
病院を飛び出した理学療法士が鳥取県でつくる「つながり」
コロナによって変わる価値観
人も変わればサービスも変わる
大きな変化を起こす日本
各起業家はどう動いた
主催:WAOJE Tokyo
株式会社 AGRI CARE
代表取締役
伊藤 俊一郎 / Shunichiro Ito
フラー株式会社
代表取締役CEO
渋谷 修太 / Shuta Shibuya
株式会社YOLO JAPAN
代表取締役
加地 太祐 / Daisuke Kazi
2020年9月16日に東京・銀座で開催された「WAOJE Tokyo Summit」。第二部では遠隔医療・地方移住・外国人材活用の3つの新規事業において、コロナで転機を迎えた起業家3名をお迎えし、WAOJE理事を務める株式会社ネオキャリアの西澤様のファシリテートのもと、パネルディスカッションを実施しました。
株式会社アグリケアの伊藤様(遠隔医療)、株式会社YOLO JAPANの加地様(外国人材活用)のお二方は会場にてお話を伺い、地方移住について登壇されたフラー株式会社の渋谷様は、新潟拠点からオンラインでご参加いただきました。
2015年に茨城県・つくば市で創業した株式会社アグリケアは、ログハウスでできた有料老人ホーム“AGRI CARE GARDEN:アグリケアガーデン”を筆頭に、老人ホームや在宅医療事業を行う会社です。
心臓血管外科医として10年ほど大規模病院に勤務していた折に、年々高騰する医療費に影響を受け、短期間で高齢者を退院させる現場を目の当たりにしました。ここで「病院なのにホスピタリティが不足している!」と問題意識を抱き、より多くの高齢者が医療・介護のサービスを受けながら穏やかに暮らせる場を創りたいという思いから、老人ホーム事業や“第三の医療”である在宅医療事業を開始しました。
老人ホームや診療所におけるコロナの影響は、経営的にはあまり受けていません。ですが、利用者様が家族と全く面会できない状況に対してのアプローチや、従業員の体調管理にはより一層気を配っています。
同時に“第四の医療”として、遠隔医療サービスを主事業で展開する株式会社リーバーを2017年にスタートしました。24時間365日スマホで簡単に医師に相談できる、遠隔医療相談アプリ“LEBER(リーバー)”はコロナの影響で盛況を博し、相談件数は10倍に跳ね上がりまして。現在は茨城県内の小中学校を中心に、大阪教育大の付属小学校や筑波大学附属駒場中・高等学校など、幅広い教育機関で導入されています。
実は私が起業した大きなきっかけは、ベトナムのホー・チ・ミンで行われた、2ヶ月間に渡る心臓外科医トレーニングでした。ホー・チ・ミンで感じたのは、現地の人がもつ圧倒的なパワーとエネルギッシュさ。当時はただ圧倒されるばかりでしたが、あの時ホー・チ・ミンで感じたパワーが「いつか医療の枠を越えて、自分にしかできないことを追求したい!」という気概の元になっています。
アグリケアや他の医療法人に比べると、株式会社リーバーの行うアプリ事業はまだ規模が小さいですが、今後も第三・第四の医療であるデリバリーヘルスケア、テレメディスンを普及させ、一人でも多くの人の健康に寄与できたらと思っています。
フラー株式会社は2011年に高専や大学時代の仲間と創業した、モバイルアプリ事業やアプリ制作会社へのデータ提供・コンサル事業を展開する会社です。18歳で起業を決意してから、現在社員数は100名ほどで、そのうち20名が新潟オフィスに在籍しています。
本社・柏オフィスの他に3年前から新潟にオフィスを構えていましたが、コロナを機に「IT×地方がムーブメントになる!」と、地元・新潟へのUターン移住を決意しました。
新潟では県の補助(家賃の半額、人件費20%の補助)が受けられるほか、新潟県庁との会議でもオンライン化が進んでおり、コロナの影響でUターン採用への応募は1.5倍に増加。おまけに新潟オフィスは出社率が95%で離職率がほぼ0%と、ビジネス観点からも新潟移住のメリットを実感しています。
