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LISTEN×KGF online Vol.12 ケニアで幸福な農村社会を創る、モザンビークで電子マネー経済圏を作る、日本人起業家

KGF最新ストーリー

アフリカという遠い土地で事業を行う
その心意気と、人物像とは

主催:LISTENx KGF online

Alphajiri
CEO
薬師川 智子 / Tomoko Yakushigawa

日本燃料株式会社
代表取締役社長
合田 真 / Makoto Goda

イントロダクション

2020年8月28日、LISTENと学生フォーラム(略称:KGF)のコラボレーション、LISTEN x KGF onlineによるオンラインイベントが開催されました。12回目となった今回は、ケニアで農業コミュニティを形成する薬師川氏と、食料・エネルギー・金融という広範な事業をアフリカでなさっている合田氏をお呼びし、アフリカの現状や、その事業家としての姿をお聞きしました。

今行っている事業について教えてください

薬師川氏:
最初は、海外青年協力隊で大豆農家組合と一緒に、大豆の加工と普及をしていました。農家の方々は、堆肥をやらずにトウモロコシみたいな栄養分を吸う作物を育てていたので、どんどん土の質が悪くなっていたんですよ。そこで、マメ科の植物を植えることで、窒素の固定をすることで土壌改善を図り、さらに、農家さんの栄養状態の改善を行っていました。

その後、会社を設立し、同じ大豆分野の事業を始めました。大豆を農家さんから買い取って、卸売りを行うというシンプルなビジネスですね。

途中で、さらに力を入れて社会課題を解決するべく、資金調達や同じ志を持つ仲間が必要だと思い始めました。ここで、ボーダレスジャパンという組織に参加し、出資を受けたり、ノウハウを共有したりするようになったんですね。

参画後はさらに力をつけることができたので、卸売以外にも農家さんの組織づくりを始めました。現地の農家さんは、教育が行き届いてなかったり、売り先が分からずに売れなかったりすることがあるんですね。

また、小規模農家さんが多いので、農家さんとそのお客さんのミスマッチもあります。お客さんは100トン必要としているのに、農家さんは300キロしか作れないとか。同時に、農家さんと資材提供者のミスマッチもあります。農家さんは10キロ肥料が欲しいのに、提供者側は100キロ単位でしか受け付けてないという感じですね。

これらの問題を解決するべく、農家さんの組織づくりをしています。組織を作ることでマーケットを保障し、売る物をきちんと売れるようにしたうえで、サービスも受けられる。そのようなことを可能としています。

組織化を進める中で、大豆以外の作物の卸売りにも挑戦し、いろいろな売り先に卸していましたが、コロナが起きて売り先がクローズしてしまいました。そこで、小規模農家さんの作った作物を安定的な供給先を提供するということで、今年6月に小売りを始めたんです。今はそこのオペレーションに注力する形になっていますね。

合田氏:
もともとは、東京都の都バスなどにバイオ燃料を卸していました。そんな中、2006年にモザンビークへ行く機会があり、6年ほど経験を積んだのち、2012年に現地法人を作ったんです。

そこでもバイオ燃料をやっていたのですが、バイオ燃料には作物が必要なので、半分農業みたいなものなんですよ。なので、最初は1万人程の農家さんを組織して、彼らに苗木を渡して収穫したものを私たちが買い取り、それを搾油・精製することを行っていました。

そして、作った燃料で発電していたんですが、発電したからといって、日本みたく毎月固定の電気代を払うのはみなさん難しかったんですね。そこで、キオスクを作って、冷蔵庫や冷凍庫なんかを設置し、冷えた製品を販売するということをやりました。

また、農家さんはエネルギー作物だけを作っているわけではないので、お米や豆を買い取るようにもなっていったんです。それらを加工して、卸すようなこともしていますね。

このようなことをやっている中で、オペレーションしている場所が全部遠隔地にあったので、棚卸すると現金が足りないということが多発しました。これがきっかけで電子マネーを使ったサービスも始めるようになったんです。地元の人がキオスクで買い物するときや、僕らが作物の買取をする時にその電子マネーを使う形ですね。

こうすることで、農家さんの収入や支出が記録され、信用状態を確認することができるようになりました。今までは、信用制度がガバガバで、自分の作物が正規の値段で売れているかを確認するべく、農家さんがわざわざ遠く離れた市場の中売人が売る様子を見る必要があったんです。電子マネーは、このような手間を解決するのに役立っていますね。

