
病院を飛び出した理学療法士が鳥取県でつくる「つながり」
人生一度きり。普遍的な価値のある「人と人との出会いづくり」に懸ける
安田 暁史 / Akihito Yasuda
GMOコネクト株式会社
代表取締役社長
数あるビジネスマッチングサービスの中、コミュニティを主軸とした特長を打ち出すGMOコネクト。「『笑顔』『感動』が広がるNo.1ビジネスコミュニティ」をビジョンに掲げ、「ビジネスに価値のあるつながりを提供する」をミッションに事業を展開している。
「ミッションを実現するための具体的なサービスとして、『オンラインミーティング』と、営業管理を支援する『ウェブシステム』を提供しています。オンラインミーティングは、商品やサービスだけでなく、お互いの人柄を知ることができるように企画・運営しています」
「このサービスから、一生のビジネスパートナーなど、人間同士の深く長いつながりを生み出していきたい」。それが代表取締役 安田暁史の願いだ。
ビジネスマッチングのためのミーティングは「コネクトミーティング」と名付けられており、オンラインで毎週開催される。100社前後のベースメンバーに加え、数十社の新規ゲストが参加するという。冒頭の「交流タイム」では、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使い、ランダムで2、3名の部屋に分かれ、特定のテーマを軸に交流する。
「頻繁に開催でき、大勢の方に参加していただけるのは、オンラインだからこそ。お互いの人柄を知ることが大切だと考えているので、交流タイムは少人数に分け、自分の生い立ちや趣味など、パーソナリティが分かるようなテーマで話してもらいます。これをリアルの集まりでやろうとすると、グループに分かれるための場所の確保と移動時間が必要になります。それがZoomなら一瞬でできます。これもオンラインならではのメリットです」
交流タイムの後は、1社30秒間の「プレゼンタイム」、自分のビジネスにとって価値のあるつながりを持つ参加者を具体的に知ることができる「マッチングシステム」と続く。関心を持った相手には1on1に誘うメッセージが送れる機能もある。いきなり「購入します」ではなく、「一度オンラインで話しませんか」ができるようにしていることも同社のサービスの特長だ。
コミュニティには、GMOコネクトが提供するもの以外に、個人が主催するものもある。参加者は複数のコミュニティに参加でき、自身のコミュニティを立ち上げることも可能だ。需要に応じて個別マッチングも行っており、現在のコミュニティの登録者数は約4,000名。日々増加しているという。
GMOコネクトのビジョン・ミッションは、安田の創業の想いであり、事業内容そのものだ。なぜ、この想いを抱き、ビジネスマッチング事業で創業したのか。発端は安田とGMOインターネットグループの出会いにある。
「GMOコネクトを立ち上げる前、私は個人で会社を経営していました。そこでGMOインターネットグループのサービスを参考にしたサービスを始めたんです。それがGMOインターネットグループの方の目にとまり、お声がけをいただきました。その方が『代表の熊谷ときっと話が合うよ』とグループ代表の熊谷正寿氏に引き合わせてくれたんです」
実は、安田は社会人1年目に熊谷代表の著書『一冊の手帳で夢は必ずかなう』 を読み、そこに書かれたことを忠実に実行するほど、熊谷代表に心酔していた。そして実際に熊谷代表と会い、ビジネスや人生に対する考え方に触れ、あらためて感銘を受けたという。2013年にGMOインターネットグループとの共同出資で会社を興し、スマートフォンアプリの企画・開発と音楽・ライブを融合させた事業を手がけた。 その後、2020年の新型コロナウイルスの影響で音楽・ライブ事業に暗雲が立ち込めたことをきっかけに、事業内容をビジネスマッチングにピボットしたのだ。
「前身会社の事業も成功しており、自分の家を建てたり好きな車を買ったり、旅行を楽しんだりしていました。けれど、そういった個人的な楽しみよりも、自分の仲間たちや出会った人たちと一緒にビジネスを作り、それが誰かの役に立つことの方に価値がある。そう感じて、今の道を選びました」
安田がビジネスマッチングを事業に選んだのは、それまでの人生を振り返り、熊谷代表や仲間との出会いが自分の人生を創ってきたとあらためて感じたからだ。インターネットの有無に関わらず、誰かと誰かが出会って仕事が生まれることに変わりはなく、人と人が出会ってつくり出される価値の根本は変わらない。それは、この先ずっと死ぬまで変わらないものだ、という確信が安田の真ん中にある。
「人生1回しかないからこそ、一過性の事業ではなく、普遍的な価値のある事業を主軸に置きたかったんです」
人と人との出会いをつくることをビジネスにしたら一生楽しめそうと思えた、と笑う安田。出会いの中でもビジネスでの出会いを選んだ理由を「いろいろな人が命を懸けてやっていて、そこに強い想いや、その人の人生が反映されている。斬新な商品やサービスに出合う驚きもあるから」 と語る。
「GMOコネクトがなければ出会わなかったであろう2人が出会うことで、世の中に新しい価値ができて経済が良くなり、生活が良くなり、その人の家族も幸せになる。一つの出会いが、どんどん枝分かれして成長していく。それを作ることは本当に価値があるし、働いているメンバーも誇りが持てる。そういった要素をトータルして、この事業を始めることに決めました」