普段の業務はオンラインでほぼ完結できるため、業務に支障はありません。しいて言えば、初回の打ち合わせがオンラインだと、仲が深まりにくいことでしょうか。ただ、新潟は今のところ多くの感染者が出ておらず、コロナ以前と同じような生活を送っている人がほとんどで、新潟に来てから逆に会食の機会が増えていますので、関係性の構築に問題はありませんね。
コロナによるオンライン化で、ライフ・ワークスタイルが大幅に変わる中、SNSでは風景写真の投稿が以前より増えており、自然を求め地方に移住する人も増えているようです。アメリカでもサンフランシスコやシカゴなどから、デンバー(*)に移住する若者が増えているのだとか。
私はもともとアメリカに居たこともあり、またコロナが落ち着いたら海外に目を向けていく予定です。地方移住して思ったのは、海外にも日本の地方特性に近い特徴を持つ都市があるのではないかということ。今後は海外における地方回帰の可能性も視野に入れていきたいと考えています。
(*)アメリカ・コロラド州に位置し、ロッキー山脈の麓にある自然豊かな街。ゴールドラッシュ時に創設された街であり、19世紀の街並みや様々な文化施設を楽しめる。
株式会社YOLO・JAPANは在留・在日外国人向け情報メディアの運営を中心に、子供向けコミュニティ英会話サービス、外国人向け多言語不動産情報サイト「YOLO HOME」の運営など、在留・在日外国人向けサービスを複数展開しています。
もともと株式会社YOLO・JAPANは、東京・大阪・フィリピンの3拠点にオフィスを構え、英会話スクールを主事業として展開していました。しかし、5年前にロードバイクで交通事故に遭い、5日間意識不明、顔面68針縫う大怪我を負うことに。生死を彷徨う中で心に抱いたのは「このまま死んだら英会話スクールのおっさんで終わる。社会のために事業を行いたい」という思いでした。
大事故から生還を果たすと、日本に住む外国人向け採用情報メディア“YOLO JAPAN”の開設など、国内に住む外国人材活用事業を推進。現在226ヶ国の外国人ユーザー約17万人に利用されているメディアに成長しました。
しかし、コロナを機にほとんどの事業で壊滅的に仕事が減少。飲食・ホテル業を中心に求人掲載は減少し、英会話の家庭教師派遣も依頼が100%無くなりました。
そこで活路を見出したのが、外国人向け入社時研修を担う“YOLO アカデミア”。企業が採用した在留外国人に対して、ビジネスマナーや日本語、業種に応じた基本的知識の研修を1日5時間×20日間行うサービスです。採用メディア“YOLO JAPAN”との組み合わせにより、採用から研修までワンストップで行える相乗効果があります。今後は一般企業だけでなく、介護職といった専門的な業種にも範囲を広げていく予定です。
他にも“YOLOイングリッシュキャンプ”と呼ばれる、中学校及び高等学校の生徒向けに国内で英語学習と異文化交流が同時に体験できる国内留学事業をスタート。コロナで留学したくてもできない状況の中、少人数チームで実施される英語学習と外国人との異文化交流を通して、留学と同様の効果が見込めると人気を集めています。
また滞在している外国人になんとか仕事を回そうと、ビザ等の規制で入国したばかりで、仕事ができない外国人でも行えるデリバリー事業や、外国人英会話講師をコロナ除菌サービスへ派遣するなど、今必要とされるサービスを見出しました。
コロナの影響で大打撃を受け大幅な事業の改革を強いられましたが、アイディアを出し合い、なんとか新しい道を開拓。おかげでYOLO アカデミアを始め、さまざまな事業をスタートさせ、株式会社YOLO JAPANの新たな歴史の幕開けが叶いました。今後はより地方に向けて、在留・在日外国人のネットワークを拡大させていく予定です。
執筆:大井 麻規子/編集:若松 現
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