この電子マネーの仕組みを国連機関に評価していただきまして、2013年から一緒にお仕事をさせていただいています。今までその国連機関は、補助金を配布するのに紙の引換券みたいなのでやっていました。それをデジタル化し、このような補助金がどこに渡ったのか、ちゃんとトレースできるようなサービスを提供しています。今では同様のシステムを様々な団体に使用していただいており、お客さんの8割がたが政府や国際機関になっていますね。

また、この春たまたま新潟の方に縁あって、とある田んぼで畜力を使って田畑を耕し、酒米を作るという事業を始めたんです。うちの役員が、馬を使って畑を耕したり、切りだした木を搬出したりする馬耕酒豆という団体をやっていまして。そことうちの会社で、三馬力社という会社を6月に始めました。

今年、農林水産省がアフリカで畜力を利用する意向を出しました。過去、日本では明治時代に畜力が普及しており、それまでは手で開墾をしていたんです。アフリカでもこのような過程を経て資本をつけることで、やがて機械を使ったと効率的な農業ができるようになると考えたんですね。

この補助を新潟の田んぼで行っていまして、アフリカからの留学生に一緒に現場に入ってもらい、アフリカ向けの器具の開発をしています。

今の事業へ至るまでの経緯を教えてください

薬師川氏:
高校時代に、今後を考える上で選択肢が二つあったんですね。一つは、画家になるというものです。ただ、この選択肢は、絵を描くことが人のためになるのか本当にわからないという虚無感があり、受験で絵を描くことに対するピュアな情熱がなくなってしまったんですね。

そして、もう一つの選択肢として、小さいころから社会の不公平を解決する仕事に就きたいと思っていたので、そちらの選択肢を取ることにしました。そこで、何をしようかを考えた時に、とりあえず国連に行くかなと考えたんです。そして、姉がたまたまアメリカにいたので、テキサスの大学へ行くことになりました。

ただ、国連に行くなら大学院に行かなければならないのですが、何を勉強するのか、何のために自分を高めるのかというイメージがわかなかったんですね。ですので、とりあえず就職することに決めました。

そして、農林中金という日本の会社に入り、長崎県へ赴任して銀行員をすることに。ですが、この銀行員をやっている最中はずっと悶々としていました。とりあえず一生懸命仕事はやるんだけども、自分の人生でどのようにつながるのかがわからない状態で。国連に行くといっても何に対してアプローチするのか決まっていないし、現状の自分は銀行員をしていて、何がしたいのかよくわからないと。

悶々として苦しむ日々が続きましたが、世の中の不公平を本気でなくそうと考えるのなら、組織で働くのではなく、自分の目で実際に見てみることが大事なのではないかという結論に至りました。そして、たまたま協力隊の広告を見た際に、思い切って現地で始めてしまうと行動を起こしたことが、ケニアに来たきっかけです。

この協力隊をやっていく中で、小規模農家さんは貧困で、現金収入が少ないのだけれども、彼らは幸福な生活をしていたんですね。それが素晴らしいと思うものの、やっぱり課題としては貧困というものがあるんですよ。ここで、セーフティネットの脆弱さに気づきました。例えば、事故にあったときや、病気になった時に、貧乏なので対処が遅れて亡くなるということが多々あります。

一見すると、とても幸せそうなんですが、セーフティネットがないという課題を目の当たりにしたのが、協力隊の時に強く感じた問題点でした。

そこで、数ある貧困の課題の中で、自分がダイレクトに取り組めるのは、作ったものがまともに売れないのはおかしいという課題だと思ったんです。そういうわけで、卸売りと組織づくりの事業を始めることになりました。

合田氏:
出身が長崎でして、8/9というのが毎年重要な日でした。社会見学は原爆資料館といった感じで、「戦争っていやだな、怖いな」という気持ちが人一倍強かったんですね。このような戦争は、化石燃料が原因であったという一面があります。化石燃料はあくまで固定量があり、足りなくなったら戦争してまでも奪い合うと。

このような状態を解決するのに、再生可能エネルギーに目を付けました。再生可能エネルギーは固定量が存在せず、現状、化石燃料にかなう量はありませんが、積み重ねていくことができます。使えば使うほどどんどんなくなるわけではなく、僕らの努力で増やすことができるんですね。そこが化石燃料と再生可能エネルギーの大きな違いです。

こういう考えから、再生可能エネルギーを主とする世界を作ることができれば、戦争の要因の一つを、自分の努力の範囲でなんとかできるのではないかと。微々たるものかもしれないが、良い方向へ世の中を動かせるのではないかと思いました。