GMOコネクトが提供するビジネスマッチングの軸はコミュニティであるが、創業当初はそうではなく、マッチングの対象者に自分のサービスをアピールすることが目的になっていた。そこからコミュニティに軸足を移した理由は、サービス開始直後に安田が得た気付きにある。
「世の中にサービスがあふれ過ぎている現在、商品を買う理由は、商品そのものの良さもさることながら、それを作っている人や提供している人がどんな人か、商品以外の物語が重視されていると分かったのです」
作り手や売り手の個性や魅力は、ビジネスを発展させる大きなファクター。そう学んだ安田は、人の部分でビジネスマッチングを行う手段を考え、コミュニティづくりにたどり着いた。
「商品を購入する、サービスを導入する、一緒にビジネスを始めるといった行動が起きるためには、感情が動くことが必要です。1回1時間同じ会に出て、5分間仕事の話を聞いただけでは、感情は動かない。ビジネス上の自己紹介だけでは分からない人柄を知るには、何度も時間を共有して、継続的な関係を構築するコミュニティが最適だと考えました」
コミュニティを作っても、ほかのメンバーに関心がなく、全員が自分の商品やサービスを売りたいと思っているだけではうまくいかない。協力し、支え合う関係性になることが重要であり、そういう関係性を生むためのコミュニティが必要だ、と安田は続ける。
「コミュニティの仲間になると、その人の生い立ちや、なぜ今この仕事に携わっているかといったパーソナリティを理解したうえで、その仕事への協力や紹介、信頼が生まれる。今は未熟でも、一生懸命に向上していこうという姿勢の人には、応援の気持ちを込めて買ってあげたいと思うもの。そういうコミュニティをいかに効果的に無駄なく作れるかに挑戦しています」
安田が「無駄」の最たるものとして挙げるのは、対面の「名刺交換会」だ。大勢集まる中で名刺を交換し、数分の立ち話をしても、次につながる可能性は低い。遠路はるばる会場に足を運んだにもかかわらず、成果が得られないこともある。
「GMOコネクトのコミュニティミーティングはオンラインなので、移動時間は不要。誰の紹介か、誰とつながっているのかも分かります。個別に話してみたい相手と直接やり取りができるツールも用意しています。コロナ禍により、オンラインで人とつながることへの抵抗感が薄れてきていますし、オンラインのメリットをフルに活用できる環境になったと考えています」
「『笑顔』『感動』が広がるNo.1ビジネスコミュニティ」というビジョンの下、ビジネスマッチングサービスに取り組むGMOコネクトのメンバーは、2022年10月現在、業務委託・アルバイトを含め約40名いる。
「サービス開始からまだ9カ月ですが、コミュニティに関わるみんなに『笑顔』が生まれています。参加した人から『GMOコネクトのおかげで一生のビジネスパートナーができた』と聞くと、この事業を始めてよかったと心から思います」
ただ、「『感動』はこれから」と安田は言う。
「仕事は得てして孤独なもの。しかしコミュニティに参加することで、一緒に頑張る仲間ができますし、ほかの人のプレゼンを見て学び、成長もできる。自分の真価も分かり、新しい人脈も作れます。続けていくことで、そういうところに感動をしてもらえるようになれたらうれしいですね」
「No.1ビジネスコミュニティ」を掲げるのは、GMOインターネットグループがNo.1を目指すことに強いこだわりを持っているから。お客様に対する価値提供は、No.1でなければ意味がないという考え方だ。
「GMOインターネットグループにジョインする前は、とにかく売上や利益が目的で、一番になりたいと思ったことはありませんでした。No.1になりたいと思ったのは、今の事業が初めてです。No.1を目指すGMOインターネットグループで、自分もNo.1を目指す。そこにチャレンジしています」
ニッチな領域で存在感を放つビジネスコミュニティは国内にも複数あるが、GMOコネクトほど大規模なところは少ないという安田。
「自分たちが提供するサービスをたくさんの人に使ってもらいたいから、日本一で、どこも追いつけないほどの規模を持つビジネスコミュニティに成長します。それがお客様のためでもありますから」
公開日:2022年12月23日
1983年、愛知県名古屋市生まれ、岐阜県岐阜市育ち。東海大学文学部卒業後、株式会社サイバーエージェントのグループ企業、株式会社シーエーモバイル(現株式会社CAM)に入社する。新卒時代にGMOインターネット株式会社創業者兼社長である熊谷正寿氏の著書『20代で始める「夢設計図」-必ず“スピード成功”する5つの原則』を読み、夢設計図を手帳に描く。
IT関連のクリエイティブ・システム開発事業を軸に25歳で個人事業主として独立、27歳で法人化を経て、29歳で熊谷正寿代表と出会う。GMOインターネット株式会社との合弁会社を2013年に設立し、現在「ビジネスマッチング事業」で「笑顔」「感動」を生み出すことをビジョンに掲げるGMOコネクト株式会社を経営中。
Contact
東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー7F
インタビュー・執筆:ひらばやしふさこ/編集:室井佳子
撮影:田中振一
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