
真面目におもしろいことをしよう!企業のビジネスが輝くような“世界観(ストーリー)”を世に展開し、顧客とのコミュニケーションを力強く後押しする
本質的な教育体制が築く民主主義的国民性
日本が学ぶべきこととは
なかったらつくる文化、ゼロリセットの創造性、なぜ学ぶのか
本質を分かっているデンマークの子供たち
主催:LISTENx KGF online
共生アドバイザー
ニールセン北村朋子氏
第11回目となるLISTEN×KGF online主催のオンラインイベント。今回は共生アドバイザーのニールセン北村朋子氏をお招きし、デンマークの国民性や教育、そこから日本が学ぶべきことについてお話を伺った。
活動が多岐にわたっているので、一言で表すのは難しいです。コロナが流行する前は、視察やスタディーツアー、ワークショップの企画や受け入れを行っていました。またデンマークから日本に向けての交流事業も手がけています。世界ふしぎ発見!やNHKスペシャルなどの番組のコーディネート、現地取材も活動の一つです。昨年はデンマークの自治領であるフェロー諸島やグリーンランドに行っています。その他には、デンマークがハンドボール発祥の地ということで、日本代表の移籍をサポートする活動もしています。今年はコロナ禍で、人の行き来ができないため、オンラインでの講演やワークショップをしている状況です。
さらに大きな柱として行っている活動は、食をテーマにしたインターナショナル・フォルケホイスコーレをロラン島に開校することです。フォルケホイスコーレとは1844年にデンマークで誕生し、現在は70ほどある“人生の学校”と呼ばれるもののことです。現在、2022年の開校に向けて仲間と準備を進めていますいろんな自分のできることを活かして働いている方はたくさんいますが、自分もその中の一人なのだと思っています。
ユーロ2000というサッカーの大会があり、観戦と取材をかねて1ヵ月ほど現地へ行きました。帰りの飛行機でたまたま隣に座っていた男性と1年後結婚しましたが、その男性がデンマーク人でした。子育てをどちらの国でしたいかを考えたときに、デンマークのロラン島にある森の幼稚園に入れたいと強く思い、仕事も決めずにデンマークに来ることにしました。森の幼稚園とは、森の中で開講されている幼稚園のことで、子供たちの主体性を大切にする幼稚園なのです。
希望していた森の幼稚園には入ることができませんでした。しかし驚いたことに、同じ想いを抱えた親たちに誘われ、新しい森の幼稚園をつくることになったのです。デンマークには、「欲しいものがないならば、つくればいい」という文化があり、さらには「法律で禁止されていないのなら、社会の利となる活動は何をやってもいい」と捉える国民性です。このようにデンマーク人は、「法律で許されることしかやってはならない」と考える日本人とは違った見方を法律に対してもっています。同じ法律でも違った見方をする要因には教育が挙げられるということで、教育について調べていくようになりました。
住むこととなったデンマークのロラン島で驚いたのは、風車がたくさん建っていたことです。日本で見たことのない風車に、これは何だろうと素朴な疑問をもちました。周りに聞いてみると、それは電力をつくるもので、農家が所有するマイ風車であるとのことでした。電力は電力会社がつくるものと思っていたので、農家の人が自分で電気をつくるのはどういうことなのかとさらなる疑問が出ました。調べてみると、電力を選びとる歴史がデンマークにはあったのです。発信する日本人もいなかったことから、今まで培った伝える力をもとに、デンマークのエネルギーやスポーツについて自分から発信することにしました。そして東日本大震災でエネルギー産業はメイントピックとなっていったのです。
ロラン島は1980年代までは農業が栄えていましたが、その後衰退し、グリーンエネルギー産業にシフトしました。今では風車の島として知られ、主要な都市に再生可能エネルギーや電力を提供する島となっています。
19年デンマークにいますが、おもしろいことが次々起こるなと感じます。最近思うことは、禅が説く“初心にかえること”がデンマーク人は上手であるということです。デンマーク人は、しばしば積み上げてきた知識や経験を取り去り、その上で自分たちのアイデンティティを見直します。