エネルギー同様の考えが食料でもできると思うので、エネルギーと食料を軸として事業をやっているのは以上のような理由ですね。そこに、金融を加えているのは生産するうえで、その「分配」も重要であると考えているためです。

この分配の機能がフェアでなければ、生産したところで貧しい人が存在するんです。存在するものの分配は、お金というツールを使って行っています。この考えと、現場でお金が足りなくなるという経験も併せて、金融という仕事にも従事しているんです。

今後の展望を教えていただくとともに、メッセージをお願いします

薬師川氏:
短期的な目標としては、オープンして3カ月の小売店舗を成功させるべく、まず経常的に黒字にしていくことですね。その後は、一店舗ではマーケットに対するインパクトが小さいので、店舗を拡大させていくのが目標となってきますと。

そして、小売りが成功したらそちらを他の人に任せて、早めに村に帰りたいと思っています。私が一番やりたいのは、農村の共同体を大きくし、サービスを濃くしていくことなんですよ。水の問題やインフラの問題というのはいまだに根強く、電力や水が安定供給できないことにより、農業生産性が低いという事実があります。農村の良さを崩さずにどのように農業生産性をあげるか、店舗拡大の次はここに焦点を当てたいですね。

それを今の村で成し遂げることができたら、次はケニア以外のアフリカの国に関わっていきたいです。自立した幸せな社会をアフリカで増やしていくことに、今後ともずっと従事していきたいと思っています。

メッセージとしましては、銀行員を経て、アフリカでの事業ができるようになったことから、目の前にあることを一生懸命やる、ということを言いたいと思います。

銀行員を一生懸命やっていたからこそ、分かったこともありまして、自分は根回しといったことよりも、課題に対してダイレクトにやるほうが向いていると分かったんです。このような過程を経て、自分のことをよくわかっているので、アフリカへ行くことも、起業することにも迷いを持たず、今の事業に夢中になれています。

人生にどれだけ迷っても、どんなにゴールが見つからなくても、いま自分のやっていることが将来に繋がるかを考えずに、目の前にあることをただ一生懸命やってください。そうすると、自分が社会に対してどんなことを成し遂げたいか、何をして生きていきたいかが見えてくると思います。これが私の経験から伝えることのできるメッセージです。

合田氏:
去年、アフリカ開発会議(TICAD)の第7回が開催されました。この会議に、僕たちは農業分野のワーキンググループで参加しまして、農業のデジタル化に関する提案をしたんですね。薬師川さんのやっていらっしゃるような農業コミュニティの上に、デジタルな仕組みを導入することができれば、さらなる効率化が図れるんじゃないかと思いまして。

ですので、今後の展望としましては、そのTICADで世界に約束した、農業デジタル化を実行することにありますね。ポルトガル語圏のモザンビーク、英語圏の南アフリカ、フランス語圏のセネガルで、次のTICADが開催される2年以内にモデルケースを売り上げ、しっかり仕上げていくことが目標です。

そして、次のステップのコンセプトも考えています。それはデジタル農協というもので、日本の農協のようなシステムをアフリカで作ろうと考えています。実は、日本の農協は世界でも非常にユニークなんですよ。農作物や農業資材の売り買い以外に、共済や保険といった金融の機能、日本赤十字より大規模な病院ネットワーク、ガソリンスタンドをはじめとしたエネルギー事業など、非常に幅広い事業をやっています。

海外の農協はここまでやっておらず、せいぜいバンクまでなんです。日本の農協がやっていることは、総じて地方の生活を成立させるために必要なインフラの提供なんですよ。このような、日本の農業が発展するうえで作られた農協のシステムを、明治や大正時代と同等レベルの現代アフリカで導入するのは、現地の農家さんが一歩踏み出すうえで効果的ではないかと思うんですね。

次のTICADでは、このような農業から紐づく、基盤インフラの提案をしたいと思っています。これこそが、世界で日本だけが提案・実行できるようなことであると信じていますね。

そして、メッセージとしては、アフリカの村や新潟の村で信頼を作る上で思ったことですが、一個一個の積み重ねと時間を大事にすることですね。人と付き合う上では、一個一個のことは非常に小さいことですが、その積み重ねにより信頼を得ることができます。特別なことなんかなくて、ただ当たり前のことをし続けられる人は少ないので、それをきちっとやることが大事ではないでしょうか。

執筆・編集/若松現

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