
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
ワールドワイドなフレンチテック
そのビジョンや携わる人々の姿とは
主催:LISTENx KGF online
Sineora
CEO
今井 公子 / Kimiko Imai
Meero
日本法人代表
福田 強史 / Tsuyoshi Fukuda
2020年10月16日、LISTENと学生フォーラム(略称:KGF)のコラボレーション、LISTEN x KGF onlineによるオンラインイベントが開催されました。17回目となった今回は、フランスでクロスボーダーなオープンイノベーション開発を行う今井氏と、フランス企業の日本法人代表を務め、グローバルなIT企業に関わり続けてきた福田氏をお呼びし、フレンチテックの実情を伺いました。
今井氏:
生まれは上海なのですが、その後日本国籍に帰化しました。日本の大学を出て10年前にダッソーシステムズに入社するのを契機に、フランスに来ました。そのダッソーシステムは去年退職しまして、Sineoraという会社を設立しました。
今井氏:
企業名のSineoraというのはラテン語でoraが「境界」、そこにsineという接頭辞をつけて「ボーダーレス」という意味合いを持った言葉になっています。このボーダーレスで言及している境界は、国と国の境界だけでなく、大企業と中小企業間の技術的な境界も含んでおり、二つの意味合いでクロスボーダーなオープンイノベーション開発を目指しています。
起業を志した理由の一つは、ダッソーシステムズで大企業の限界を感じたからです。ダッソーシステムズのトップの方はカリスマ性が非常に強く、11万5千人の経営判断を一人で行うほどでした。役員に入ったら確かに会社内である程度のインパクトを持てるかもしれませんが、その社長の下ではやはり自分のやりたいことの実現にはつながらないと思いまして。
そしてもう一つとしては、会社戦略に関わる中でスタートアップの人と触れ合う機会があり、そのスピード感を感じたからです。彼らは大企業では判断を待つようなことを、すぐに実行していました。自分もスタートアップとして実行していけば、
そうして立ちあげたSineoraですが、スタートアップのヘッドハンターとでも言えるようなことを行っています。近年の会社の人材関係に関しては、プラットフォームよりヘッドハンターを利用することが多く、それと同様に大企業がイノベーションを起こしたいときのスタートアップヘッドハンターとして動いています。
本当にいいスタートアップはすでに顧客を持っている場合が多く、大企業の開くコンペになかなか参加できず、大企業が見つけることが難しいんですね。また、インターネット上の情報だけでは、そのスタートアップの商品が実際に売れているのか、顧客が実際にいるのかがわからないんです。
また、大企業がどのようなスタートアップを探しているのか明確化していない場合がおおいので、そこを明確化させたうえでWin-Winな関係を構築しています。多種多様なデータベースを使用してパイプラインを広く張り巡らし、クロスボーダーでそのような関係となれるペアを作っています。
サービスを具体的に説明しますと、例えば、Uber Eatsではレストランやそのメニューの写真が大量に必要になってきます。ここで、企業側は撮影する写真のイメージやトーンに、一貫性を持たせなければなりません。そして、メニュー提供や、撮影時の日程調整なんかも手間がかかるんですね。
また、一般的にフォトグラファー側は、まず仕事を取るのが大変であると。さらに、職人気質の方がおおいせいか、編集工程に撮影工程の4倍ほどの時間がかかるんですよ。
これらマッチングや日程調整、写真の一貫性といった問題を解決するのがMeeroです。写真の一貫性に関しましては、AIによる自動加工を使って、均一な質感にできるようにしています。ディマンド側とサプライ側、双方の手間を減らして、自分の職業に専念していただけるような仕組みを作っているんですね。
一般的な写真業務は、七五三や成人式といった、一人のクライアント対して、少数の写真を提供するといったのが多いと思われます。ですが、Meeroでは先ほどUber Eatsの例を挙げたように、クライアントに大量の写真を、一貫性をもって提供できます。さらに、フォトグラファー側も効率化が図れることで、複数の企業から受注が可能となるんですね。
Meeroの日本法人は2019年3月にスタートしました。現在は、先ほどから述べているUber Eatsや出前館といった、コロナの中で成長しているサービスをサポートしています。
今井氏:
