は運送や物流に関する知見を高めて、BtoG領域にも働きかけていくという。

「茨城県では、山間部の人口過疎地に向けて、少量の薬を車で配送している地域があります。この配送を、車に代えてドローンでできないか、行政の方から相談を受けています。また、限界集落に物資を運べないかという話もあります」

茨城県では県庁内にドローン事業を担当する部署を設けており、ドローンへの関心は高い。ほかにも災害が発生した際、ドローンを活用して被害状況を確認するために、災害協定を結ぶ自治体も多い。災害時に有人のヘリコプターを飛ばすより、ドローンの方が機動性が高いためだ。BFHDが運営するDSCドローンスクール千葉では、実際に松戸市と災害協定を結び、災害訓練や災害状況シミュレーションなどを行っていく予定だ。

日本では今、AIやIoT、ロボットなどの技術を活用することで、今までにない新たな価値を生み出す「Society5.0」という、産業革命に匹敵する変革を実現する動きがある。

「例えば、田畑に農薬散布をする場合、農薬が入ったタンクを人が背負って、手動で農薬をまいています。これは非常に労力を要する仕事です。農薬散布にドローンを活用することで、コストも労力も10分の1で済みます。もちろん、人手不足で省人化を進めていかなければならない分野は農業に限りません。今後もドローンを活用することでSociety5.0の実現に貢献していきたいですね」

公開日:2022年9月8日

Profile

1968年生まれ、茨城県水戸市出身。株式会社BFHD(ボーダレスフィールド・ホールディングス) 代表取締役。経営理念は「あらゆるボーダーを超えて、より良い社会を築きあげる」。DSCドローンスクール千葉校長。スカイドロシー代表。

Contact
千葉県松戸市古ヶ崎746-1

Staff

インタビュー・執筆:宮原智子/編集:佐々木久枝
撮影:新見和美

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