たとえば新北欧料理。デンマークに来た当初は、おいしい料理といえばフランス料理やスペイン料理でした。しかしそれでいいのかとデンマーク内で議論が起こり、自分たちの食文化を取り戻そうという動きが出てきたのです。シェフや生産者、学者、政治家、ひいては北欧全体で“北欧料理とは何か”を考え、マニフェストをつくりました。そして2003年ごろから急激にデンマークの食文化は変わり、今ではレストランnomaに見られるように、食を楽しむために訪れる国となったのです。
他にも映画の世界でいうと、ドグマ95というものがあります。1990年代まで、お金をどんどんかけるハリウッド映画が主流でした。しかし本当にそれが見たい映画なのか,作りたい映画なのかという問いが生じ、一から“映画とは何か”を考えました。そこで人工のライトやカメラのフィルタを使わないなど、常識を取り払った10のマニフェストを打ち出したのです。
ゼロリセットの考え方を国全体で推し進めるデンマークの姿勢は、民主主義のアップデートができているからこそでしょう。そして民主主義のアップデートの要因はやはり教育です。
デンマークでは幼稚園から、“民主主義を担っていく市民を育てる”ということがどこを切り取ってもベースになっています。そしてそれを感じさせる学び方をとっているのです。先生は一方的に教える人というよりも、学びやすさを演出するファシリテーターとしての役割を果たす存在です。学びは子供たち同士でもできるので、先生はテーマの設定に対するアドバイスやグループワークを通した学びの機会を提供します。デンマークの教育は、生徒が主体的に学べる場を積極的に作り出しているといえるのではないかと思います。
またデンマークでは、国のビジョンが比較的はっきりと示されています。そのビジョンに基づいて教育方針がつくられ、教員や自治体、さらに子供たちにまできちんと伝えられているのです。そのため子供たちは、なぜこういう学びをこれだけの時間をかけて学ばないといけないのかを分かって学んでいます。これは日本と少し違うところだと思います。
英語教育を例に出します。大国は得てして本音を言えません。ですから小国でも意志をもつデンマークのような国が、ファシリテーターとして上手く本音を聞き出し、一番よい着地点を見つけるきっかけをつくるのです。そこで共通言語である英語を学ぶことが必要であるということです。さらには、さまざまな人の意見を自由に引き出す使い手となるために、あらゆる地域で話されるなまりも含めた英語に触れる機会と理解が求められています。
さらにデンマークでは小学校から大学院までの教育を無料で受けることができます。デンマーク政府は、人材育成が国の発展と国際関係に大きく影響することをよく理解し、教育に力を注ぐ方針をとっているのです。
今まで述べた通り、持続可能性や民主主義はデンマークの人々にとって当然のことです。そこで皆が関わっている分野である“食”について考えます。
人間は必要な食べ物の量が分かっていません。たとえばコーヒーを無意識に何杯も飲みます。 しかしこれはコーヒー農家の労働搾取へとつながっているかもしれません。このように“食”を多面的に見て、学び合えるようになってほしいのです。
また21世紀になっても、食糧や水を公平に再分配できていない現状があります。さらには気候変動により、今まで通りの食糧生産とはいかなくなることが予想されます。だからこそ“食”にまつわるすべてを討論し、実験をして得た気づきを今後に活かせるような場を提供したいのです。
デンマークに来て思うことは、デンマークの人々は本音で話すということです。なおかつ、相手に配慮しながら、自分の気持ちが一番伝わる言葉を選ぶ意識が非常に高いです。時間はかかるけれども、本音で話すために、本質的な話し合いになります。また話し合いが終わったとき、本音で話したからこそ、自分だけでなく相手の立場もはっきりします。その結果、多様な意見の認識と理解の中で、最上の妥協点、着地点を見つけることに役立ちます。それらは日本人が意識すべきことかもしれません。日本人は相手を傷つけずに本音を話すことが不慣れだからです。自分の本音に向き合い、相手に正しく伝える努力をすることが、本質に近づく近道だと思うのです。
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フリーランスを活用する企業のリアルな声を、事業開発に活かす新しい営業職
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