現マクロン大統領が大臣であった2014年の末頃に、フレンチテックのイメージを出しました。フレンチテックのコンセプトとしましては、フランスをデジタルな国に作り替えよう、といったものでしたね。
フランス経済では日本と同じように、大企業の役割が重要になってくる側面があるので、政府はスタートアップにどのようにして大企業を巻き込むか、ということを重視していました。そこで、政府は4年前から大企業と一緒になって、インキュベーターやアクセラレータ、そして様々な企業のラボをサポートするようになっていったんですね。
さらに、フレンチテックではダイバシティーを非常に重視しています。デジタル大臣はミックスなバックグラウンドを持つ人が多く、実際にフレンチテックに関わる人も非常に多様性があるんですよ。なので、政府は大企業を巻き込むと同時に、様々な大学や研究所をフレンチテックに巻き込んでいっています。
このようなダイバシティーは国内だけでなく、国外に対しても重視されていますね。アメリカや中国など、様々な国にフレンチテックセンターを作り、フレンチテックのマークをフランス発のスタートアップが自由に使用することを許可しています。
政府はこのワールドワイドな動きを最初から意識して、ビジョン形成やマーケティングを行ってきました。ビジョンが分かりやすいので、国内国外問わず、多様性に富んだ人がどんどん集まってくる。人が集まるので、お金も集まってくる。フレンチテックは、ビジョン、人、お金で強さを発揮するものであると言えるでしょう。
福田氏:
今井さんが具体的な内容について話してくださったので、僕はフレンチテックに実際に携わって感じた印象を話したいと思います。
まず、国外思考なのは間違いなくて、Meeroは2016年の設立以降、2年後にアメリカ、3年後にはシンガポール、バンガロール、日本といった国に進出しています。日本では、まず国内を固めていくという傾向がありますが、フレンチテックは世界に広げるという意味で、最初からビジョンが違うと思わされました。
また、携わっている人が全体的に若いです。Meeroは働く人の平均年齢が27歳と非常に若く、それゆえにトライアンドエラーでどんどんやっていく姿勢が見られますね。
このトライアンドエラーの姿勢がすごくて、地域の最適化など、やってみないとわからないことを思い切ってやったうえで、瞬時に軌道修正していくんですよ。日本に一回も来たことない人が、日本にオフィスを立てるというようなダイナミックさを発揮しています。
今井氏:
実は、コロナ下で、フランスが最初に中小企業への給付金を出したんですが、ここで受けた印象は全員平等に扱う気がないということですね。滅ぶべきものは滅ぶものととらえ、逆に強いスタートアップはどんどん強くしていくと。残酷ではありますが、平等に扱おうとしすぎる日本は、このような姿勢を見習って、強いスタートアップを伸ばしていくべきだと思います。
また、ワールドワイドな姿勢も持つべきだと思いますね。世界に出ないと視野が狭くなってしまい、自分の強みや弱みが分からなくなってしまいます。世界に出て違うものを見て、インスピレーションに触れ、日本に持ち帰って価値を生み出すと。そうでないと、日本は世界で勝てなくなってしまうと思います。
個人的には会社を子供であると思っている側面があるので、そこもよくしていきたいですね。さらに、子育ての方も、ママとしてしっかりとやっていきたいと思います。
福田氏
最近、インターンの子を引き入れているのですが、その子から学ぶことが非常に多いです。彼ら、彼女らに対して、僕は「失敗を失敗とさせないで、次の踏み台とさせられるようなポジショニング」「きちんと話を聞いてやって、力をつけさせるようなポジショニング」を取っていきたいと思います。いい大人に、若者によい影響を与えられるようになりたいですね。
そして、ビジネスとは学び続けることです。今僕たちが知っているのはあくまで10年前のことであり、新しいものがどんどん出てきます。そこで重要なのは、知識やスキルではなく、学び続けようというマインドセットだと思うんですね。スタートアップは適者適存の社会なので、適者でいられるように、年齢関係なく学び合える環境を整えていきたいです。
執筆・編集 / 若松現
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
フリーランスを活用する企業のリアルな声を、事業開発に活かす新しい営業職
2年間で4つの新規事業を担当。「ゼロから創る」へのチャレンジを続ける
自らの成功法則を惜しみなく伝え 結果の出せる営業部隊を創造する
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