人間の優秀さは「誰と一緒に働くか」で変化する

コンテンツワークス株式会社 代表取締役社長 荻野 明彦

荻野 明彦Akihiko Ogino

コンテンツワークス株式会社

代表取締役社長

2015.10.06

雇われ社長からオーナーへの転身

当社はもともと、大手複写機メーカーと出版社2社の共同出資で設立された会社です。2001年の設立時、私は複写機メーカーから出向する形で代表に就任しました。

当初の事業は、絶版や品切れになった書籍・漫画のデータを集積しておき、必要な時に必要な数だけ(オンデマンド)出版するサービスでした。これは「ブックパーク」「コミックパーク」として、現在も主力事業の一つになっています。

しかし、当時は親会社がもくろんだほどには収益が上がらず、数年で撤退が検討され始めました。会社をたたんだ後は、私も親会社に戻る予定でしたが、一度経営者として会社を動かしてみたことで、大企業にはない自由や、自分で何でもやれるおもしろさを感じていました。また、当時15人ほどいた社員から「あなたは戻る場所があっていいですね」と思われるのがとてもシャクでした。

それによく考えてみると、自分が会社を引き継いでつぶれてしまうことと、親会社の業績が傾いていくことを比べた時、そのリスクに大差はないように感じました。そこで私は「ここでやらなきゃいけない」と奮起し、退職金や貯金をすべてつぎ込んで親会社から当社を買い取ったのです。

これはMBO(マネジメント・バイアウト)と言われるものですが、その親会社からMBOで独立した会社は、後にも先にも当社だけです。前例がなかったため1年半ほどかかりましたが、こうして私は真の経営者になりました。

その後、主力サービスとして打ち出したのがフォトブックの作成です。ご存じのように、デジタルカメラなどで撮影した写真を使い、簡単にオリジナル写真集やフォトアルバムを作成するサービスです。今では珍しくありませんが、当社はその先駆けとして、2004年から「Photoback」という専門サイトを運営してきました。

サービス開始当初、完成する本の形は12×12センチの一つのみでしたが、プロのデザイナーが手がけたテンプレートに写真や文字を入れるだけで、おしゃれなフォトブックが作れるという手軽さから、またたく間に人気を博しました。現在は大きさやコンセプトが異なる8種類を手がけています。たとえば、ジャーナル紙のような体裁、帯付きの文庫本サイズ、フラットな見開きで見られる製本など、出版社が発行した本や写真集と見まがうばかりのフォトブックを提供しています。

会社が自分にあっているかどうかの感覚を優先する

フォトブックのヒットなどもあって業績は順調に拡大しましたが、4年ほどたつと、なぜか「仕事がおもしろくない」という雰囲気が社内に蔓延していました。その原因をよく考えて見たところ、私の考え方が古かったことに気づきました。

私はいわゆるバブル世代で、会社の業績は毎年伸びるのが当たり前と思っていました。成長が大好きで、会社を評価する指標も売上や利益などの数字を重視していました。しかし、低成長に入った社会で育った世代は、仕事に対する意識や働き方がまったく異なります。数字よりも、やりがいや幸福感など内面の充実を求めるのです。おそらく、みなさんも同じではないでしょうか。

それに気づいたことで私は考え方を改め、「ありがとう。があふれている会社」という新たな理念を定めました。

人間は誰かから感謝されることが一番うれしいものです。また、感謝している時が一番幸せであるとも思います。お客様や仲間たちから感謝され、自分もまた感謝を返す。そういう「ありがとう」の気持ちがあふれていれば、きっといい会社になると思いました。

実際、その後の当社は外部の人から「家族的ですね」とよく言われます。すべてを語らなくてもわかりあえる仲間たちがお互いを大切にしあい、感謝の気持ちを抱きながら仕事をしているためではないでしょうか。

そんな社風ですから、新入社員の採用も少し変わっています。一般的な面接ではなく、ワークショップ形式の共同作業を通じて、人柄を見せてもらいます。学歴など、履歴書に記された内容はさほど重視しません。能力を判断する指標の一つにはなるでしょうが、当社でそれを発揮できるとは限らないからです。

そもそも、人間の優秀さは極めてあいまいで、偏差値のように絶対的な基準があるわけではありません。むしろ、人や場所との関係性によって変化する相対的なものです。

たとえば、サラリーマン時代の私はそこそこ優秀な社員でしたが、それは上司や同僚たちに恵まれ、能力を発揮できる環境があったからです。おそらく、私のような部下を私自身がマネジメントしたら、まったくのダメ社員だったでしょう。したがって、一番大切なのは「どういう人たちと一緒に働くか」ということであり、会社のブランドやネームはさほどの問題ではありません。

それに私が当社を買い取った時に考えたように、小さい会社でも、大きい会社でもリスクに大差はありません。安定だけを考えてさほどやりたくもない仕事を選ぶよりは、何らかのご縁や、自分にあっているかどうかという感覚を優先すべきだと思います。

ちなみに、当社の内定後は入社までの期間を使って「入社します式」を企画してもらいます。新卒社員はまだ何もできません。先輩方にお世話になるわけですから、自己紹介をし、指導のお願いを自分たちからして欲しいのです。これも感謝の気持ちや、社員どうしの関係性を重視する当社ならではのイベントです。

定期的にゲストを招いて社内でセミナーを開催したり、評価の高い会社を見学に行くツアーなども行っています。社員が企画するイベントもたくさんあります。


Profile

1963年、福岡県甘木市(現あさくら市)生まれ。熊本大学法学部卒業後、富士ゼロックス株式会社に就職。名古屋にて当時としては最先端のネットワーク&ワークステーションの営業を経験したのち、大規模図面管理システムの営業に従事。
34歳の時にゼロックスの幹部候補プログラムに選出され、1年間の研修の後、新規事業開発へ異動。その際に社内で行っていたオンデマンド事業を子会社化するに伴い、コンテンツワークスの設立と同時に出向。2007年にMBOを行い完全独立会社となる。
事業ビジョンは、ITと紙の垣根を外し、「想い」をもっと気軽に届けられる社会の実現、個人のビジョンは日本人の自己尊重感をあげて、世界に対して日本のステータスを上げてゆくこと。

Contact

コンテンツワークス株式会社

東京都千代田区神田神保町2-4 Daiwa 神保町ビル5F
http://www.contentsworks.co.jp/

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